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漫遊編
蓬莱の國 伍
しおりを挟む「やべぇ、やべぇよ、何だよ、さっき一瞬出た恐ろしい気配は…村から逃げるか…いやいや、俺が逃げたら家族が…でもでも、やべぇ…逃げてぇよ…恐いぃぃぃぃ…」
村の外れで震えていた古志加の所に村の衆がやってきた
「おい古志加、村長が呼んでるから一寸来い」
「はぁ!?何でだよ!村長ん所にゃあの化け物達が居るんだろ!?ヤダよ!行かねぇよ!行きたくねーよ!喰われっちまうよ!」
「バカこの野郎、滅多な事言ってんじゃない!あの人達は化け物じゃないぞ?そりゃあさっきは少し恐ろしかったが、今は村長と笑いながら話してなさる」
「やっぱお前らも恐かったんじゃねーか!信じられるか!俺ぁ戦さ場でたった五人に数千人が殺られたのを見てきたんだ!俺ぁ行かねー!」
「チッ!しょうがねぇなぁ、おい!担ぎ上げて連れてくぞ!」
両手両足をそれぞれ抱えられて運ばれる
「イヤだーー!ヤメテーー…」
その遣り取りは、しっかりルーン達には聴こえていて苦笑しきりだった
が、しょうがないとも思っていた
これまで数十年間 人界を旅して人間を見てきた経験が、人間とはこういうものだと教えてくれる
ルーン達の前に連れて来られた古志加は、小さくなって震えている
両脇から村の衆に押さえられてなければ今にも逃げ出しそうだ
『古志加さん、そんなに恐がらなくても大丈夫ですよ?この村に何かをしようと思ってませんから』
「いぃぃぃぃいや、お、俺は見た、あんたらが山から下りてきてバーっと兵を殺すのを…」
『お、いち早く逃げても見てたんですね?ただ逃げるだけじゃないのも良いですね』
古志加は訳が分からず首を傾げる
『いえね、あの場からいち早く逃げた人達は生き残る力があるんですよ。だから逃げ出した人達に何かをしようとは思いません』
「は、はぁ…?じゃあ俺は喰われねぇで済む?」
『あっはっはっはっは、もちろん僕は人は食いませんよ。まぁそんなに美味しいものでも無いでしょうからね』
「ふぅ……でも、(あんたは)なんですね…じゃあ、俺は何で連れてこられたんですかい?」
(ふーん、言葉を良く聞いて考える力もあるんだな)
『ああ、簡単な事を頼みたいんですよ。先ずは商いの盛んな街に僕達を連れて行って欲しい事。次に、その街で良い商人を見付けたら、その商人と蓬莱山の繋ぎになって下さい。どうです?』
「はぁ、俺に出来る事なら…けど、俺は村の仕事も満足に出来ないし戦に行っても逃げるぐらいしか出来ねぇんですが…何よりも道術も使えねぇし力も弱い…」
古志加がショボンと俯く
『大丈夫、それで良いんですよ。何は無くても生き残れるのが大事なんです』
それまで黙って聞いていたツァブが
『ふむ、それも立派な道術じゃの。ふぉっほっほっほ』
ロンは
『うむ、危機察知は立派な道術だな』
ポェニクスは
『そんなに自分を卑下するものじゃないえ?』
フーは
『おお、そうだぞ?足が速いのは万能なんだ自信持てよ!』
それぞれに古志加を慰める
「は、はい、ありがとうございやす。それで、どこの街まで案内すれば宜しいんで?」
『はっはっは、その街が分からないんです』
「はぁ左様ですか…えっと、この村は二つの国府の真ん中にありますが…」
『ほう、それはどちらにも行きたいですね。先ずはどちらに…いや、この村はどちらの領地ですか?』
村長が
「ああ、一応この村は西の出雲氏に属しますがあまり気にする必要はありません。出雲氏の国府からは遠いので東の倭氏とも悪くはない付き合いをしております」
『ふむ、では蓬莱山を強く欲しがっているのはどちらですか?』
「それは出雲氏でしょうか、倭氏は蓬莱山の宝を独り占めされると困るので兵を出しているのですよ」
『なるほどね、では先ずは倭氏の国府に行って蓬莱山の産物を見せて反応を見た方が良いのかな?少しは穏やかに話せるかもしれない。ところで蓬莱山の宝って何ですか?』
「宝ですか?御存知ない?え~っと」
古志加が引き継ぐ
「戦さ場で他の村の衆に聞いたんですが【不老不死の仙薬の材料になる三種の草】【養老の泉の神水】【玉乃枝って財宝が成る木】って言ってました」
『へえ、なるほどね。それが宝だったのですね?それならば水以外は持ってきてますよ』
ほら、と傍に置いておいた頭陀袋の口を開けて中を見せる
『え~っと、多分これが玉乃枝…』
と、金の枝に真珠が鈴なりに下がる物を取り出す
『それと、これが栄菜と老菜と身草で千代三草と言う草ですね。そして、この草が採れるので昔の人は蓬莱の山と言ったんですよ』
「「「「なんと!?」」」」
村長、古志加、外の村の衆が目を見張る
『まぁ、とは言え千代三草に不老不死の様な力はありませんけどね?この三草を煎じて飲めば、身体に溜まった毒を出して頑健にし厄を払い寿命が数十年延びるぐらいです』
はっはっは、と笑いながらルーンが説明する
『でも、玉乃枝は僕達には目新しくも無いけど人には宝なのかな?』
「いやいやいやいや、充分過ぎる宝物ですよ!?玉乃枝は言うまでもなく、千代三草ですか…数十年も寿命が延びるなどと、人々は喉から手が出るほどの代物ですよ…我々でも…」
『そうですか?では、まだ沢山持ってきてるから出してる分は譲りますよ。古志加さんにも頑張ってもらわないといけないしね』
ルーンは古志加を見て、軽く片眼を瞑ってニッコリ笑った
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寒いです、九州の人間には辛いです
手がかじかんでスマホ操作が厳しいです
と、更新が遅れた言い訳をしてみる…
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