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漫遊編
蓬莱の國 弍
しおりを挟む先に逃げ出した雑兵達は近場の林に逃げ込んで
事の成り行きを見ていた
その雑兵達が見た光景は余りにも凄まじく、余りにも恐ろしく
誰彼かまわず全身を震わせ涙を流し
数多くの者が、腰を抜かしてへたり込んでいる
「あ、あ、あれはダメだ」
「あ、あぁ、ヤバ過ぎる…」
「陣から逃げてて良かった…」
「おい、お前ら急いで村に逃げるぞ」
「あぁ、村長に知らせなきゃなんねぇ」
「見張りを立てなきゃなんねぇしな」
「バカ!下手な事すりゃ村が無くなるぞ」
「もしウチの村まで来たらどうすんべか…」
「そんときゃ人身御供と貢物をありったけ出すしかねーだろ!」
「村の衆は、こげな話し信じてくれるんかのぉ」
「信じるも信じないもねーべ!信じさせなきゃ全滅じゃ」
「よし!村まで走るぞ!」
「おい、腰抜かしてる暇は無ぇぞ!」
雑兵達はそれぞれの村へ駆け出した
生き残った武将達は這々の態で豪族の館に逃げ帰り
館の広間へ三々五々集まり殿様に報告する
「なんと!?兵の九割方死んでしもうたのか!」
「はっ!蓬莱山から下りて来た五人が道術や陰陽術の様なものを行い散々に討ち破られました!」
「うむむむむ…その者達は何者じゃ!」
「一向に判りませぬ。ただ、倭氏の兵も九割方討たれたので この辺りの者ではないかと思われます」
「うーーーむ、我が出雲氏だけでなく倭氏までも…」
「殿様、各地の豪族に声をかけて討伐されますか?」
「……いや…兵の数が減った我等が下になり、いい様に使われ領地が掠め盗られるかもしれん…特に熊襲氏が危ない」
「では、如何されますか?」
「その者共は何処に向かっておる?他の氏族の領か我等が領かで対応を思案せねばならぬ」
「その…言い難いのですが、逃げるのに必死で…」
「ふむ、行方は判らぬ…か…如何ともし難いのぉ…」
「は、申し訳ございません」
「よい、しかし数千の兵と武具が失われたのが痛いのぉ」
「は、逃げざまに見た限りでは無事な武具もありませんでした。全ての武具が焼け、溶け、大穴が穿ち、使える物は無かったかと…」
「ふーむ…その者達は人か?」
「それすら判りかねます」
「こちら側に付かせる事は出来ぬかのお」
「さて、どうでしょうか?我等が事なぞどうでもいい風でしたが…」
「何か餌はないかの?連れてきさえすれば如何様とも出来るのではないか?どうにも出来ねば封印しても良いしな。」
底意地悪い笑みを浮かべる
若者達一行は、のんびりと歩いていた
『さっきの、蓬莱山の宝を盗んだってどう言う意味だったのかな?』
『うむ、確かに意味が分からんな?』
『蓬莱山に宝なんかあったか?』
『はて?』
『妾達が見たら雑草や道傍の小石の様な物でも、人から見たら宝なのかもしれぬえ?』
『『『『あー、あるある』』』』
『取り敢えずは付近の村でも探そうか?』
『うむ、この辺りの人界の事情も判らぬしな』
『そうじゃのう、蓬莱山の害に為るようであれば捨て置けんからのお…』
『害に為ろうが為るまいが、バーっと滅しちまえばいーんじゃねーか?』
『己れは…悲の性質のくせに、楽の性質の妾より楽観的なのは何なのじゃ?』
呆れた様に緋の女が突っ込む
『あっはっはっは、フー兄らしいよね?ツァ爺もロン兄もそう思うでしょ?』
『そうじゃのう、これまでの儂等 四神獣での付き合いの結果じゃろうの』
『ああ、そうだな。今更気にする程の事でも無かろう?ポェニクス?』
『はぁ…まぁそうなんだけどねぇ…』
『ポェ姐ってさ、だいぶ前に鳳凰になってから心配性になったよね?』
『ルーンや、それを言わないでおくれ…近くに手のかかる白虎が居れば、こうもなるしかないのえ…』
『ネコ言うな!お節介鳳凰!』
『キーーーー!そこへ直れバカ白虎ーー!』
『あらら、相変わらずだなぁ(ふふふ…)また昔みたいに雷落とすよ?』
『『ファッ!?』』
和気藹々と一行の道中は進む
一行が一刻(2時間)ほど歩くと、目の前に田畑が広がり、その奥に逆茂木に囲まれた20軒ぐらいの集落が見えてきた
集落の外れにある高床式なのは倉庫だろうか
人の住居は竪穴を掘り屋根を被せてある
『お、なんか村が見えてきたな』
『ふむ、そこそこの規模だな』
『商家などは無さそうだねぇ』
『商家は…無いか…ちょっと立ち寄って大きな街の場所でも聞こうか?』
『そうじゃの』
『あぁ、それが良いな』
『じゃあ皆んな、神気は抑えてね!じゃないと村人が話しも出来ないからね』
『『『『承知した』』』』
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