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成長編 西へ
砂楼窟と砂漠の民
しおりを挟むフーは西の外縁へ向かい、風のように疾走する
久しぶりの白虎形態で足取り軽く楽しそうだ
『フフ~ン♪』
鼻歌まで出ている
ルーンも流れる景色が楽しいのか
『きゃー♪きゃー♪』
と、はしゃいでいる
『楽しいか?』
『うん!きもちいー!おもしろーい!』
すると、突然ルーンが身体を強張らせてキョロキョロする
が、その気配にフーは早くから気付いていた
『ルーン、ちっと目ぇ瞑ってろ』
『あい』
ギュッと目を瞑る
200mほど前方樹上に魔猿が10頭ばかり飛びかかろうと狙っているが
フーは、疾る脚を緩めること無く ほんの2秒ぐらいで魔猿の眼前に到着し
『うぜーよ!』
腕の一振りで10頭の頭を刎ね飛ばし
その後ろに隠れていたリーダー格の頭を囓り取り一噛みし
『くっそマズッ!』
ペッと吐き出した
『っかしーなー?前はアレでも美味かったんだけどな?ルーンと暮らしてたら舌が肥えちまったんだろうな 焼いた肉は美味かったしなぁ』
と苦笑い
そんな独り言が聞こえたのか
『ふーにー もーいー?』
『ん?おぉ、もう目を開けていいぞ 怖くなかったか?』
『うん ふーにー ぎゅってしてたー』
フーのニヤニヤが止まらない…
『森の外に近くなったら、あんなバカ共も少なくなるから もう少しだ』
『あい』
それから数度、魔猿の襲撃?に逆襲し
出くわした猪の頭を刈り取りつつ
森と砂漠の境界に到着した
『うわー ひろーい♪あれは すな?』
『あぁ砂だ、ほら あそこを見てみな 森の端に穴が開いた砂山があるだろう?あれが俺の砂楼窟だ』
『わーおっきい すなのおやまー』
穴の前まで来ると分体が出迎えに出てきた
『お疲れ、どうだった?』
『変わった事は無かったぜ、ルーンも少し大きくなったなぁ』
『あぁ、もう2歳だからな これからも段々大きくなるな(フフフ…)』
『じゃあ戻るわ、ルーンの思い出を楽しもう』
『あぁ楽しんでくれ、じゃあな』
白虎が重なり一頭になった
『よっしゃ、中に入るか…いや、待てよ?先に食いモン獲りに行くか?』
太陽は中天に来ている
『ふーにー おなかすいたー』
『お、そうか、じゃあ砂漠の民の所にでも行って飯をたかるか。ルーンには料理したのを喰わせなきゃな』
と、砂漠の方から吹いてくる風の匂いを嗅ぎだした
『うん、こっちだな。ルーン、風を纏わせたまま俺の背中に跨がれ』
フーがしゃがみ込む
『あい!』
と、よじ登るが2歳には まだ少し高いようだ
フーが尻尾で支える
ルーンがシッカリ跨がったところで
『よーし、行くぞ!』
砂埃を巻き上げながら疾走しはじめた
10分ほど疾ると横長四角柱状の模様入りの黒っぽいテントが数十ある場所へたどり着く
この刻限に砂漠で外に出ている人は居ないが、見張りが向かってくる砂埃を見つけたのだろう
テントから頭にターバンを巻き湾曲剣を腰に下げた男達がワラワラと出てきて、砂埃を指差し何やら話しているが
集落まで50mぐらいまで来た白虎が歩きだし
男達も白虎だと気付いたようだ
「これはこれは白虎様、如何されましたか?また料理でも聞かれますか?」
集落の長らしい男が片膝付きながら問うてくる
その後ろにも数十人の男達が片膝付きで頭を垂れる
『ふーにー だれー?』
『ん?これは砂漠の遊牧民バドゥ達だよ、ベドウィンとも呼ばれているな。
『シャイフのハッサムよ久しぶりだな、今日は飯を馳走になろうと思ってな。俺に乗る子の分も喰わせてくれないか?』
「それはそれは、喜んで給仕をさせて頂きます。して、その御子は誰方でございましょう?我々と同じ様な物を御出ししても?」
『あぁ、この子も俺も其方達の普段の料理で構わない。将来この子は俺たち四獣を使役するんだよ』
「なぁっ!?そ、それは、将来の て、天帝様で…」
喉をゴクリと鳴らし青褪め周りの男達も息を呑む
『あぁ、遥か将来は俺達と共に昇天する、が、今はまだ2歳の御子だ ルーンと謂う』
「は、ははー」
頭を深く深く垂れるバドゥ達
「わ、我々のようなもの共の料理を御食べくださるとは感激致します。精一杯給仕させて頂きます!」
『まぁ そんなに畏まるな、普通に飯を喰わせてくれればいい。なぁルーン』
『あい おなかぺこぺこです おねがいしましゅ』
ピョコンと頭を下げる
「あぁ、勿体無い。直ちに準備致します。外は陽射しが厳しゅうございますので、少々あちらのテントの中でお待ち下さりませ」
感激してか涙目になっている
それから外ではバドゥ達が大騒ぎだ
「おい!砂に穴を掘って竈門を作れ」
「駱駝と山羊の乳を絞ってこい!」
「女達!ヨーグルトとチーズはあるか?あと、モロヘイヤを摘んできてくれ」
「そこの仔山羊を潰して半身は砂竈門で焼いてくれ!」
「そう!その横でパンも焼くんだ!山羊肉の残りは鍋で煮るぞ」
次々と料理が出来上がりだし
大きめな皿に盛られていき
美味そうな匂いが辺りを包む
その様子をテントの中から見ていたルーンは
『たのしそう…』
ボソッと呟く
側にきて控えていたハッサムが
「ははは、ルーン様、夕餉は御一緒に為されますか?」
『いいの?する!るーんもする!』
フンスと立ち上がる
『はっはっは、ルーンも興味を持ったか。だが、シャイフよ 晩飯まで世話になっていいのか?』
「構いませぬ 何ならば、ルーン様が此方にいらっしゃる間は毎食給仕させて頂きます!」
『それは すまんな、では俺も森から何か獲ってくる事で お前達を手伝おう』
「それは有り難し、駱駝も山羊も数に限りがありますので」
「おーい、出来上がった料理をテントに持ってこい」
「さ、さ、ルーン様、御召し上がりください。我等バドゥが、いつも食べているものです。御口に合えば宜しいのですが」
大小の皿がいくつか並び、そのどれにも数種類の料理が盛られている
「出来立てですので少しだけ熱いのもありますが、手掴みで御召し上がりください」
『あい』
と、肉片を素手で取り口に放り込む
『おいしい~♪ふーにー おいしいね~♪』
『あぁ美味いな』
いつの間にか人型になった白虎が、ルーンの隣で頬張っていた
その様子を少し離れた所からバドゥの子供達が羨ましそう指を咥えて見ている事に気付いたルーンが首を傾げ
『? ? いっしょにたべないのー?』
「宜しいので?下々の子なんぞと御一緒で」
『あぁ、構わんさ なぁルーン』
『あい!』
『飯は皆で喰ったが美味い。風当たりを柔らかくしておくからテントの片側半分巻き上げて子供達を皆入れろ』
ハッサムが子供達を呼ぶと、みんな駆け足で来て
「「「こんにちわ!白虎様もこんにちわ!」」」
『おう、こんにちは ほらルーンも』
『こんにちわ』
「わあ、美味しそう♪」
「こんなのお祝いじゃないと食べれないよ♪」
「君はだ~れ?」
『(ムグムグ)るーんだよ』
「ルーンって言うの?」
「ルーンは男の子?女の子?」
『(ングング)んー わかんない』
「ごはんを食べたら遊ぼうよ?」
『(ゴックン)るーんとあそんでくれるの?』
「うん、遊ぼう!」
『うん!』
キャッキャと話しながら料理を頬張っていく
子供達はお腹一杯食べると外へ駆け出そうするがハッサムが止める
「ルーン様お待ちください、砂漠は陽射しがキツうございますので」
と言いながら大きめのスカーフでルーンの頭にターバンを巻き端を垂らして剥き出しの腕を覆う
「これで大丈夫です、喉が渇いたら直ぐに水を飲んでくださいませ」
『ありがとー』
駆け出して行った
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ルーンが~砂漠の民とぉ~出会った~byウルルン
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