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本編
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毎日夜遅くまで遊び歩いてたり、家に帰らない日もあったりした。
親父は寺の住職であり、寺の家系で育った俺は小さい頃何事にも厳しく育てられた。
友達と遊ぶ事も限定されていてほとんど家と学校の往復ばかり繰り返されていた日々
お経を暗記させられたり、写経や精神鍛錬のために座禅もしなくてはならない日常を送っていた。
そんな日々がその当時の俺には耐えられなかった。
中学でいろんな友達が出来、その頃から俺は親父に反抗してきた。
いつの日か写経や座禅などをしない日が出来てきてそれが日に日に増えてきて
中学を卒業する頃には一切しなくなった。
短かった髪もだんだんと伸びてきたりもした。
これでも習慣か勉強も仲間よりかは断然と出来ていて、高校へと通うことが出来た。
月日がたつたびに、伸びていた髪を切ったりまた伸ばしたり、髪の色を変えたり、剃り込みをしたりしていろんなヘアアレンジをしていた。
そして、行き付いたのが今の髪型
スキンヘッドだった。
スキンヘッドにしてからは一度も髪を伸ばさずにしてきた。
目がたれ目だったのが嫌いで少しでも吊り上がってるように見せるために目じりに赤いラインを引くようにもなり、さらに両耳に某の誕生石であるルビーのピアスを付け、左耳に黒のフープステンレスピアスを付けるようにもなっていた。
夜遅くまで遊んだり、家に帰らなかったり、喧嘩を売られれば買ったりして
何人ものツレや仲間と遊ぶ生活を送っていた。
その頃俺はぞくによるヤンキーと言われるようになったいてた。
それは突然だった。
半ば親に飽きられていて連絡を一切取っていなかった母親からメールが送られてきた。
【お父さんが倒れた】
の一文で
久々に家に帰ると今までピンピンしていた親父が痩せこけていて布団で横になっていた。
それから数日が経つと親父はこの世から去って行った。
親父は死ぬ直前に
「寺はお前にまかせた」
と言って目を閉じた。
それから、俺は半ば強制的に世間的にいうヤンキーから寺の住職になった。
親父が死んで俺が住職となってから数年
住職としての仕事もだいぶ慣れてきた頃
アイツは当然現れた。
親父が死んでから日がたたない頃
俺は住職としての仕事し強制的にやらされて
それが嫌で、夜は街へと出歩いては
自分から喧嘩をふきかけて何人もの怪我人を出していた。
喧嘩をしてストレス発散させるという生活を住職になっても続けていた。
某はいつものように竹箒を持って玄関から出てきた。
ガラガラ……
「あー……だりぃ何で俺がこんな事しなけりゃーいけねーんだよ…」
「…………え?」
いつものように竹箒も持って掃き掃除をしようとしていた
しかし、いつもとは違う所があった。
それは…………
一人女の子が座って遊んでいた。
「……どーした?一人か?」
声をかけると女の子は顔をこちらに向けた
「お兄ちゃんだれぇ?」
「お、俺?某」
「なにがし?」
「そ、君は?」
「ココア!」
「ここあ…ちゃん…て、言うのか」
「漢字はねぇこう書くの!」
女の子は地面に【心愛】と書いているのを見てその正面に某はしゃがんだ。
「心愛ちゃんはどーしてここにいるのかな?」
「おばあちゃん足悪くて遊べないし友達も家族と出かけたから一人で遊んでたの」
心愛は、寂しそうな顔でもなく不安な顔でもなく笑顔で言っていた。
「寂しくないの?」
「お兄ちゃんがいるから大丈夫!」
先ほどよりキラキラとした笑顔だった。
その日からたまに心愛ちゃんがここに来るようになった。
それと比例するように心愛ちゃんが来る日は大人しく家にいるようになってきていた。
日に日に心愛ちゃんのおかげか某の夜遊びが減っていた。
今日も竹箒を持って掃きに行くと
一人で遊んでいる心愛ちゃんがいた。
「心愛ちゃん、おはよー」
「お兄ちゃん!おはよー!」
今日も元気に挨拶を返してくれる心愛ちゃん
「今日もそこで大人しく遊んでてね?」
「うん!お兄ちゃんは仕事頑張ってね!」
「あぁー」
ほぼ毎日見ることが出来る心愛ちゃんのその笑顔に俺は癒された。
その笑顔に俺の心は少しずつ浄化されていっている。
竹箒で寺の周りを掃いた後は
小さい頃耐えられなかったお経、写経や座禅をする日常を
この寺を無理やり継がされた頃から続けていた。
心愛ちゃんと出会ってからそれらは苦ではなくなった。
某は一日の仕事が終わると心愛ちゃんがまだ寺の周りで遊んでいないかを確認しに外に出た。
外に出ると案の定まだ一人で遊んでいる心愛ちゃんがいたのだった。
「こーこあちゃん!」
「あ、お兄ちゃん!もう終わったの?」
「あぁー終わったよ」
「おつかれさま!」
某の疲れは心愛ちゃんの笑顔で消えていくのであった。
「心愛ちゃん、もう遅いから今日は帰ろっか」
「あ、うん!」
「はい」
某は左手を差し出すとその左手に心愛は右手を添えた。
最初の頃はなかなか不慣れで2人の間に少しの壁があったものの
今は心愛ちゃんを送って帰る時には手をつないぐまでに2人の仲は縮でいる。
心愛は二階建ての一軒家で祖母と2人で暮らしている。
いつも某は心愛を家の縁側に送り届け、心愛の祖母瑠美さんと話してから帰宅している。
「おばーちゃん!ただいまー!」
と、元気よく言うと障子から瑠美さんが出てきた。
「心愛ちゃんおかえり、いつもありがとね、某くん」
「いえ、送ってるだけですから」
「心愛ちゃんお家に入って手を洗っておいで」
「はーい」
返事をすると心愛は靴を脱いで家の中に入って行った。
「某くん、いつもありがとね」
「いえ」
「あの子の両親はどっか行ってもう帰ってこないかも知れないのに 、心愛ちゃんはいつまでも帰ってくると信じているんじゃ…」
「そーなんですか…」
アイツがいつも瑠美さんか学校の事しか言わないのはそのせいなのか…
「わしはそう、長くないんじゃ」
「あんたが死んだらアイツが泣きますよ、だからそんな事言わないでください!」
「ありがとな……でも、本当の事なんじゃよ…。あの子にはずっと笑顔でいてほしいがのぉ」
「………」
それ以上は言えなかった。
瑠美さんは遠くを見つめて何か見つめているようだったから…
その日も瑠美さんと話をしていると着替えた心愛ちゃんが再び俺の前に現れた
「おばあちゃん、手あらったしきがえてきたよ!」
「そうか、えらいのぉ。心愛ちゃんもここ座って話すかの?」
「うん!」
心愛も混ざって3人で仲良く会話をした。
心愛ちゃんはいつも突然だった。
「ねぇおばあちゃん!ここあね、ここあね!」
「なんだい?」
「ここあね、お兄ちゃんが好きなんだ♪」
「え?」「そーなんね、お兄ちゃんの事好きなんね」
「うん!そしてね、ここあがねおっきくなったら結婚するの!」
「いいね~結婚式にわしも呼んでな?」
「えへへ。もちろん!」
完全に俺はその会話は外されていた。
心愛ちゃんが現れたのも突然だったけど、告白?されたのも突然だった。
これは………
………………子供が言っている言葉だから、本気と受け取らなくていいんだよね?
この時は俺の本心も心愛ちゃんの恋心も全く分かっていなかった。
そして、これが最後の3人での会話になるとは…
それから数日たって来た頃
俺は心愛ちゃんを見かけなくなっていた。
心愛ちゃんに逢わない日々が続き、心が気持ちがすっきりとしなくなっていた。
心愛は起きていつも起こしてくれるおばあちゃんを起こしに行った。
「おばぁーちゃん、あさだよ~おきて?」
襖を開けそこで声をかけても瑠美は起きない。
心愛は瑠美の近くにより身体を揺らしたり声をかけた。
「おばぁーちゃん、あさだよ~?」
それでも瑠美は起きなかった。
「おばぁーちゃん?……」
心愛は何度も「おばぁーちゃん」と呼び続けたけど瑠美の目は開かなかった。
心愛は某のいる寺へと走った。
寺に着くとすぐに某を見つけることが出来た。
「お兄ちゃん…」
「どうした?」
「おばあちゃんが起きないの」
某はすぐさま心愛を連れて瑠美の家へ走って行った。
翌日に葬儀が行われた。
久々に心愛ちゃんの顔を見た…
けどそこには、いつも癒されていたあの笑顔はなかった。
あの日から会ってなかった。
棺桶には白い服を着て花で囲まれてる瑠美さん
棺桶の中の瑠美さんは笑顔で眠っていた。
心愛ちゃんは部屋の隅っこでどこかポカンとしていた。
俺を呼びに来たときも泣いていなかった。
心愛ちゃんは泣いたのだろうか?
そんなことを考えていると自然に隣にいた母さんに話しかけていた。
「なぁ母さん…」
「なに?」
「心愛ちゃんどうなるんだ?」
「どーなるんでしょうね…両親も親戚で引き取ってくれる人もいらっしゃらないらしいですし」
「なぁ母さん
………俺が引き取ってもいいか?」
心愛ちゃんは俺の家でを引き取ることになった。
あの時
「あんた引き取るって…」
「あぁー」
「心愛ちゃんが来たいって言ったらね」
「わかった」
返事をすると部屋の隅にいた心愛ちゃんのもとに行く。
「心愛ちゃん…」
呼ぶと心愛ちゃんは今俺に気が付いたように顔を上に向けた。
「……なに?お兄ちゃん」
「これから俺の家で暮らさないか?」
「お兄ちゃんと?」
「あぁー」
「けど…」
「帰りたい時に帰っていいから」
「………」
「心愛ちゃん?」
「……暮らす」
「そ、じゃー帰ろっか」
「うん」
この日から俺の家で心愛ちゃんも暮らしている。
心愛を家に連れて帰ってからもまだ、心愛は一度たりとも人の前で泣いていなかったのであった。
心愛ちゃんはここに住んでから昔から仲良かった(俺は知らなかったけど) 母さんと一緒に料理を作ったりして、お手伝いをしている。
瑠美さんが亡くなってから…
いや、心愛ちゃんが俺を呼びに着ていた時でさえ
一度も心愛ちゃんが泣いたの所を見てない
心愛ちゃんは泣いたのかな?
心愛ちゃんの部屋は母さんが俺と一緒の方が安心するだろうからって言って俺の部屋で寝ている。
「あ、お兄ちゃん。おふろ入ってきた!」
「心愛ちゃん、ちょっと来て、髪乾かすぞ」
「うん!お兄ちゃんよろしく」
俺は右手にドライヤーを持ち俺の前に座った心愛ちゃんの髪を乾かした。
「なぁ心愛ちゃん」
「なぁーに?」
「瑠美さんがいなくなって泣いた?」
質問の意味がわからなかったのか数秒俺を見上げポカンとしていた心愛ちゃんは顔を横にふった。
「感情を押し殺すなよ…。瑠美さんに逢えなくなって寂しいんだろ?」
「…おにいちゃ」
心愛ちゃんは俺に顔を押し付けて抱き付いてきた。
俺はそれを受け止めるだけ…
「泣いてもいいんだぞ」
「………うん」
心愛ちゃんの涙をこの時初めて見た。
やっと抑えてた気持ちを解放している心愛ちゃんを見て俺は一生心愛ちゃんを守っていこうと思った。
この感情がまだ親心なのか何なのかはわからない。
けど、いつも癒されているあの笑顔が消えないようにしようと思った。
心愛ちゃんと俺の関係は今も変わっていない。
変わったとしたら心愛ちゃんが積極的になったこと
そして、そのたびに俺がドキドキしていること事くらい。
心愛ちゃんは本気かわからないけど
俺は少しずつ心愛ちゃんに惹かれていることに気が付いていた。
某は竹箒を近くに置いて縁側で休憩をとっていた。
休憩していると後ろの方からドタドタと走ってくる音が聞こえた。
「おにーちゃん!」
という声に振り向くと
「グエッ」
突進して抱き付いてくる小さいの…
いや心愛が抱き付いていた。
「心愛ちゃん…突進して抱き付くの止めようか」
「へへへ」
心愛はニッコリ笑顔を某に向けると彼の膝の上に座った。
「お兄ちゃんおつかれさま!」
「ありがと」
と言うと心愛ちゃんは俺がいつも癒されてるあの笑顔を俺に向けてくれる。
「おにーちゃん!好きだよ!」
笑顔で心愛ちゃんに言われるとドキッとする
けど俺は
「ありがとう」
と返事をして抱き締めていた腕をもう少し強くする。
それ以上の言葉はまだ言わない
この返事をちゃんと返すのは心愛ちゃんがもう少し大きくなってから
それでも、俺の事が好きなら…
それまで俺は心愛ちゃんを待つ
俺の返事はもう決まってる。
最初はこの気持ちがなんなのか分からなかったけど、
心愛ちゃんと暮らすようになってから
やっと分かった俺の気持ち
家族愛でもなかった
心愛ちゃんが好きという気持ち…。
親父は寺の住職であり、寺の家系で育った俺は小さい頃何事にも厳しく育てられた。
友達と遊ぶ事も限定されていてほとんど家と学校の往復ばかり繰り返されていた日々
お経を暗記させられたり、写経や精神鍛錬のために座禅もしなくてはならない日常を送っていた。
そんな日々がその当時の俺には耐えられなかった。
中学でいろんな友達が出来、その頃から俺は親父に反抗してきた。
いつの日か写経や座禅などをしない日が出来てきてそれが日に日に増えてきて
中学を卒業する頃には一切しなくなった。
短かった髪もだんだんと伸びてきたりもした。
これでも習慣か勉強も仲間よりかは断然と出来ていて、高校へと通うことが出来た。
月日がたつたびに、伸びていた髪を切ったりまた伸ばしたり、髪の色を変えたり、剃り込みをしたりしていろんなヘアアレンジをしていた。
そして、行き付いたのが今の髪型
スキンヘッドだった。
スキンヘッドにしてからは一度も髪を伸ばさずにしてきた。
目がたれ目だったのが嫌いで少しでも吊り上がってるように見せるために目じりに赤いラインを引くようにもなり、さらに両耳に某の誕生石であるルビーのピアスを付け、左耳に黒のフープステンレスピアスを付けるようにもなっていた。
夜遅くまで遊んだり、家に帰らなかったり、喧嘩を売られれば買ったりして
何人ものツレや仲間と遊ぶ生活を送っていた。
その頃俺はぞくによるヤンキーと言われるようになったいてた。
それは突然だった。
半ば親に飽きられていて連絡を一切取っていなかった母親からメールが送られてきた。
【お父さんが倒れた】
の一文で
久々に家に帰ると今までピンピンしていた親父が痩せこけていて布団で横になっていた。
それから数日が経つと親父はこの世から去って行った。
親父は死ぬ直前に
「寺はお前にまかせた」
と言って目を閉じた。
それから、俺は半ば強制的に世間的にいうヤンキーから寺の住職になった。
親父が死んで俺が住職となってから数年
住職としての仕事もだいぶ慣れてきた頃
アイツは当然現れた。
親父が死んでから日がたたない頃
俺は住職としての仕事し強制的にやらされて
それが嫌で、夜は街へと出歩いては
自分から喧嘩をふきかけて何人もの怪我人を出していた。
喧嘩をしてストレス発散させるという生活を住職になっても続けていた。
某はいつものように竹箒を持って玄関から出てきた。
ガラガラ……
「あー……だりぃ何で俺がこんな事しなけりゃーいけねーんだよ…」
「…………え?」
いつものように竹箒も持って掃き掃除をしようとしていた
しかし、いつもとは違う所があった。
それは…………
一人女の子が座って遊んでいた。
「……どーした?一人か?」
声をかけると女の子は顔をこちらに向けた
「お兄ちゃんだれぇ?」
「お、俺?某」
「なにがし?」
「そ、君は?」
「ココア!」
「ここあ…ちゃん…て、言うのか」
「漢字はねぇこう書くの!」
女の子は地面に【心愛】と書いているのを見てその正面に某はしゃがんだ。
「心愛ちゃんはどーしてここにいるのかな?」
「おばあちゃん足悪くて遊べないし友達も家族と出かけたから一人で遊んでたの」
心愛は、寂しそうな顔でもなく不安な顔でもなく笑顔で言っていた。
「寂しくないの?」
「お兄ちゃんがいるから大丈夫!」
先ほどよりキラキラとした笑顔だった。
その日からたまに心愛ちゃんがここに来るようになった。
それと比例するように心愛ちゃんが来る日は大人しく家にいるようになってきていた。
日に日に心愛ちゃんのおかげか某の夜遊びが減っていた。
今日も竹箒を持って掃きに行くと
一人で遊んでいる心愛ちゃんがいた。
「心愛ちゃん、おはよー」
「お兄ちゃん!おはよー!」
今日も元気に挨拶を返してくれる心愛ちゃん
「今日もそこで大人しく遊んでてね?」
「うん!お兄ちゃんは仕事頑張ってね!」
「あぁー」
ほぼ毎日見ることが出来る心愛ちゃんのその笑顔に俺は癒された。
その笑顔に俺の心は少しずつ浄化されていっている。
竹箒で寺の周りを掃いた後は
小さい頃耐えられなかったお経、写経や座禅をする日常を
この寺を無理やり継がされた頃から続けていた。
心愛ちゃんと出会ってからそれらは苦ではなくなった。
某は一日の仕事が終わると心愛ちゃんがまだ寺の周りで遊んでいないかを確認しに外に出た。
外に出ると案の定まだ一人で遊んでいる心愛ちゃんがいたのだった。
「こーこあちゃん!」
「あ、お兄ちゃん!もう終わったの?」
「あぁー終わったよ」
「おつかれさま!」
某の疲れは心愛ちゃんの笑顔で消えていくのであった。
「心愛ちゃん、もう遅いから今日は帰ろっか」
「あ、うん!」
「はい」
某は左手を差し出すとその左手に心愛は右手を添えた。
最初の頃はなかなか不慣れで2人の間に少しの壁があったものの
今は心愛ちゃんを送って帰る時には手をつないぐまでに2人の仲は縮でいる。
心愛は二階建ての一軒家で祖母と2人で暮らしている。
いつも某は心愛を家の縁側に送り届け、心愛の祖母瑠美さんと話してから帰宅している。
「おばーちゃん!ただいまー!」
と、元気よく言うと障子から瑠美さんが出てきた。
「心愛ちゃんおかえり、いつもありがとね、某くん」
「いえ、送ってるだけですから」
「心愛ちゃんお家に入って手を洗っておいで」
「はーい」
返事をすると心愛は靴を脱いで家の中に入って行った。
「某くん、いつもありがとね」
「いえ」
「あの子の両親はどっか行ってもう帰ってこないかも知れないのに 、心愛ちゃんはいつまでも帰ってくると信じているんじゃ…」
「そーなんですか…」
アイツがいつも瑠美さんか学校の事しか言わないのはそのせいなのか…
「わしはそう、長くないんじゃ」
「あんたが死んだらアイツが泣きますよ、だからそんな事言わないでください!」
「ありがとな……でも、本当の事なんじゃよ…。あの子にはずっと笑顔でいてほしいがのぉ」
「………」
それ以上は言えなかった。
瑠美さんは遠くを見つめて何か見つめているようだったから…
その日も瑠美さんと話をしていると着替えた心愛ちゃんが再び俺の前に現れた
「おばあちゃん、手あらったしきがえてきたよ!」
「そうか、えらいのぉ。心愛ちゃんもここ座って話すかの?」
「うん!」
心愛も混ざって3人で仲良く会話をした。
心愛ちゃんはいつも突然だった。
「ねぇおばあちゃん!ここあね、ここあね!」
「なんだい?」
「ここあね、お兄ちゃんが好きなんだ♪」
「え?」「そーなんね、お兄ちゃんの事好きなんね」
「うん!そしてね、ここあがねおっきくなったら結婚するの!」
「いいね~結婚式にわしも呼んでな?」
「えへへ。もちろん!」
完全に俺はその会話は外されていた。
心愛ちゃんが現れたのも突然だったけど、告白?されたのも突然だった。
これは………
………………子供が言っている言葉だから、本気と受け取らなくていいんだよね?
この時は俺の本心も心愛ちゃんの恋心も全く分かっていなかった。
そして、これが最後の3人での会話になるとは…
それから数日たって来た頃
俺は心愛ちゃんを見かけなくなっていた。
心愛ちゃんに逢わない日々が続き、心が気持ちがすっきりとしなくなっていた。
心愛は起きていつも起こしてくれるおばあちゃんを起こしに行った。
「おばぁーちゃん、あさだよ~おきて?」
襖を開けそこで声をかけても瑠美は起きない。
心愛は瑠美の近くにより身体を揺らしたり声をかけた。
「おばぁーちゃん、あさだよ~?」
それでも瑠美は起きなかった。
「おばぁーちゃん?……」
心愛は何度も「おばぁーちゃん」と呼び続けたけど瑠美の目は開かなかった。
心愛は某のいる寺へと走った。
寺に着くとすぐに某を見つけることが出来た。
「お兄ちゃん…」
「どうした?」
「おばあちゃんが起きないの」
某はすぐさま心愛を連れて瑠美の家へ走って行った。
翌日に葬儀が行われた。
久々に心愛ちゃんの顔を見た…
けどそこには、いつも癒されていたあの笑顔はなかった。
あの日から会ってなかった。
棺桶には白い服を着て花で囲まれてる瑠美さん
棺桶の中の瑠美さんは笑顔で眠っていた。
心愛ちゃんは部屋の隅っこでどこかポカンとしていた。
俺を呼びに来たときも泣いていなかった。
心愛ちゃんは泣いたのだろうか?
そんなことを考えていると自然に隣にいた母さんに話しかけていた。
「なぁ母さん…」
「なに?」
「心愛ちゃんどうなるんだ?」
「どーなるんでしょうね…両親も親戚で引き取ってくれる人もいらっしゃらないらしいですし」
「なぁ母さん
………俺が引き取ってもいいか?」
心愛ちゃんは俺の家でを引き取ることになった。
あの時
「あんた引き取るって…」
「あぁー」
「心愛ちゃんが来たいって言ったらね」
「わかった」
返事をすると部屋の隅にいた心愛ちゃんのもとに行く。
「心愛ちゃん…」
呼ぶと心愛ちゃんは今俺に気が付いたように顔を上に向けた。
「……なに?お兄ちゃん」
「これから俺の家で暮らさないか?」
「お兄ちゃんと?」
「あぁー」
「けど…」
「帰りたい時に帰っていいから」
「………」
「心愛ちゃん?」
「……暮らす」
「そ、じゃー帰ろっか」
「うん」
この日から俺の家で心愛ちゃんも暮らしている。
心愛を家に連れて帰ってからもまだ、心愛は一度たりとも人の前で泣いていなかったのであった。
心愛ちゃんはここに住んでから昔から仲良かった(俺は知らなかったけど) 母さんと一緒に料理を作ったりして、お手伝いをしている。
瑠美さんが亡くなってから…
いや、心愛ちゃんが俺を呼びに着ていた時でさえ
一度も心愛ちゃんが泣いたの所を見てない
心愛ちゃんは泣いたのかな?
心愛ちゃんの部屋は母さんが俺と一緒の方が安心するだろうからって言って俺の部屋で寝ている。
「あ、お兄ちゃん。おふろ入ってきた!」
「心愛ちゃん、ちょっと来て、髪乾かすぞ」
「うん!お兄ちゃんよろしく」
俺は右手にドライヤーを持ち俺の前に座った心愛ちゃんの髪を乾かした。
「なぁ心愛ちゃん」
「なぁーに?」
「瑠美さんがいなくなって泣いた?」
質問の意味がわからなかったのか数秒俺を見上げポカンとしていた心愛ちゃんは顔を横にふった。
「感情を押し殺すなよ…。瑠美さんに逢えなくなって寂しいんだろ?」
「…おにいちゃ」
心愛ちゃんは俺に顔を押し付けて抱き付いてきた。
俺はそれを受け止めるだけ…
「泣いてもいいんだぞ」
「………うん」
心愛ちゃんの涙をこの時初めて見た。
やっと抑えてた気持ちを解放している心愛ちゃんを見て俺は一生心愛ちゃんを守っていこうと思った。
この感情がまだ親心なのか何なのかはわからない。
けど、いつも癒されているあの笑顔が消えないようにしようと思った。
心愛ちゃんと俺の関係は今も変わっていない。
変わったとしたら心愛ちゃんが積極的になったこと
そして、そのたびに俺がドキドキしていること事くらい。
心愛ちゃんは本気かわからないけど
俺は少しずつ心愛ちゃんに惹かれていることに気が付いていた。
某は竹箒を近くに置いて縁側で休憩をとっていた。
休憩していると後ろの方からドタドタと走ってくる音が聞こえた。
「おにーちゃん!」
という声に振り向くと
「グエッ」
突進して抱き付いてくる小さいの…
いや心愛が抱き付いていた。
「心愛ちゃん…突進して抱き付くの止めようか」
「へへへ」
心愛はニッコリ笑顔を某に向けると彼の膝の上に座った。
「お兄ちゃんおつかれさま!」
「ありがと」
と言うと心愛ちゃんは俺がいつも癒されてるあの笑顔を俺に向けてくれる。
「おにーちゃん!好きだよ!」
笑顔で心愛ちゃんに言われるとドキッとする
けど俺は
「ありがとう」
と返事をして抱き締めていた腕をもう少し強くする。
それ以上の言葉はまだ言わない
この返事をちゃんと返すのは心愛ちゃんがもう少し大きくなってから
それでも、俺の事が好きなら…
それまで俺は心愛ちゃんを待つ
俺の返事はもう決まってる。
最初はこの気持ちがなんなのか分からなかったけど、
心愛ちゃんと暮らすようになってから
やっと分かった俺の気持ち
家族愛でもなかった
心愛ちゃんが好きという気持ち…。
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