シロツメクサの指輪

川崎葵

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あの日の約束

「おおきくなったら、ぼくとけっこんしてくれる?」


保育園が一緒だった男の子に、いつだったかのタイミングで告白をされた。
結婚の意味など理解してないぐらいの、小さい頃の話だ。

ただ一緒にいて楽しいその子と遊びたかった俺は、特に深く考えずに肯定をした。
結婚の意味を理解していなかったのは、きっと俺だけじゃなく、相手の男の子も一緒だったはずだ。

俺たちは男同士だし、恋愛感情などなかった。
ただ、一緒にいて楽しい友達と一緒にいたい。
それを表す言葉が、結婚だと思っていたのだろう。

だからその約束を俺は直ぐに忘れたし、ある出来事があるまで、俺は思い出すこともなかった。








「三城、終わりそうか?」

 

PCに向かう俺に、同僚の高橋が声をかけてきた。

 

「もうちょっとで終わるよ。そういうお前も終わるのか?」

「俺も後ちょっと。分かってるだろ?今日のあれに間に合わないなんてことは許されないからな。」

「分かってるって。だから頑張ってるだろ。お前も無駄口叩いてないで早くやれよ。」

「冷たい言い方だな。」

「俺は別に行きたくて行くわけじゃないからな。お前がしつこいから仕方なくだよ。」

「だって三城が来ると参加率いいから。今日の礼はまた別でするからさ。」

 

そう言いながら自分の席へと帰っていく高橋に、俺はひらひらと手を振って適当に返事を返す。

今日のあれとは、合コンのことである。

高橋が狙っている女の子がいる部署との合コンをセッティング出来たらしく、絶対にその話を流したくなかった高橋は、俺が参加することをエサに人を集めたらしい。

というのも、俺はこの会社の中では顔がいい方らしく、俺が行くというだけで女の子の食いつきが変わるらしい。

俺自身にその自覚はないが、どちらかといえば中世的な顔をしており、ミキという苗字のせいもあって昔から女の子に間違われやすかった俺は、一目置かれる様な存在ではあった。

だから学生時代には同級生の女の子には可愛いと言われ、メイクをされたり、セーラー服を着させられたりとオモチャのように扱われていた。

そんな経験もあって女の子が少し苦手な俺は、合コンのような席にはあまり参加をしないし、今まで彼女がいなかったわけではないが、現在は彼女を作る気すらない状態だ。

宝の持ち腐れだとよく言われるが、この顔をどう扱おうが俺の自由だ。余計なお世話である。

 

 

予定時間までには何とか仕事を切り上げ、俺は合コンの参加メンバーと共に会場である店へと向かった。

オシャレで少し高めのそのお店を見て、高橋の気合の入れ方を何となく察する。

高橋が狙っているという女の子がいるのは総務部だが、そこは可愛い子揃いで他の参加メンバーも乗り気である。

仕方なくついてきたというのはきっと俺だけだろう。

それでも相手に嫌な気をさせては他の奴等にも申し訳ないので、適当に話を合わせて場を白けさせないようには努めたし、事前にどいつが誰狙いかというのは聞いていたので、そいつに話を流して俺は橋渡しのようにしてその場をやり過ごした。

いい具合に酒も入れば、二次会へと行く流れになったので俺はそのタイミングで逃げようとしたが、高橋がそれを許すはずもなく、俺は渋々付き合うことになった。

今回の合コンはかなり順調に進んでいるようで、それぞれいい感じの雰囲気になりつつある。

俺もそれに付き合っていたが、カラオケで皆が盛り上がっている隙にトイレを装って逃げ出した。

見ている限りでは俺がいなくともうまく事は運ぶだろうし、誰狙いでもない俺からすればこれ以上付き合う理由もない。

元々酒に強いほうではない俺は、帰るのがしんどくなる前に解散したいし、タクシー代も勿体無いので終電がなくなる前には帰りたい。

 

そんな思いから妥当な代金を高橋の鞄に忍ばせ、カラオケ店から少し離れたところでメッセージを入れておいた。

遅くても会計をする頃には俺がいないことに気づき、携帯ぐらいは見てくれるだろう。

 

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