黄龍漫遊記

コロ

文字の大きさ
4 / 39
漫遊編

蓬莱の國 肆

しおりを挟む

「お、お主らも魔物なのか?」
青褪めた村長が小刻みに震えながら問うと

『『『『無礼な』』』』
ブワッと、四神獣それぞれから黒・青・赤・白の神気が噴き出す

「「「「ひ、ひいっ…」」」」
村長むらおさと外で聞いていた全ての者が声にならない悲鳴を上げ
付近の犬・猫・鳥等の小動物は逃げ出しいなくなった

と、ルーンが後ろの四神獣を一瞥いちべつ
『抑えてって言ったよね?』
と冷たい声を出す

一気に四神獣の神気が霧散し
『『『『す、すまない…』』』』
冷や汗を搔き俯向うつむ

ガラリと声音を変えたルーンが優しく
『まあまあ村長さん、そんなに怯えなくても大丈夫。僕達は魔物じゃないし、この村に何かをしようと思ってませんよ』

まだ青褪めている村長が震える声で
「い、いや、いきなり魔物かと言われればいかるのも当然です、すまんことで…」

『いやいや道理の判る村長さんで良かった、突然見知らぬ者が来たのだから疑うのも当然ですよ』
『ねぇ皆んな?』
と後ろを振り向く
気を取り直した四神獣は笑顔で頷く
『我等の器が小さく、相済あいすまぬことであった』
「いえいえ、とんでもございません」
『いやいや』
「いえいえ」
と謝罪合戦が始まる

『まぁまぁその辺で…』
ルーンが笑顔で止める
『それで蓬莱山の魔物…鬼と言うんですが、元々は異形の〔人〕なんですよ』
「なんと?我々と同じ〔人〕でありますか?しかし、むかし蓬莱山の麓に下りてきているのを遠目で見た事があったのですが…」
思い出す様な目をして
「魔獣の毛皮を着て、青や赤や黄の肌の色、頭や額から角が出ていた覚えがありますが…」

『そうですね、今も変わらない姿格好をしています。鬼は昔は隠人おにと言ったそうです。余りにも人より強い力を持った者達が人里から追われて只人ただびとが入れない蓬莱山に移り住んだ末裔ですね』
一拍置いて
『あの姿格好は人には強過ぎる力が収まらずに表に出ているだけですので、心は人と変わらないんですよ』
「はぁ~なるほど、では我々の言葉も話せるのですか?」
『もちろん!言い回しとか少し違うでしょうが問題無いはずですよ。昔、人から追われたので蓬莱山から下りないだけで人里を襲うとかもありません』
「はぁ、はぁ」
村長は人形の様に頷くばかり
『ただ彼ら鬼は人が使う銭が欲しいんですね。その銭で人が使っている物をあがなってみたいと頼まれ、蓬莱山の産物を持ってきました』
「はぁ~なるほど、理解しました。しかしこの村には商いをする者が居ないのですよ。定期的に仕入れ商隊が来て農産物を売り銭は稼ぐのですが…我々は商人の様な事も出来ませんから、もう少し大きな街へ行くのが宜しいのでは?」
『そう、そこなんです。この村に商場あきないばがあれば良かったんですが、それは無い。かと言って異形の彼らが街へ行くのは論外』
「そうですな…その者等が街へ行くと大騒ぎになり捕らえるか討伐しようとするでしょう」
『そう、そうなると彼らも強過ぎる力を使って収拾がつかなくなる。そうならない様に先ずはこの村が橋渡し役をしてくれればな、と思います』
「う~ん、仰言おっしゃる事は判ります。しかし、我々の様な生業なりわいの者には公正な取り引きをしているかを判別する目が無いのですよ」
『そうでしょうね、人には向き不向きがありますからね。それは僕達が街へ行き、良い商人を見定めてきます。そして村からも一人付いてきて欲しいんですが、どうでしょう?』
「なるほど、そういう事ならば我々には異存ありません。村から出す者はどういった者が宜しいでしょうか?」
『そうですね、村の役立たず…ってのは言い過ぎですね すみません…』
ルーンがペコリと頭を下げると
「いやいや、言いたい事は判ります」
ようやく村長が笑顔になる

そのさまを見ていた四神獣は
頭をフリフリ、ルーンの話し方に感心し疑問を持つ
『おいおい、ルーンはいつの間にあんな軽妙な話し方を覚えたんだ?』
『はて?儂等が殆ど一緒に居たが気付かんかったのう』
『相変わらず、いつの間にか何でも出来る不思議な御子よなあ』
『うむ、昔から全ての生き物に好かれるのが関係しておるのかもしれぬな』

『『『『あ~なるほどね』』』』


「一人、お手伝い出来うるだろう者が居ます。生来せいらいの臆病者ですが足だけは速い者で、荘の領主から戦に人寄せを命じられると必ずその者を出し 必ず生きて戻るのです 名は古志加こじかと言います」
『うん、そういう人が良いですね。名前も良い。逃げ足が速いのは素晴らしい才能ですよ、危険をいち早く察する事が出来る稀人まれびとですよ。さては先程の戦さ場からも逃げ出しましたね?』
ニコニコしながらルーンが褒める
「はい、左様です。先程命からがら逃げてきて村の外れで震えております」
村長もニコニコしながら言う
『じゃあ、目通し願えますか?』
「かしこまりました」


「おいおい、誰か古志加の首根っこ捕まえて連れてきておくれ!」

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

え~、古志加こじかくん登場しました
創作した名前じゃありません
古代の和名として実際にあった名前らしいです
由来は本当に仔鹿です

鬼→隠人は創作しました

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

処理中です...