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その16
しおりを挟む「ク、クリフォード。……何でいるの!?」
「何でって、エティを待ってた。クリフォードじゃなくてフォードだろ」
フォード?フォードと呼べと?
それよりこの男、「一緒に行く」なんて軽く言っていたが本気だったのか。
クリフォードは和かに笑うと、エティが重そうに持っていた手提げの荷物を取り上げるように手に取った。上下黒の服を纏《まと》ったその姿は、騎士服とはまた違った雰囲気でクリフォードの端麗な顔を演出していた。雑に纏めてある金の髪すらも色気を足している。
エティはクリフォードの隣にいるレオを見た。レオは何も知らなかったようだが『ボクはエティを乗せれるならどこに行こうと構わないけど』と心なしか嬉しそうにしている。
「随分重いな。もしかして道中野宿するつもりだったのか?」
「そう、ですけど……。私の家まで馬で2日はかかりますよ?途中、山の中だし、本気で行く気ですか?」
「こっちが聞きたい。その山の中を本気でひとりで行く気だったのか?」
クリフォードの口調が少し怒っているのは気のせいだろうか?いや、顔も何故か怒っている。この国に来る時もひとりで来たのだ。何がいけないのだろう?
「ここに戻って来るのは6日くらい後になりますよ?仕事はどうするんですか」
「ちゃんと休みをもらってあるし、ハンクにも許可を得ている」
クリフォードはエティを抱き上げるとレオにふわりと乗せた。街で馬を借りて乗る予定だったのでズボンを履いていたが、いつものスカートだったら腿まで捲れて脚が丸見えだろう。
「わ、レオ!凄く目線が高いわ!それにこの乗りごごち……!なんて素敵なの!」
『……そ、そう?』
「よ、よかったな……」
エティのあまりの喜び様に、クリフォードとレオは曖昧な返事しかできず、昨夜一度乗ってるとは言い出せずに出発した。
もしかしてクリフォードは例の約束を果たすつもりで来たのだろうか?エティは庭先でちょっと乗って回るくらいしかレオに乗せてもらえないと思っていたので驚いた。クリフォードが一緒なのは不本意だが、レオに乗って国に帰れる事をエティは素直に喜んだ。
これがなければなぁ、とエティは自分を見下ろした。
背後から回された逞しい片腕が優しく気遣うようにエティの腰を固定している。身体も何気にぴったりくっついて、ちょっと密着しすぎじゃないか?と抗議しようとしたら頭にキスがきた。
「あの、そういうのやめてもらえます?」
「プライベートだから敬語はなしにしないか?時々普通に話してるだろ?あと、ちゃんと名前で呼んでくれ」
「は、はぁ……」
後ろから耳元で話され表情は見えないがクリフォードの声はとても明るかった。結局エティの願いは聞き入れらず、クリフォードはエティにべったりとくっついたまま街の端まで移動した。
目的地であるエティの生家まで最短時間で着くには、このまま国境の深い山に入り、その山中で一晩過ごして夜が明けたら動き出すのが理想的だ。エティは当初そのつもりでいた。しかしクリフォードは山の手前にある宿に泊まると言い出した。お互いの意見が割れ、平行線だった話し合いは暮れ始めた空から雨が降ってきた事によって、エティが折れる羽目になった。
よく考えたらレオは2人も乗せているのだ。急ぐつもりはなかったが、危うくレオに無理をさせてしまうところだった。宿屋の裏にある小さな馬小屋で、エティはブラッシングしながらレオを十分に労った。レオは国から出るのが初めてで、この旅が楽しみだとエティに言った。
2人が入ったのは昔からある小さな宿屋で、国境を越える人々が主に利用している。昔からあるものの、目立って古汚い様子もなく部屋は清潔に保たれて、食事も美味しかった。
先払いの宿代は全てクリフォードが勝手に支払って、エティからは絶対に受け取ろうとしなかった。エティは仕方なくその好意に甘える事にした。だがすぐに後悔する羽目になった。
「クリフォードっ、んっ……」
「フォードだ。エティ」
「フォード!……離してっ」
エティはレオの世話を終わらせて、借りた部屋に入った途端、先に部屋にいたクリフォードに抱き締められキス責めに合った。
「んンンッ!!」
一部屋しか借りなかった時点で警戒はした。しかし先日、クリフォードの寝室に泊まった時は手を出されなかったのもあって、エティは少し油断していた。
力強い腕から逃れられず、エティはベッドに組み敷かれた。クリフォードの寝室の柔らかいベッドとは違い、標準サイズのベッドはエティの使い慣れた硬いベッドに似ていた。指を絡ませたままベッドに縫い付けるように押し当てられ、キスが続けられる。
「……はっ、んっ」
いきなり激しいキスで始まり、文句どころか息継ぎが上手く出来ずにエティは頭がボーッとしてきた。クリフォードの舌が絶え間なくエティの口内を弄り、互いの舌が触れ合うとエティの身体は自然と反応してしまった。繋がれたクリフォードの指を無意識にキュッと握り返して気持ちいいと教えてしまう。
クリフォードは唇を一旦離して優しく微笑むと、最初とは間逆にゆっくりと唇を重ねてきた。チュッチュと音を立て唇を啄んで、甘噛みした。再び舌が進入してきてエティの舌を探り当てると反応を引き出すように絡められる。
他の人と経験していないエティは、誰かと比べようがなかったが、クリフォードからのキスは気持ちいいと思った。目を閉じてしまうと感覚だけが研ぎ澄まされ、身体の芯まで気持ち良い痺れが届く勢いだった。
クリフォードの舌先が何度も自分の舌を突いてくる。あまりのしつこさに押し返すように舌を当てるとクリフォードはグッと口づけを深めた。同時にエティは気づいてしまった。自分から相手に絡めると気持ち良さが増すのだ。
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