知ってるけど言いたくない!

るー

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その15

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恐る恐る自分の身体を見下ろしてエティはホッとした。服はちゃんと着ている。身体に違和感もない。クリフォードに何かされたわけではないようだ。


「酒は抜けたか?」
「ひいっ!!」

急に声をかけられエティは飛び上がるくらい驚いた。

さっきまで少年のように若く見えた寝顔とは違って、色っぽく見える寝起き顔は何故だ。差し込んだ朝日が起き上がって揺れる金のサラサラな髪に反射して眩しい。いやいや、そんなのに気を取られている場合ではない、とエティはクリフォードの出方を伺った。

クリフォードは、驚いたまま一生懸命何かを考えているエティの紫銀の髪を一房手に取ると、微笑みながらキスを落とした。


「具合はどうだ?二日酔いは?」
「二日酔い……?」


そんなのなった事がない。二日酔いとは酔った人がなるものでしょう?と首を傾げるとクリフォードは「覚えてないのか?」と少し残念そうな顔をした。


「酔ってないと言い張っていたが、どう見ても酒がしっかり回ってた」

「……嘘でしょ。今まで一度もそんな風になった事なかったのに……」

「体質が変わったんじゃないのか?女性は出産したりすると体質が変わると聞いた事があるぞ」

「私はまだ産んでません!」
「はははっ、だよな」

クリフォードは笑いながらベッドから降りるとグラスに水を注いでエティに手渡した。いつものバスローブ姿のクリフォードはとても機嫌が良さそうにエティを見下ろした。

その視線から逃れるようにクリフォードに背を向けると水を飲みながらエティは考えた。


体質が変わった……?
もしかして魔力が生まれたせい?


エティは自分に魔力が宿ってから、どんな能力があるか色々試してみた。だが今までなかった魔力をどう使うのかがわからず、結局今のところはレオやラズなど色々な動物と会話ができる事と、もうひとつ。

チラッと振り返るとクリフォードはクローゼットの前に立っていた。どうやら今日着る服を選んでいるようだった。その広い背中には馬小屋で見た物と同じ物が見える。


文字が蔓のようになってクリフォードの胴周りを中心に全身に纏わり付いている。胴以外は文字が薄く気にならないが腰辺りの文字が一番濃く密集していた。その文字はエティが知る生活圏では見たことのない形をしていたが、不思議と読めた。きっと魔力によるものだと思う。エティは今までそれを読み解いてなかったが、クリフォードが背中を向けている隙にじっくり解読してみた。


「……のっ!」

呪いじゃん!!


「どうした?」

「べっ、別に!!」

誤魔化すようにあちこち視線を泳がせ挙動不審になってしまったが、クリフォードはクスリと笑うとベッドに座るエティの側に腰を下ろした。

何となくわかってしまった。クリフォードが女性とシても絶対に達しない原因。

誰にやられたのか、クリフォードには子孫を残せない呪いがついていた。子孫を残せないのが目的なら性的な部分は絡ませなくても呪いがかけられると思う。だがクリフォードにはベッドで満足出来ないようにと、巧妙な呪いになっている。どう考えても女性とのトラブルの末、こうなったのだろう。


自業自得としか言いようがない。


そんな事を露にも思わないクリフォードは思い出したように話を始めた。


「そうだ、訊ねる事がある。エティは明日から生家に顔を見せに行くため休暇を申し出ているとハンクから聞いたが、本当か?」

「本当ですけど……?」

「今まで一度もそんな事なかったそうじゃないか。急にどうした?もしかしてもうここには帰って来ないつもりじゃないだろうな?」

不満気に顔を寄せてくるクリフォードから逃げるようにエティは後退り、首を横に振った。

「まさか、そんな無責任なことしません。そんな事するくらいならとっくに黙っていなくなってます」

エティが無責任な行動を取ると、この屋敷の仕事を紹介してくれた酒場の奥さんに迷惑をかけてしまう。

「母から一度帰って来いと連絡があったので行くだけです」

「両親に何かあったのか?」

「いえ、ただ単に顔が見たいだけのようです」


そう、連絡が来たのだ。
その内容を告げたのは小鳥だったけど。

『目覚めたのね。おめでとう。色々言わなきゃいけない事があるから一度帰って来なさい。もちろん魔女だなんて口外してはダメよ』

って言ってましたー、と用件だけ告げると小鳥は青空へ消えていった。一瞬、便利だなぁと思ったがお礼も言えなかったし、休憩も取らずに行ってしまった。あの小鳥は大丈夫だろうか?


「俺も一緒に行く」

「……は?」

「どうせ街で馬を借りて行くつもりなんだろう?だったら俺と一緒にレオに乗っていけばいい」




寝言の様なことを言っていたクリフォードを無視してエティが自室に戻ると、今まで見たことないくらい究極に怒ったアネットが待っていた。
エティが「途中から記憶がない」と言い訳してもクリフォードの部屋に泊まった事が許せないらしく、アネットは一日中プリプリ怒っていた。

「さて、全部話してちょうだい」

仕事が終わって夜になり、時間ができたところでアネットから問い詰められる時間が始まった。当然全部なんて話せない。仕方なく要点だけ教える事にした。

「クリフォードに、気に入られてるみたい」

アネットは顔色を変えた。とても険しく、鋭い表情だった。品が漂うアネットでもそんな顔をするのかとエティは正直驚いた。

「ご主人様の部屋に泊まったのはそういう仲って事?エティはご主人様が好きなの?」

「大嫌いよ!昨夜は酔ってて覚えてないけど何もなかったわ!」

「それなら、いいけど」

昨夜、店に取り残されたアネットはハンクに送られ自室に戻ったらしい。

「ハンクさんって眼鏡をかけた方がいいと思うわ。私と顔を合わす度に目を細めるのよ」

怒ってはいるが会話はある。アネットはおそらく拗ねているだけだとエティは少し安心した。
  
「でも、エティはお酒に強いんじゃなかった?そんなに飲んでないでしょう?」

「うん、量は飲んでないけど強いお酒だったからかな。記憶が飛ぶほど急に弱くなるなんて……。もう今後はお酒を控えるわ」

酔って秘密をペラペラ話しかねない。とても危険だわ……。

エティはがっかり肩を落とした。


翌朝、アネットに見送られ屋敷を出たエティは、街に入る手前で信じられないものを見た。

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