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第七十話 無茶振り
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スースー。ハッ!
「あれ? 私は何を‥‥」
周りにはもう誰もいなかった。どうやら瞑想しているうちに寝ちゃったみたいね。今何時なのかしら。私は壁にかけられた時計を見る。見た目は鳩が時刻を知らせる鳩時計なのだが、なぜか針はなく数字がある。かといってデジタルかと言うとそうでもない。一分毎に鳥が数字の板をくわえてきて時刻を換える仕組みらしいわ。何か面倒くさい時計ね。しかも出てくるのは全て違う鳥なのよね。あの時計の中っていったいどうなってるのかしら。
「え!? もう三時じゃない!」
私は思わず大きな声を出してしまった。でも大丈夫。私達一人一人別の寝室を用意してくれたからこの部屋は私一人よ。
「てか、寝てたら誰か起こしなさいよね」
私はボソッと本音を呟いた。
あら? テーブルの上に四角い厚紙が置いてあるわね。何これ?
『マリーさんのことはいつまでも忘れないよ。これからは王子さんと幸せに暮らしてね。芽依』
『あなたには本当お世話になったわね、いろいろな意味で。四郎君のことは幻馴染みで婚約者の私に任せて。菫』
『マリー、頑張って生きているとこんな幸せを掴むものなのね。とても勉強になったわ。私と四郎君との結婚式には招待するつもりよ。楽しみに待っててね。小百合』
「何で寄せ書きを書いてるのよ! 菫に至っては漢字も間違ってるし!」
それにしても何か対策を考えないと大変なことになるわね。
「う~む」
私は軽く腕組みをして部屋を歩き回った。黒の国のことを考えると緑の国の国王を怒らせるわけにはいかないわ。でも結婚を承諾すれば四郎と結婚できなくなる。それだけは絶対に嫌!
「王子に嫌われればいいかしら?」
自然と考えが独り言となって口から出てしまう。
「でも大変なことをお願いする以上、私の印象を悪くするわけにもいかないわね」
私の歩く速度が少し速くなる。
「もし私より好きな人が現れたら‥‥。これよ! これだわ!」
次の日私達は王の間に呼び出された。
「どうですかピピプル様。いいお返事はいただけますかな?」
「一つお尋ねしてもいいでしょうか?」
「何なりとお聞きください」
「どうして王子様は私のことを知っておれるのですか?」
「はい、以前この城で開かれた舞踏会にピピプル様がいらっしゃって一目ぼれをしたようです。声をかけようとしたらしいのですが、夜中の十二時の鐘の音を聞くとピピプル様は突然会場から飛び出しガラスの靴を片方残して消えてしまったそうです」
「それ絶対私じゃないと思います」
「王子はあなたを初めて見た五年前からずっと思い続けているのです」
「五年前はまだ小学生ですけど」
「どうですか。王子の強い思いおわかりいただけたでしょうか」
「お気持ちは十分伝わりました。しかし、私は王子様にふさわしくないと思います」
「それはどういう意味ですかな」
「料理は全くできませんし」
小百合と芽依が大きく頷く。こいつらこればかりね。
「掃除、裁縫全てできません」
「一国の妃になるのですから別にできなくてもいいですぞ」
ギクリ!
「いえ、嫁がせていただく以上そう言うわけにはいきません。完璧な状態で結婚すべきです」
「では、教育係を付けて・・・・」
「でもご安心ください。あちらに控えております女性はどれも完璧。女子力の塊にございます」
「あちらと言いますと」
「一番左にいます林郷小百合という女性です」
「マリ-! 突然何言い出すよ!」
小百合が渾身の声で叫んだ。よほど嬉しいのね。
「小百合、喜びなさい。あなたも王家の一員になれるのよ」
「何でいきなりそうなるのよ! メチャぶりにもほどがあるわ!」
「ピピプルさん。王子の嫁は誰でもいいというわけではありません。五年間思い続けたあなたがふさわしいと」
「ねえパパ僕あっちの子でもいいよ」
「え?」
城内の空気が固まった。
「ええー!」
小百合が大声を出す。
「まあ、お前がいいと言うのなら」
「ちょ、ちょっと待ってください。そもそも私は異世界から来た外来者です。とても王家に入れる身分の者ではございません」
「この国は自由平等が基本ですゆえ問題はありませんぞ」
やったー! これで決まりね。結婚の話も消えて小百合を厄介払いできるなんて最高よ。
「私は性格的に問題があります」
それはそうね。
「私よりこちらにおります芽依は魔力も高くこの世界には適任者かと思います」
「ちょっと、芽依まだ小学生だよ」
「ウワー! この子も可愛いな」
「ちょっと待ってよ。芽依よりこっちの菫ちゃんは性格きち自己中心的で頭も悪いけど顔だけは可愛いよ。菫ちゃんがお勧めだよ」
「ちょっと芽依! どんな紹介してるのよ!」
「うん、この子可愛い」
「私なんかよりこっちの四郎君がいいわよ。とても優しくてたよりになるわ」
バカだとは思ってたけど自分の好きな人を結婚相手に勧めてどうするのよ。それにしてもここまで無茶振りだと逆に爽快だわ。
「僕この男の子でもいい。かっこいいもん」
誰でもいいんかーい!!
「この男の子はダメよ」
母親が釘を刺す。それはそうよね。
「この子は私好みのイケメンじゃないわ」
ダメな理由はそっちかい!
「王様、王子様は決めかねているようですので、今回の件が片付きましたらゆっくりと考えていただくというのはどうでしょうか?」
「それもそうだな」
こうして私はうまいこと結婚の話を延期させ協力体制とって貰えるよう交渉に成功するのであった。
「あれ? 私は何を‥‥」
周りにはもう誰もいなかった。どうやら瞑想しているうちに寝ちゃったみたいね。今何時なのかしら。私は壁にかけられた時計を見る。見た目は鳩が時刻を知らせる鳩時計なのだが、なぜか針はなく数字がある。かといってデジタルかと言うとそうでもない。一分毎に鳥が数字の板をくわえてきて時刻を換える仕組みらしいわ。何か面倒くさい時計ね。しかも出てくるのは全て違う鳥なのよね。あの時計の中っていったいどうなってるのかしら。
「え!? もう三時じゃない!」
私は思わず大きな声を出してしまった。でも大丈夫。私達一人一人別の寝室を用意してくれたからこの部屋は私一人よ。
「てか、寝てたら誰か起こしなさいよね」
私はボソッと本音を呟いた。
あら? テーブルの上に四角い厚紙が置いてあるわね。何これ?
『マリーさんのことはいつまでも忘れないよ。これからは王子さんと幸せに暮らしてね。芽依』
『あなたには本当お世話になったわね、いろいろな意味で。四郎君のことは幻馴染みで婚約者の私に任せて。菫』
『マリー、頑張って生きているとこんな幸せを掴むものなのね。とても勉強になったわ。私と四郎君との結婚式には招待するつもりよ。楽しみに待っててね。小百合』
「何で寄せ書きを書いてるのよ! 菫に至っては漢字も間違ってるし!」
それにしても何か対策を考えないと大変なことになるわね。
「う~む」
私は軽く腕組みをして部屋を歩き回った。黒の国のことを考えると緑の国の国王を怒らせるわけにはいかないわ。でも結婚を承諾すれば四郎と結婚できなくなる。それだけは絶対に嫌!
「王子に嫌われればいいかしら?」
自然と考えが独り言となって口から出てしまう。
「でも大変なことをお願いする以上、私の印象を悪くするわけにもいかないわね」
私の歩く速度が少し速くなる。
「もし私より好きな人が現れたら‥‥。これよ! これだわ!」
次の日私達は王の間に呼び出された。
「どうですかピピプル様。いいお返事はいただけますかな?」
「一つお尋ねしてもいいでしょうか?」
「何なりとお聞きください」
「どうして王子様は私のことを知っておれるのですか?」
「はい、以前この城で開かれた舞踏会にピピプル様がいらっしゃって一目ぼれをしたようです。声をかけようとしたらしいのですが、夜中の十二時の鐘の音を聞くとピピプル様は突然会場から飛び出しガラスの靴を片方残して消えてしまったそうです」
「それ絶対私じゃないと思います」
「王子はあなたを初めて見た五年前からずっと思い続けているのです」
「五年前はまだ小学生ですけど」
「どうですか。王子の強い思いおわかりいただけたでしょうか」
「お気持ちは十分伝わりました。しかし、私は王子様にふさわしくないと思います」
「それはどういう意味ですかな」
「料理は全くできませんし」
小百合と芽依が大きく頷く。こいつらこればかりね。
「掃除、裁縫全てできません」
「一国の妃になるのですから別にできなくてもいいですぞ」
ギクリ!
「いえ、嫁がせていただく以上そう言うわけにはいきません。完璧な状態で結婚すべきです」
「では、教育係を付けて・・・・」
「でもご安心ください。あちらに控えております女性はどれも完璧。女子力の塊にございます」
「あちらと言いますと」
「一番左にいます林郷小百合という女性です」
「マリ-! 突然何言い出すよ!」
小百合が渾身の声で叫んだ。よほど嬉しいのね。
「小百合、喜びなさい。あなたも王家の一員になれるのよ」
「何でいきなりそうなるのよ! メチャぶりにもほどがあるわ!」
「ピピプルさん。王子の嫁は誰でもいいというわけではありません。五年間思い続けたあなたがふさわしいと」
「ねえパパ僕あっちの子でもいいよ」
「え?」
城内の空気が固まった。
「ええー!」
小百合が大声を出す。
「まあ、お前がいいと言うのなら」
「ちょ、ちょっと待ってください。そもそも私は異世界から来た外来者です。とても王家に入れる身分の者ではございません」
「この国は自由平等が基本ですゆえ問題はありませんぞ」
やったー! これで決まりね。結婚の話も消えて小百合を厄介払いできるなんて最高よ。
「私は性格的に問題があります」
それはそうね。
「私よりこちらにおります芽依は魔力も高くこの世界には適任者かと思います」
「ちょっと、芽依まだ小学生だよ」
「ウワー! この子も可愛いな」
「ちょっと待ってよ。芽依よりこっちの菫ちゃんは性格きち自己中心的で頭も悪いけど顔だけは可愛いよ。菫ちゃんがお勧めだよ」
「ちょっと芽依! どんな紹介してるのよ!」
「うん、この子可愛い」
「私なんかよりこっちの四郎君がいいわよ。とても優しくてたよりになるわ」
バカだとは思ってたけど自分の好きな人を結婚相手に勧めてどうするのよ。それにしてもここまで無茶振りだと逆に爽快だわ。
「僕この男の子でもいい。かっこいいもん」
誰でもいいんかーい!!
「この男の子はダメよ」
母親が釘を刺す。それはそうよね。
「この子は私好みのイケメンじゃないわ」
ダメな理由はそっちかい!
「王様、王子様は決めかねているようですので、今回の件が片付きましたらゆっくりと考えていただくというのはどうでしょうか?」
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