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その37
しおりを挟む「俺もだ」
消え入りそうな声が聞こえたと思ったら、回していた腕を解かれ仰向けにされた。横から覗き込むようにクリフォードの顔が見えたかと思うと、すぐにキスがきた。
何がそうさせたのか、クリフォードはいきなり深く濃厚なキスを始めた。お互いの舌が絡み、身体に広がる甘い痺れが手足の力を奪った。
「……ん、あんっ」
エティがこの流れはヤバイなと思った瞬間、髪を触っていた手が次第に下りていき、胸を捉えた。
「フ、フォード。こんな所で変な事しないで」
「誰も見ていない。俺達だけだ」
エティの服のボタンを外しながら耳に下を這わせ、誘うように囁いた。
「ンッ……ふふっ、髪がくすぐったいわ」
「エティ……」
目を細めてエティを見下ろし、大きな手が大切だというように何度も髪を撫でた。
エティはクリフォードに髪を撫でられるのが特に好きだった。大きな手は、気持ち良さと一緒に安心を与えてくれる。
クリフォードが穏やかな時間を感じていたように、エティも穏やかな時間に浸っていた。ずっとこのままでいられればいいのに。閉じた瞼の奥で、願うようにそう思いながらエティはクリフォードの首に腕を回した。
「んっ……、あ。フォード、跡をつけないで」
「ここならアネット嬢からも見えないだろ?」
クリフォードは唇を首筋から、ほぼ胸の膨らみにかかった場所までずらした。
「そこもダメ。明日の夜に衣装の採寸があるから見えちゃう」
「……衣装?」
まさか、という表情でクリフォードが顔を上げた。
「あ、あれ?言ってなかった?……みたいだね、ごめん」
「あれは独身の女性がやるんだろ?」
少し拗ねたようなクリフォードに、私も一応独身ですが、とエティは視線をやった。
「どうしてもって頼まれたのよ。アネットも一緒だから大丈夫よ」
「俺が大丈夫じゃない」
クリフォードは全身でエティに覆い被さると、止めていた手を再開させた。エティの露わになった二つの膨らみの間に、顔を埋めると舌を這わせてゆっくりと膨らみの先まで舐め上げた。
「……っ!」
片方は口に含まれ、もう片方は指先で弄《いじ》られ、エティの息は浅くなってきた。クリフォードの手がエティの腿を撫で、服の上から秘所を探った。
「フォード……、お願い、もう止めて」
言葉とは裏腹に、艶のある絶え絶えの声にクリフォードは、止めるどころかエティの服を次々へと脱がし始めてしまった。ベッドの上なら別に構わないが、今は青空の下で他に誰もいないものの、開放的すぎる状況にエティは涙目になった。
「や、やだ……。恥ずかしすぎる」
クリフォードは膝を立てて座ると、もうすでにほぼ裸のエティを抱き起こし、自分の膝の間にエティを顔が見えるように収めた。そして自分が脱いだ上着をエティの肩に掛けた。
「すまん、嫉妬した」
バツが悪そうにクリフォードは目を伏せ謝った。エティは身体をそっと寄せると馬鹿ね、と小さく笑った。
この日、二人で過ごした穏やかな時間は、嵐の前の静けさだと、この時のエティは知る由もなかった。
翌日、仕事が終わったエティは “ 花嫁 ” の衣装の採寸をするため、街にある仕立て屋に来ていた。
アネットはエティと一緒に来たがっていたが、仕立て屋側から別々に来て欲しいと言われ、仕事が休みだった事もあり昼間に渋々一人で終わらせたようだった。
「今年の “ 花嫁 ” は綺麗どころが揃って見応えあるねぇ」
もう白髪の方が多い年配の女主人が「腕がなるよ」と楽しそうに採寸を始めた。
「 “ 花嫁 ” 役は三人でしたよね。アネットと、私と、もう一人の方は採寸終わられました?」
「ああ、一番最初に済んだよ。あんた達みんな細いから、ドレスはボリュームがあるデザインにした方が良さそうだね」
「奥さんがデザインを?三人とも同じですか?」
「ああ、そうだよ。あんただけ胸の所フリル足そうか?」
「……真顔で言わないでください」
エティは胸を押さえてうう、と情けない声を漏らした。
「春祭りまでそんなに日数がないですけど、衣装三人分も間に合うんですか?」
「ウチの針子達は優秀なんだよ。デザインがみんな同じだし余裕さ。それに毎年の事だからね」
採寸が終わり、エティが服を身につけていると女主人がグイッと遠慮なくエティの顔を覗き込んできた。
「わたしゃ長い事この仕事してきたが、あんたは別格に綺麗だよ。祭が終わった後、あんた大変だね」
「言い過ぎですよ。……大変って?」
「求婚の数だよ。選り取りみどりだね。まぁ、じっくりいいの選びなよ」
「そんな、野菜を買うんじゃないんだから……」
雑談を終え、エティが店の外に出ると空はオレンジ色に染まり、日が落ちる頃だった。
「シロ、お待たせ!退屈だったでしょう?」
『通る人が時々撫でてくれたから退屈はしなかったわ。急ぐなら屋敷まで走るけど、どうする?』
「ゆっくりで構わないから、話しながら帰りましょ」
エティはシロにキスをすると、ひらりとシロに跨った。シロはエティの合図無しで目的地まで進める。それは両者会話が成り立っているからと、信頼が大きく関係していた。
「シロはレオとどうなの?」
『見てればわかるでしょう?』
「ふふ、そうね。野暮だったわ」
シロと恋愛話をする日が来るとは思わなかった。そう笑い合いながら屋敷まであと少しという所で、シロの足が止まった。
「どうしたの?」
『誰かいる……!』
屋敷の庭先の少し手前。何本か太い木があるそこを、シロが気にした。薄暗いせいもありエティからは人がいるかは認識できなかった。だがシロの警戒の仕方が尋常でない事でエティは緊張し、顔を強張らせた。
『掴まって、一気に駆けるわよ』
「わ、わかったわ」
シロに促され、エティは強く手綱を握った。
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