知ってるけど言いたくない!

るー

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その41

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クリフォードはエティからのその質問で顔色を変え、手荒にエティの夜着の襟足部分から背中を覗き込んだ。いつもと変わらない白い背中に、クリフォードはホッと息を吐いてエティを抱き締めた。



あの女、ジェシカが去った後、エティを抱き上げ足を進めたクリフォードはその場の異変にすぐに気づいた。

薄暗くて最初はわからなかったが、地面に血が落ちていた。少しではなく大量に広がっていたそれに気づき、クリフォードは青ざめた。しかしエティにもシロにも、そしてジェシカにも怪我をした様子はなかった。ではあの血は何だ?

それともう一つ。道沿いにある太い木に括られた紐が足元の砂利道に落ちていた。反対側にも同じ物があった。その状況でクリフォードは推測した。括ってあった紐にシロが引っかかりエティは落馬した。そこを後ろからあの女にナイフで襲われたのではないかと。


「エティの着ていた服にナイフで切られたような跡があった。怪我はしなかったんだな?」

「ああ……うん。もうないよ」


もうない?変な言い方をするな、とクリフォードは首を捻った。大人しく腕に収まるエティは「服か……うっかりしてた」とブツブツ言っている。


「どうして襲われた事を言わなかった?それに最後はあの女と何を話したんだ?」


先ほどまでの柔らかい口調から一変、責め立てるような質問にエティは顔をムッとさせてソッポを向いた。


「エティ?」

「さっきからジェシカさんのことばっかり気にして!」

「なんだ。拗ねたのか?じゃあ可愛がってやる」

こんなにわかりやすく嫉妬を見せるとは、何と可愛い事か。普段もこういう面を見せてくれると嬉しいのに。

クリフォードはエティに着せていた上着を剥ぎ取ると夜着姿のエティを白いシーツへ沈めた。何が起こったかわからないような、キョトンとした顔でエティはクリフォードをジッと見つめた。クリフォードはエティに覆い被さるとほんのり色づいた胸元に唇をあてた。


「この服はどうした?いつもこんな格好で寝ているのか?」

「アネットの服よ。私はヒラヒラしたのは動きにくいから好きじゃないもん。ふふっ、くすぐったい」


クリフォードはエティの衣類を全て脱がし、自分も肌を出すとエティに密着させた。エティは酒のせいで体温がいつもより高かった。
いつものように小ぶりながらもぷっくりしたエティの唇を味わった後、クリフォードはエティの首回りから鎖骨辺りに強く吸い付いて印をつけ始めた。エティはそれに気づくと「私もやりたい!」とクリフォードに襲いかかった。しばらく二人でじゃれあったがエティは全く酔いが醒める気配がなかった。
クリフォードはもう一度だけ試す事にした。

エティを組み敷くとクリフォードはエティの柔らかい胸元に噛み付くように歯を立てた。


「フォード、痛い」

「もっと痛い事されたくなかったら隠している事を話せ」


もちろん痛めつけるつもりはない。クリフォードはただ軽く脅しをかけただけだった。


「……隠してる事って、どれ?」


どれって何だ?迷うほど俺に隠し事があるのか?


クリフォードは嘘だろ、と焦った余裕のない表情で顔を上げた。
同じ屋敷にいたものの、エティと知り合ったのは最近だが、一緒に旅をした事でクリフォードは全部とまでいわないが、エティの事を理解した気になっていた。とりあえず今はあの女との事を聞き出したいと、クリフォードは心を落ち着かせた。


「あの女の事だ」

「ああ……紫銀の女の…こと?」

エティは眠くなってきたのか瞼を閉じて舌足らずな口調になってきた。
何故急に紫銀の女が出てきたんだ?とクリフォードは不思議に思いながらも続けた。


「もしかして紫銀の女について、何か知っているのか?」

「…知ってるよ全部。でも教えない」

「知ってる……?!どういう事だ!」

「……言いたく…ない」



クリフォードは思わず声を荒げてしまったが、エティはその言葉を囁くように言った後眠ってしまった。
クリフォードは気持ち良さそうに寝息を立てるエティの横に座って暫くその寝顔を呆然と眺めた。


紫銀の女の事を全部知ってるとエティは言った。だが最初は紫銀の女を見て怖がっていたし、何も知らない様子だった。あれが演技だとは到底思えない。エティが紫銀の女と似ているのも何か関係があるのか?
疑問を出していくと色々引っかかって余計に頭が混乱する。エティを知るためには、どこから、何から考えればいいんだ。

エティは核心部分に関しては口が硬い。
酒の力で聞き出せないのなら、真っ向から訊ねても教えてはくれないだろう。



***



「まだ時間が早いからもう少し寝ていろ。レオ達は俺が出る前に世話しておく」


ベッドにいるエティに、クリフォードは王宮に出るため服を身につけながら話しかけてきた。お酒でやらかした羞恥を拭えないまま、エティは上掛けのシーツを肩から纏うとクリフォードの側まで歩み寄った。

クリフォードは全部を言わなかったが、自分はきっと色々やらかしたに違いない。恥ずかしさもあるが、彼に呆れられてないか不安も大きかった。


「どうした?俺が世話するの不満か?」

「そうじゃないけど……」

「前にエティが寝込んだ時は俺がレオとラズを世話した。その時よりもシロが増えたが、一人でもできる」

「え、そうなの?てっきり別の人たと……」

ハンクさんはやるべき人にやらせていますと言っていたけどフォードの事だったのね。

いつもの調子で自分を抱き寄せキスをするクリフォードに、エティの不安は少し薄まった。エティはレオ達の朝の世話を自信満々に笑うクリフォードに任せる事にした。

身支度を済ませたクリフォードはキリッと騎士服を着こなし、これでもかというほど目を惹く姿になった。クリフォードは仕上げに肩にかかる金の髪を後頭部で纏めた。クリフォードの着ている騎士服は襟がそんなに高くない。ちょうど耳の下あたりの首筋に、エティがつけた情熱の証が隠れきれずに見え隠れしていた。


「フォード、首のところ……」

「気にするな。同僚達は俺に恋人がいるのを知っているから、今更騒いだりしない」

「そ、そう」


そこにあると本人が気づいてなければ魔力で消したのに……。


エティは残念に思いながらクリフォードを部屋から見送った。
その後、クリフォードの寝室で一人になったエティは昨日のことを思い出していた。


ジェシカのあの様子ならクリフォードに心残りはあったとしても、今後は手を出してはこないだろう。しかし、だからと言って呪いが消えるわけではなく、独りでに歩き出している二つの呪いを解かなければならない。

エティは大きく息を吸って前を見据えた。



答えは揃った。
あとは私の匙加減にかかっている……!!



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