黄龍漫遊記

コロ

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漫遊編

蓬莱の國 壱

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ここは東の最果てにある大きな島

島の中央には蓬莱山ほうらいさんそびえ立ち
力を持つ豪族は蓬莱山のある地域を我が掌中にしようと戦を繰り広げ
力無き人々は安寧を求め戦乱の中で不自由に暮らしている戦乱の島

ある時、蓬莱山の麓で大戦おおいくさが始まろうとしていた
蓬莱山の裾野に広がる広大な草原に、二万人ほどの甲冑兵が東西に対峙している




そんな兵士の中にブツブツと愚痴をこぼしている者達がいた

「ま~た戦だよ、なんだってこんな頻繁に戦しなきゃなんねぇんだ?」
「そりゃあ領主様が蓬莱山に入りたいからだろうよ」
「じゃあ勝手に入りゃいいんだよ」
「そりゃ無理な話しだ、兵と一緒に入らねぇと無駄になっちまう。蓬莱山は数人で入るにゃ危な過ぎる」
「蓬莱山が危ないのは知ってるけどさぁ、何でそこまでして入らなきゃならねぇんだよ」
「魔物とか魔獣がワンサカ出るんだろ?」
「そりゃアレだろ、お宝目当てだろうさ」
周りで聞き耳立てていた兵達も、うんうんと頷いている
「そんな大したお宝があんのか?」
「あぁ、噂で聞いたんだけどよ えぇっと確か…」
「【不老不死の仙薬の材料になる三種の草】
【養老の泉の神水】
玉乃枝たまのえって財宝が成る木】
が有るらしいぞ?」
「あぁ、そりゃあ欲しくなるだろうな?あの業突ごうつく張りな殿様ならな…」
「あぁ、んで、向こうさんもおんなじお宝が欲しいからこのザマだ」
「勘弁して欲しいよな?田んぼ放ったらかしだぜ」
「だなぁ、どうせ小競り合いで終わるんだろうけど それでも人死ひとしにや怪我人は毎回たくさんでるからな」
「怪我だきゃしたくねぇなぁ…家族が路頭に迷っちまうぜ」
「あぁ、だよな、お偉いさん以外はみんな同じだ」

雑兵が愚痴をこぼしている、その最前列の方では
立派な鎧兜の武士が名乗りを上げて口合戦を始めていた
そして双方が陣形を整え始める

30分程度の口合戦も終わり、陣形も整い
緊張感が高まり
槍を持った最前列が突撃しようと構え
双方の大将が号令をかけようとしていた


軍団の臨界点が最高潮に高まった時
蓬莱山からスタスタと若者が姿を見せる
小麦色の外套マントを羽織り、少し大きな頭陀袋ずだぶくろかたげた旅人の様だ

突然 山から下りてきた若者に、双方の軍が呆気にとられるも
双方の軍の一部隊を率いる武将達は、いち早く立ち直り

東側の軍団からは
「己れは何者だー!どうやって蓬莱山に入ったー!」
西側の軍団からは
「何故お前は蓬莱山から下りてきたー!」

双方から怒鳴られた若者はキョトンとした顔をして首を傾げる

「まさか、その担いだ袋に蓬莱山の宝が入っているのではなかろうなー!」

『宝?』
何の事?みたいな顔をする

「独りで蓬莱山に入ったのではなかろうなー!」

『独り?』
自分の後ろを振り返り首を傾げる

「そこな者ー!蓬莱山の宝を盗み取ったのかー!ただでは置かんぞー!」

『盗む?』
顔をしかめる

緊張感を取り戻した双方の軍団が、若者に向きを変え睨み付け武器を構える


『なんと無礼な奴輩やつばらじゃ』
朱色の外套を羽織った、緋色の髪をした女が現れた

『ほっほっほ、人とは畏れを知らぬのぉ』
漆黒の外套を羽織った、白髪白髭の老人が現れた

『愚か者どもめ』
濃紺の外套を羽織り、頭の後ろで金髪を結った男が現れた

『まぁ、何処に行っても人間なんざぁこんなもんだろ』
白の外套を羽織った、銀髪の青年が現れた


若者の背後に忽然と現れた四人の男女に兵達がどよめき
人にらざる気配に動揺を隠せない

さっきまで愚痴をこぼしていた雑兵達が
「おい、ありゃなんだ?」
「なんだろうなぁ…」
「でも、ヤバイ気配がビンビン来るぞ?」
「ばっか!それでもこっちに何人居ると思ってんだ」
「でもよぉ、何だかわかんねーけど逃げた方が良い気がする…」
「あぁ俺も…」
「お前ら、逃げても村に帰るまでに見つかったら殺されるぞ?」
「だよなぁ~どうすんべ」

と、話していると若者達の方から
心臓を鷲掴みにされる様な気配が飛んで来た

「…っ、ヤベー!ヤベー!こりゃ死ぬぞ!」
「あぁヤベーな、ここに居た方が殺される!」
「逃げるぞ!」
「おお!」
それぞれの軍の後方から数百人が逃げ出す

『みんな、向かって来る人と逃げない人だけにしてね?僕達の殺気で逃げる人達は見込みがあるから』

『『『『わかった』』』』


片方の武将が叫ぶ
「お前らー、取り敢えず休戦じゃー!手を組んで此奴らを捕まえるぞー」

「おおー!承知したー!」

「では行くぞー!」

「うおー!!!!」
若者達に兵が殺到する

と、異変が起こる

東側の兵達の間に火柱が吹き上がり
千人程が消し炭になる

西側の突進してくる兵達の足元が割れ呑み込まれ擦り潰される

東側の突進してくる兵達の胴体が突然二つに別れる

西側の兵達の上から水の槍が落ちて来て鎧兜関係なく貫く

中央の両軍混在した場所には雷が降り注ぎ息をする生き物は居なくなる

5分も経つと生き残った兵は千人程になっていた
武将達が青褪め、震えながら大将を見ると
大将が震える声で
「た、退却だ!退却する!何だ!あの化け物共は!」
蜘蛛の子を散らす様に逃げ去る
「ほ、蓬莱山から化け物が下りてきた…」



それを見ていた若者が、やれやれといった風情で
『で、結局 彼等は何だったんだろうね?』

『『『さぁ?』』』


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