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漫遊編
蓬莱の國 陸
しおりを挟むルーン達一行は古志加を先頭に東へ歩いていた
いや、歩きと言っていいのか
別段、急いでる訳でもないのだが
常人には走っている様に見えるであろう速さで風を巻いて歩き去る
この速さで先頭を切る古志加も流石と言えた
『古志加さん、そのままの速さで国府まで保ちますか?』
ルーンが息を切らせた風もなく問い掛ける
古志加も平然と
「はい、このぐらいならヘッチャラです。ルーンさん達は……問題無いみたいですね」
言わずもがなかと苦笑する
『そんなに急ぐ必要は無いんですよ?』
「はい、ですが少人数での山間の道中は盗賊や山賊、運が悪ければ魔獣に襲われる事もありますで少しばかり速足でやっております」
『ふむふむ、成る程!それも力弱き者の生き残る知恵なんですね。流石です』
四獣達も感心したように首を振る
「いやそんな…大した事じゃありませんよ、仰る通りただただ生き残る為ですし、普通に歩いたんじゃ30日も掛かっちまいますから」
苦笑して照笑かむ
『でも、そろそろ僕達の後ろに回った方が良いですよ?』
と、ルーンが古志加を押し退けて前に出る
「え?それはどういう…」
ピュンピュンと風を切る音がして10本程の矢が飛んでくるとルーンの胸や腕に5本刺さった
「…っ……なぁっ!?ル、ルーンさんっ!?」
『ね?危ないでしょ?』
振り返ったルーンが古志加に柔かに笑うと、前方から
「お~いおいおい、どうなってやがんだぁ?」
「なんだこりゃ?俺の目がどうかしちまったのか?」
「しっかり矢は刺さってるよなぁ?」
30人余りの小汚い軽武装した男達が取り囲む様に藪から出てきた
東の国府、倭の都では寝殿造の館に主だった者達が集まっていた
「して、先の戦での詳細は解りましたか?」
「女王様、それが…」
「どうしたのですか?あれだけの数の尊い兵を喪った戦の事が、まだ?」
「はい、生き残った兵達に聴き取りしましたが…なんとも…その…」
「?私には言えない様な事だったのですか?」
「いえ、そういう理由では無いのです。ただ、我等も意味が解らないのです…その…余りにも荒唐無稽な話しで…」
「成る程、その荒唐無稽な話しでも構いませんから教えてくれますか?」
「畏まりました、では先ず蓬莱山から五人の人が下りてきた様です」
「次に互いの武将が誰何し、返答しなかった為に捕縛するべく包囲し突進した、と」
「たった五人に互いの全兵がですか?」
「はい、そのように聴きました。そして、ココからが荒唐無稽で…」
「ある兵曰く、兵の間に天突く火柱が立ち千以上の兵が焼かれた」
「別の兵曰く、突然竜巻が巻き起こり数千の兵が巻き上がり地に叩き付けられ何かに切断された」
「また、別の兵曰く、地が割れ数千の兵が呑み込まれた」
「はたまた別の兵曰く、水の槍が無数に降ってきて数千の兵が串刺になった」
「そして、最後に雷が無数に落ちてきて戦さ場は静かになった…と言う話しでしたが俄かには信じられない事ばかりで」
「女王様の道術も見た事がございますれば、その様な一軍に匹敵する様な強力な道術は有り得ない事かと」
「…女王様?…日御子様?…如何されましたか?」
そこには青褪めた女王 日御子が何やらブツブツと呟いている
「火、風、地、水、雷…いや…まさか…そんな事があるのですか?しかし…五行…蓬莱山から下りて…占で視て…いや、本物であれば視えぬ…か…」
「大丈夫ですか?女王様?」
「その、その五人の風体は判らぬのですか?」
「何故そんなに慌てなさる?残念ながら生き残った者達は、かなりの遠目で見ておりますので容姿迄は定かではございません」
「そうですか…残念です…」
「女王様には何か心当たりがお有りなのですか?」
「心当たりはありません…が、その強い道術は人の為せる行いでは無いと思います。それこそ神仙の御業でしょう。そして、この地に仙人は居ません…」
「で、では神の類いだと仰言いますか!?」
「類いではなく、そのものと思います」
「なっ!?そんな…では、我等と出雲氏の兵には神罰が下されたと言われますか!?」
「そうとしか思えません」
「火柱は南の朱雀、竜巻は西の白虎、地割れは北の玄武、水の槍は東の青龍、そして雷は天の黄龍…それが只人が入れない蓬莱山から下りて来る…辻褄が合います…」
「「「「…そんな…」」」」
「絶望している余裕はありませんよ!其の方達は何処へ行かれたのですか?」
「いや、其処までは解りませぬ…」
「では、急いで探して出して下さい!早くお詫び申し上げねば、この都は跡形も無くなります!私の占術は残念ながら神相手には何も視えません」
「「「「はっ!!全力で探して参ります!!」」」」
「私は祷る事しか出来ませぬが、お頼みします」
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次回、盗賊蹂躙&都入りします
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