控えなさい! 私はマリーよ!

小松広和

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第四十一話 恐怖のコースター

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「この街には凄いものがあるのよ」
「何か嫌な予感しかしないんだけど」
「小百合って超マイナス思考よね。だから四郎に振られるのよ」
「いつ私が振られたって言うの!」

「で、凄いものって何よ」
「もうすぐ見えてくるわ」
私はウキウキしながらも落ち着いた態度を崩さなかった。だって今から行こうとする所ってアレだもの。みんな大好きなアレなの!

「ジャーン、これよ!」
「これってもしかして」
「そう、遊園地よ」
「まさかそんな異世界に遊園地って」
「どう、驚いた?」
「驚いたと言うよりは呆れたに近いかしら」
「こんなの造ったら異世界のイメージが崩れるよ」

「何とでも言いなさい。あなた達の知っている遊園地とはレベルが違うんだから」
そうよ。デートと言えば遊園地。余分なのが二人いるけど、四郎とデートができるのよ。遂に夢が叶うんだわ。

「さあ、入りましょう!」
「やけに張り切ってるわね。でも、よくこんなもの造ったわね」
「もちろんあなた達の世界のパクリよ」
「そればかりじゃない!」

「何から乗る? やはり遊園地と言えばジェットコースターよね」
「マリー! 何で四郎君の腕にしがみついてるわけ!」
「外野は黙っててくれるかしら? せっかくのデートが台無しだわ」
「何でデートなのよ!」

「てか、あなたって四郎君と結婚するとか言いながらデートしたこともないの?」
「別にいいじゃない! 小百合こそデートしたことないくせに」
「そんなのあるに決まってるじゃない」
「え!? 嘘・・・・。四郎、嘘でしょ?」
「何度かデートしたけど」

 何なのこの敗北感は。こうなりゃ思いっきり怖いジェットコースターに乗って、小百合の泣きっ面を四郎に見せてイメージダウンさせてやるんだから!

「これに乗るわ。異世界最強のコースターよ」
最強って言っても遊園地はここにしかないんだけど。
「芽依、怖いの大好きだよ!」
何ですって? まぁいいわ。今回のターゲットは小百合だから。
「さあ、乗りましょう」
小百合がなかなか動こうとしない。もしかして作戦大成功なのでは?

「どうしたのよ。早く乗るわよ。もしかして怖いの?」
「芽依、怖いの大好きだよ」
「あなたには聞いてないわよ!」
「こ、怖いわけないじゃない」
これは絶対怖がってるわ。私の計画完璧じゃない?

 私は意気揚々と列に並ぶと最後の一押しにかかった。
「このコースターって乗る前に承諾書へ署名しなくては行けないのよね。『死んでも文句は言いません』てやつ」
「そ、そんな嘘ついたって、私は騙されないわよ」

 乗る寸前に係員が紙を渡してくる。
「この承諾書にサインをお願いします」
「ほらね」
「どんなコースターなのよ!」

「今回は特別に四郎の横に小百合が座ってもいいわよ」
さあ、四郎に酷い顔を見せなさい。

「いよいよ出発ね。このゆっくり上って行くのが緊張するのよねー、小百合」
「これって上り長くない?」
「そうね。あなたが知っているコースターの五倍はあるかしら」
「どうしてよ!」
「それだけ恐怖が続くってことね」
「ひえー」
完璧だわ。完全勝利よ!

「ええ! このコースター反対向いたままよ!」
「この状態が一分間続くわ。このコースターの安全ベルトは切れやすいので有名だからしっかり掴まってないと落っこちるわよ」
「そんなの完全に設計ミスでしょ!」

「ちょっとこの先の線路が無くなってるじゃない!」
「このコースターの最大の特徴は線路のない部分があるのよ」
「線路がないってどういうことよ!」
「空中をジャンプするの。大丈夫。向こうの線路に無事着地できる確率は八分の七よ。凄い技術じゃない?」
「確率低すぎでしょ!」

ジャーンプ。
「きゃー、助けてー!」

「ああ、楽しかったわね」
「・・・・」
小百合は完全に放心状態ね。今までの恨みよ。いい気味だわ。

「四郎君、怖かったよー」
「おお、よしよし」
「ちょっと何でいきなり四郎に抱きつくのよ!」
小百合はこちらをチラッと見ると舌をちょこんと出した。わざとやってるわね!
「離れなさいよ!」

「ねえ、小百合さん。芽依、お願いがあるんだけど」
「何?」
「もう一回乗ろう」
「何ぬかしとるんじゃこのガキャー! ぶっ殺すぞ!」
恐怖のあまり完全にキャラが崩壊した小百合なのだった。
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