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しおりを挟む自分がリードしているキスとはいえ、長い時間舌を絡めていると、キスに弱いこちらの思考がふやけてしまう。ほどほどにして唇を離すと、愁は複雑な瞳で凛斗を見上げた。いつもと違う流れでの行為にしっくりこないが、凛斗のために我慢している。そんな感じだ。
薄っすら盛り上がった筋肉を服の上から手のひらで撫でる。腹の辺りから胸元にかけてゆっくりと手を滑らせると愁の眉がピクリと動いた。自分の弱いところは全て知られているが、愁の弱いところは知らない。探究心にかられた凛斗は、愁の反応を注意深く見ながら手を進めていった。脇下から手を差し入れ服を捲り上げる。素肌が現れると凛斗は真っ先に左胸に唇を寄せた。そこは心臓の真上。軽く触れた唇に伝わってくる鼓動。
「ドキドキしてる?」
「好きな人に触れられてドキドキしないやつなんていないよ」
答える声からはいつもの愁の余裕は見られない。露わになった肌はいつもより熱を持ち、凛斗の座っている下には早くも欲望が大きく姿を変えている様子だ。ジリジリと攻めながら服を脱がせていきたいところだが、残念なことに愁の逞しい身体を扱えるほどの力はない。不本意だが衣類は全て本人に脱いでもらった。
「ほんっといい身体してるよな」
羨ましさを声にのせ、腹筋の凹凸を指先でなぞると愁はくすぐったそうに身をよじった。ちなみにベッドには移らずまだカーペットの上だ。自分も裸になった凛斗は、まな板の鯉みたいに大人しく横たわる愁の脇に座って身体全体を見渡している。
「凛斗ほんっと筋肉好きだよね。普段僕じゃない他の人の身体も見定めたりしてるの?」
「俺はおまえの均等の取れた身体が好きなの。筋肉だってこれ以上ムキムキになられても嫌だ」
愁と付き合うようになってからは無くなったが、以前は理想的な身体つきの人を見かければ自然と目で追っていた気はする。だがそれは羨ましいというだけで、触れたいと思うのは愁に対してだけだ。そう言うと愁は照れながらも満足そうに笑った。
会話しながらさり気なく肌の上を滑らせていた手を、脚の付け根辺りにもっていくと愁はクッと息を飲むようにして目を閉じた。手元に目線を移してみれば、曝け出された愁の欲望が、ピクピク震えていた。早く刺激が欲しくて待ちきれない。そう言われているようで、凛斗はそろりとそれに手を添えた。
愁が小さく息を漏らしたのを耳で確認し、手で包み込む。
( おっきい……。 俺いつもこんなの挿れられてんの? )
改めて見ると不思議で仕方ない。最初は痛かったし違和感たっぷりだったものが、今ではパズルのようにぴったりはまって馴染んでいる気がする。
男だからこそ相手の気持ちいい部分がわかる。凛斗は時々弱点をかすめながら手を上下に動かした。手の中で更に硬さを増した愁自身はいつ爆ぜてもおかしくないくらいで、追い込まれている愁本人も苦しそうに目を閉じ、握り込んだ拳を口元にあて、荒くなった息を隠すのに必死なようだ。
(このまま果てさせたら、ただのかきっこだな)
物足りなさを感じた凛斗は愁の足元に移動した。そして思い切って愁の逸物の先をペロリと舐めた。
「えっ? りっ、凛斗!?」
何してるんだと愁が慌てて起き上がったが、凛斗は構わずそのままパクっと咥え込んだ。
「うっ……! 凛斗!! 離して!!」
必死で逃げようとする愁の腰を捕まえて、上目遣いで「観念しろ」と訴える。凛斗が止める気がないとわかったのか、愁は逃げるのを諦めてその姿勢のまま静かに凛斗を見下ろした。
男のモノを咥えたのなんかもちろん初めてだが、相手が愁だからか嫌な気は一切なかった。口一杯に広がる先走りの味と愁の熱を感じながら、一旦口から出して今度は舌の表面で舐め上げる。
「……っ凛斗…っ」
今までになく愁の息が乱れて色気が増す。本能と理性の狭間で揺れているような、苦しそうに眉をひそめる愁がとてつもなく可愛く見えた。
「凛斗、もういいから……」
おそらく限界に近いのだろう。凛斗の肩を掴み引き離そうとしている。最近は凛斗の方が先に酔わされて、愁が感じているところをまともに見ていない気がする。
このままもっと乱れろ、と凛斗はより深く咥え込んだ。
「……凛斗っ!!」
どちらかといえば抗議に近い声を漏らしながら愁は達した。それでも絶頂を迎え熱を放出した後、僅かな間呆然としていたところを見ると、それなりに満足してもらえたかもしれないと嬉しくなった。食い入るように見つめていた凛斗と視線が合った愁は、ハッと我に返って慌て出した。
「なんて事を!! 早く吐き出して!!」
愁がすぐに凛斗の口をこじ開けて指を突っ込んだせいで、口の中に溜まっていた白濁はほとんど外に出された。どのみち決して美味いとは言えないそれをどうするか迷っていたので、凛斗は愁にされるがまま口の中を綺麗にした。
「そんな目くじら立てなくてもいいじゃん。良くなかったのかよ」
「そういう事じゃなくて……! こんな事凛斗にさせたくなかったから……!」
「こんな事って何だよ。 俺だって男なんだよ! 好きな奴に触りたいし色々したいんだよ!」
「い、色々って……?」
目を丸くしてゴクリと唾を飲む愁に、凛斗は据わった目をして強く言い放った。
「挿れさせろ」
まさかの言葉に愁は当然固まった。そして頭の中で適切だと思われる返事を懸命に弾き出していた。何故なら凛斗はどう見ても感情的になって話が通じそうになかったからだ。感情が高ぶって衝動的に言っただけなのか、今まで溜めていた不満の仕返しなのか、抱く側に興味が湧いて試したいだけなのか。返答次第では凛斗との関係が悪化してしまう。
忙しい思考とは逆に、愁は正解がわからず結構な時間ピタリと止まったままになっている。凛斗は愁の返事を待ちきれずにベッドからローションとゴムを持ってくると、迷いもなく愁の後ろにローションを塗りつけた。
動揺して戸惑っている間にカーペットに横にされていた愁はやっと恐る恐る口を開いた。
「……本当にするの?」
「ダメか?」
「や、ダメっていうか……」
凛斗は言い淀む愁の上に覆い被さると、真っ直ぐ瞳を見た。
「おまえの初めては俺が欲しい」
目を見開いてしばらく考えた後、わかったと返事をするように愁が黙って瞳を閉じた。静かに凛斗を受け入れようとする愁の姿に、急ぎ足だった気持ちにブレーキがかかる。突っ込むだけが目的じゃない。
凛斗は深呼吸して心を落ち着けると、改めて愁の脚の間に座り直した。そして手探りで入り口にローションを塗り込み、ゆっくりと指を一本差し込んでみる。たくさんローションを使ったためか、思っていたよりスムーズに飲み込まれていく。
「……は」
指が増えても愁は痛がらずに上手に息を逃している。緊張している様子もないが気持ちよさそうでもない。ただ身体の力を抜いて、凛斗がやりやすいようにしてくれているように見える。愁の様子が少し気にかかったが、徐々に形を変え勃ち上がっていく愁のモノを見て凛斗は先に進むことにした。
いつも自分が攻められて弱い部分。確かこの辺りだろうと探ったが指先はなかなかそのポイントを見つけられない。
「……凛斗、もうちょっと奥。指二本の方がやりやすいかも」
凛斗は愁に言われた通り指を増やしたが、二本まとめて入れる時の割り入る感じが、愁を傷つけているようで怖かった。恐々《こわごわ》やっているのが手から伝わったのか、凛斗が声をかける前に愁の方から「大丈夫、痛くないよ」と言われてしまった。
「うん、たぶんその辺り。お腹側の所触ってみて」
やってみて、と優しく誘導されて探り当てたそこに、他の部分とは違うしこりみたいなものがあった。指先でつつくようにすると愁は急に眉根を寄せ苦しそうな表情をした。
「い、痛かったのか?」
「違う……そこいいトコだから」
いいトコの割に随分辛そうに見える。凛斗はそこを刺激されるといつも甘ったるい声が出てしまう。全身の力が抜けてしまうような心地よさと、奥の方から痺れるような快楽に襲われてピクピク震える。
自分がされてる時とは大きく違う反応に戸惑ったが、痛みを与えたのではないとわかりホッと息をついた。その後指は三本まで増やして、愁から「もう挿れても大丈夫」とゴーサインが出たが、凛斗はとても挿れられる状態ではなかった。
「ごめん。やっぱり無理みたいだ」
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