黄龍漫遊記

コロ

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漫遊編

蓬莱の國 参

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一人の雑兵が息もえに駆けていた
自分が生まれ育った村へ
一刻も早くと気がき、足がもつれるも決して転ばない
男には転んでいる暇さえないのだ
人外の様な〔モノ〕が蓬莱山から下りてきた
あれは、悪鬼羅刹のたぐいの〔ナニカ〕だ
一刻も早く村にしらせて防備するなり逃げ出すなりしなければならない
頭の隅では、ウチの村に来ないでくれと願いながらも足は止めない

村へ駆け込み切れかかる息を無理矢理抑えて大声で村長を呼ぶ
「なんじゃ騒々しい!戦に負けたのか?」
「ハァッハァッハァッ…それどころじゃ無ぇよ村長!」
「何があったんだ?と…誰か水持ってきてくれ」
「ゴクッゴクッ…はぁ…村長、ヤバイことになった」
「何がだ?」
「蓬莱山から化け物が下りてきた」
「なんじゃと!?」
「敵味方問わず数千人が化け物に喰われた…」
「なっ!?そんなに沢山の魔物が?いや、そんなにデカイのか?」
「い、いや、五人だ」
「五人?…それは人なのか?訳が判らぬ」
「人?だ、見た目は…だが、五人で数千もの人を焼き、斬り刻み、槍で刺し、生埋めにし、雷を落として殺し尽くした…」
「そんなことを人に出来る訳が無かろう?負け戦さでまぼろしでも見たんじゃないのか?」
村人達が
「ハッハッハッ、恐ろしくて戦さ場から逃げ出して夢でも見たか?」
「なんだい?そのへっぴり腰は、みっともないねぇ」
口々に冷やかす
「そんなんじゃ無ぇんだよ、信じてくれ!蓬莱山に一番近い この村がヤバイんだよ!生き残った他の村のヤツらも皆んな駆けて帰ったんだよ!」
「そうは言うても荒唐無稽過ぎて、どうにも眉唾だのう」
「信じてくれんでも良いから、見張り立てて逃げ出す用意をしてくれ!頼むからよぅ…」
「分かった分かった、逃げ出す訳にはいかんが見張りぐらいは立ててやるわい」


一刻半ほど過ぎた頃
櫓で欠伸を噛み殺していた見張りが、村に向かってくる五人を見付け
吊り下げられた板切れを打ち鳴らす
「おおーい、こっちに五人組みが歩いてきてるぞー!」
「どんな風体ふうていか見えるかー?」
「ただの旅人にしか見えんなー!」
「分かったー!」

「ふうむ、五人って数は合ってるが…旅人?」
「来た!来たよ、おい、村長どうすんだよ!」
「ええーい、鬱陶しい!落ち着け!先ずは会うてからじゃ!」
「お、俺は向こうに隠れるからな!」
脱兎の如く駆けていく
「ふぅ…やれやれ、あの臆病さが玉にきずじゃのう…さて…」


『見張り櫓に誰か居るね、村の入口付近にも何人か居るみたいだ』

『ああ、数人居るな?』
『ちょっと良い着物を着てるのは村長むらおさかえ?』
『村長が出てきてんのなら話しは早そうだな』
『フーは先走るでないぞい』
『ツァブおうまで、そんなこと言うかね…』
『日頃の行いだな』

『『『あっはっはっはっは…』』』



『旅の者ですが、村に入れてもらえますか?』
「ここは小さな村、変な仕儀になっては困るから武具等は預からせて貰うがそれでも良いかな?」

『勿論!と言いたい所ですがご覧の通り丸腰です』
と、ルーンと四神獣は外套をパッと捲り上げる

「旅人なのに杖の類いも持っておらぬとは…まぁこちらも聴きたい事があるので村長である儂の家まできなされ」

ニコニコ顔でルーンが
『ありがとう、お邪魔しますね』

少し大きな村長の家に向かう

竪穴式住居たてあなしきじゅうきょの床にはむしろが綺麗に敷いてあり
中央に大きな円形座卓があり、村の女が用意した白湯さゆが人数分置かれていた
窓がなく暗い屋内の灯りは、彼等の言う所の道術でともしてありほのかに明るい

『はぁー、美味い白湯ですね?この辺りは水が良いようだ』

「この村の井戸は蓬莱山から下ってきた水が出るみたいだからの、他の村よりは水は良いみたいだよ」

『ああ、確かに蓬莱山の神水が混じっておるな』
『ロン兄、本当に?そりゃ凄いや、道理で村人達が道術を使えるはずだよね』
『そうじゃの、ここの村人には極々微小じゃが神気が纏っておるな』

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
『ん?どうしましたか?』
「いや、どうもこうも、あんた達は何でそんな事が分かるんだい?」
『いや、そんな事言われてもなぁ』
『蓬莱山から下りてきたから、としか言えないわえ』

「なあっ!?どうやって、あんな危ない山に入ったんだい?お宝目当てかい?よくもまぁ無事で下りてきたもんだ…」
『危ない?って何の事ですか?』
全員が首を傾げる
「いやいや、魔物や魔獣が彷徨うろついていただろう?襲われなかったのかね?」

『襲われる…事は無かったですねぇ、歓迎はされましたが』
ルーンが苦笑する
『あぁ飲めや歌えやドンチャン騒ぎだったな』
フーがカカカと笑う
『ホンにのぉ、久方振りに楽しい宴であったわ』
ポェニクスが思い出して目を細める

村長は呆気にとられポカーンとしている

ハッと気を取り直した村長が
「あ、あの、貴方がたは何者で?」

『ああ、我々は四神じ…』
ロンがルーンに口を塞がれる
『我々は旅人ですよ、ただ蓬莱山の住人に呼ばれて頼み事をされたんですよ』

「頼まれ事って…魔物に?」
『ええ、そうですね。蓬莱山で採れる物を人里に卸して、人と交流をしたいみたいです』
「ま、魔物と交流!?」
村長が素っ頓狂な声を出し
外で聞いてた村人達が
「冗談だろう?」
「私らを食おうってんじゃないのかい?」
「話しなんて出来るのかい?」
「なんて恐ろしい…」
口々に悲鳴の様な声をだす

『まあまあ、魔物と言っても見た目が人と少し違って道術が強いだけだから……って、あれ?』

村長の顔がヒクヒクと引き攣っている

『ルーンよ、それでは駄目じゃろうて…』

『あれ?』


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