控えなさい! 私はマリーよ!

小松広和

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第八十四話 よくある出会い

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   ある日の朝、四郎はいつもより早く起きていた。

「おはよう四郎君。今朝は早いのね?」

「なんか目が覚めてしまったんだ。小百合こそ早いな」

「私はいつもこのくらいの時間には起きてるわ。日課の朝の散歩を済ませたところよ」

「俺も散歩してこようかな」

「行ってきなさいよ。とても気持ちいいわよ」

と、ここまでは何気ない朝の会話だった。



「確かに朝の散歩は気持ちいいな」

ここは城から少し離れた城下町。あちらこちらで人々が賑わい始めていた。

ドシン!

「大丈夫?」

「ご、ごめんなさい!」

四郎は四つ角で食パンを加えた少女とぶつかってしまったのだ。これもまたよくある話だ。

よくあるのか? まあ、よくある話だろう。



「怪我はしてない? 派手に転んだけど」

「はい、大丈夫・・・・いててて」

「あまり大丈夫じゃないね。お城に行こう。怪我を治して貰えると思うよ」

「そんな恐れ多い」

「いいから、おいで」

結局少女は四郎と城へ向かうのであった。



当然この展開は一揉めありそうな予感であるが、無頓着な四郎にそれを察知する能力はないのである。



アリアに怪我を治して貰いすっかり元気になった少女は大変喜びで四郎に丁寧すぎるお礼を言うのであった。

「本当にありまとうございます。なんとお礼を言っていいかわかりません。私にできることがあれば何でも行ってください」

「そんなお礼なんて言わなくてもいいよ。それよりせっかくの食パンを落としてしまったね。そうだアリア、昨日のブルードラゴンフルーツ残ってる? この子に持ってきてあげてよ」

「はい、かしこまりました」

「い、いえ、結構です」

「遠慮しなくてもいいよ」

物陰でマリーがこの様子を見ているとも知らず、すっかり調子に乗る四郎である。



「あのう、自己紹介が遅れました。私はカノンと言います。遅刻しそうでしたので恥ずかしながら食パンを食べながら走っていました」

「ごめん。遅刻しちゃったね」

「いえいえ、悪いのは私ですから。曲がり角に全速力でツッコむなんて。それより、もしよろしかったら・・・・その・・・・」

「どうしたの?」

「あなたのお名前を教えていただけませんか?」

「ああ、俺は四郎だ。よろしく」



マリーの眉がピクピクと動く。因みにマリーから離れること三メートルの位置に小百合が腕組みをして立っている。小百合とは反対側の物陰には芽依が同じく眉をピクピクさせながら立っている。菫に至っては物陰にすら隠れずこの様子を窺っていたが、鈍感な四郎は気付く由もなかった。



「遅刻ってことはどこかに行くところだったんだね」

「はい、高校です」

「ここにも高校ってあるんだ」

「???」

「ああ、ごめん。俺はこの町の出身じゃないんだ。変なことを言っちゃったね」

「変だなんて、そんなことないです」

カノンは顔を赤くして言った。



四郎がカノンを城の外まで見送ると、

「あのう、またお話ししていただけますか?」

と言った。

「ああ、もちろんいいよ」

「ありがとうございます」

喜んで帰って行くカノンに大きく手を振る四郎であった。当然ここまでは幸せな気分満載の四郎君であるが、カノンが消えて見えなくなる頃、背筋に寒気を感じた。これぞ野生の勘か。



「いつまで手を振ってるのよ」

「マ、マリー! 見てたのか?」

「全部見てたわよ!」

「誤解するな。俺は怪我した少女を助けただけだぞ」

「どう見たって恋の始まりって雰囲気じゃない!」

「そ、そんなことはないと思うぞ」

「覚悟はいいわね?」



マリーの顔が徐々に赤くなっていく。

「た、助けて!」

四郎は後ろを向いて逃げようとすると、

「何度同じ過ちを繰り返せばわかるのかしら?」

小百合が日本刀を上段に構えている。右を向くと芽依が、

「お兄ちゃんは何回死ねば気が済むのかなあ?」

と、槍を回す。左は、

「私という婚約者がいるのに」

と、菫が得体の知れない武器をこちらに向ける。



『何でこうなるんだ? そうだ! アリアに助けを求めよう。アリアなら万が一殺されても蘇生してくれる』

四郎はアリアを見つけると私と菫の間を突破してアリアに飛びついた。

「お願い助けて!」

「アリア! 四郎を渡しなさい」

「マリー様。四郎様も悪気があったわけではありませんし、許されてはいかがでしょう」

「四郎を渡さないと首よ」

「はい、どうぞ」

「ひえー!」

こうして簡単に手渡される四郎であった。

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