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風に舞う髪: 凪ちゃんの青春物語
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私の名前は凪(なぎさ)。
3月1日、いよいよ高校の卒業式だ。私は野球部のエースで、約2年半住んでた寮を退寮したばかりだ。寮生活は大変だったけど、楽しい思い出もたくさんある。その中でも一番大切なのは、彼との出会いだ。
彼とは1年生の夏休み期間中に知り合った。私は学校から離れた場所で寮生活をしていたから、夏休みも自主練に励んでいた。ある日、公園で素振りをしていると、とある男性に声を掛けられた。
「すみません、ちょっといいですか?」
彼は私の打撃フォームが気になったらしく、勇気を出して教えてくれた。彼は仕事帰りにいつも寮の近くを通っているらしく、私以外の生徒も見かけることが多かったけど、私の練習態度が一番のお気に入りだったらしい。何回も見るうちに、私も彼に興味を持ち始めた。会う度に素振りを教わっていた。
「こうやって手首を返すと、ボールに力が入るんだよ」
「へぇ、すごいね。ありがとう」
「いやいや、俺も野球が好きだからさ。君はどこの高校の野球部?」
「えっと、私は神月高校の野球部だよ」
「へぇ、神月高校か。強いんだろうね」
「まあまあかな。でも、私はまだまだだよ。もっと上手くなりたい」
「そういう気持ちが大事だよ。俺は君のこと応援してるからね」
「ありがとう。それじゃ、またね」
「うん、またね」
私は彼の優しい笑顔にドキドキした。彼の名前は…。
1年の冬休みには、帰省するまでずっと練習オフにバッティングセンターにも連れて行ってもらった。夜ご飯もご馳走になりながら、自分のプレーについてやチーム事情の悩み事を打ち明けた。彼は私の話を真剣に聞いてくれて、アドバイスや励ましの言葉をくれた。
「君はすごい才能があるよ。だから、自信を持ってプレーしろよ」
「でも、私はまだまだだよ。先輩や後輩にも負けないように頑張らないと」
「君は君のペースでいいんだよ。周りと比べる必要はないよ。君は君だから」
「そうかな…。ありがとう。君はいつも私のことを褒めてくれるね」
「いやいや、本当のことを言ってるだけだよ。君は本当に素敵な女の子だよ」
「えっ…?」
私は彼の真っ直ぐな瞳に見つめられて、赤面した。彼は私に惹かれているのだろうか。
そして、2年の春の大会では、3回戦負けはしたものの、初めて4番という光栄な打順も務め、さらにはホームランまで打てた。大会が終わってから、久しぶりに再会したときには、彼の前で私は泣いてしまった。
「凪ちゃん、お疲れ様。すごかったよ。ホームラン打ったときは、俺も感動したよ」
「ありがとう。でも、負けちゃったんだ。悔しいよ」
「負けても、君は最高だよ。君は俺の誇りだよ」
「本当?」
「本当だよ。だから、泣かないで。笑ってよ」
「うん…」
彼は私の頭を撫でてくれた。私は彼に抱きついて、ありがとうと言った。彼と出会っていなければ、ホームランも打ててなかったと思う。
2年の夏の大会前には、ロングヘアーを捨てて、チームのために野球部1番短い髪型にすることに決めた。そのときも彼と大会に向けて髪型の相談をした。大会1週間前のオフには、友達にも内緒で彼の通っている床屋に一緒に入った。
「凪ちゃん、本当に切るの?」
「うん、切るよ。チームのためにね」
「でも、凪ちゃんの髪はすごく綺麗だよ。もったいないよ」
「大丈夫だよ。髪はまた伸びるし、今は野球に集中したいんだ」
「そうか…。分かった。じゃあ、俺が凪ちゃんの髪型を決めてあげるよ」
「えっ、本当に?」
「うん、本当に。俺は凪ちゃんのことを一番分かってるからね」
「じゃあ、お願いするね」
私は床屋の理容椅子に腰かけ、心臓の鼓動を感じながら鏡に映る自分の姿を見つめた。椅子はゆっくりと後ろに傾けられ、理容師が私の髪を梳きながら、今日のスタイルについて最後の確認をする。
「本当にいいんですね?刈り上げても」と理容師が尋ねると、私は緊張しながらも決意を固め、「はい、お願いします」と答えた。隣に立つ彼は私の手を握り、静かに支えを示す。
理容師は首回りにタオルを巻き、さらにカットクロスを広げて私を覆う。その準備が整うと、理容師はバリカンを手に取り、その刃を確認した後、私の後頭部にそっと当てた。バリカンが鳴り始めると、その振動が頭皮に伝わり、私は息を飲む。理容師は非常に丁寧にバリカンを動かし始め、長い髪がサッと落ちていく様子が鏡越しに見えた。
刈り上げは後頭部から始まり、理容師は耳周りに移っていく。バリカンの音とともに、私の首筋からふわりと髪が落ちていった。髪が落ちる度に、心の中には新しい自分への期待とさよならを告げる寂しさが交錯する。
理容師はサイドも慎重に刈り上げていき、耳の形に合わせてバリカンを微調整する。細かい部分にはさらに細いバリカンを用いて、綺麗なラインを作り上げた。私の新しい髪型は徐々に形を成していき、その都度、理容師は私の顔立ちや骨格を考慮しながら、最適な長さと形を選んでいた。
刈り上げが一段落すると、理容師はバリカンを置き、はさみと櫛を手に取ってトップの髪に移った。ここでも丁寧なカットが施され、新しいスタイルが完成へと近づいていった。
最後に、理容師は髪に軽く水をスプレーし、最終的なスタイリングを行った。私の髪型が完成すると、理容師は大きな鏡を持ってきて、後ろ姿を見せた。鏡に映った私の新しい姿に目を見張り、初めて見る自分のスタイルに心の中で驚きと共に新たな自信を感じた。
「いかがですか?お気に召しましたか?」理容師が優しく問いかけられ、私は深く息を吸い込んでから、大きな笑顔で「はい、とても素敵です。ありがとうございます」と感謝
「凪ちゃん、どう?気に入った?」
彼が私の横に来て、私の刈り上げを撫でた。私は彼の手にぞくぞくした。
「うん、気に入ったよ。ありがとう」
「よかった。君はどんな髪型でも似合うよ。でも、俺は君の刈り上げが一番好きだよ」
「えっ、本当?」
「本当だよ。君の刈り上げは俺の宝物だよ」
「そうなの…?」
彼は私にキスをした。
私は彼に抱きしめられて、幸せだと思った。彼は私のことを本当に愛してくれているんだと感じた。私も彼のことが大好きだった。
「凪ちゃん、君は俺のこと好き?」
「うん、好きだよ。大好きだよ」
「本当に?」
「本当にだよ。だから、ずっと一緒にいてね」
「うん、ずっと一緒にいるよ。君と離れたくないよ」
「私もだよ。私たちは運命だよ」
「そうだね。君と出会えて、俺は幸せだよ」
「私もだよ。君と出会えて、私は強くなれたよ」
私たちはキスをした。私たちはお互いのことを想っていた。
寮に着いたら、先輩や後輩にも驚かれたけど、私は自信を持って自分の髪型を見せた。可愛がっている1年生も私と同じ刈り上げショートにイメチェンしていた。私は彼女に声を掛けた。
「あら、優梨ちゃん、髪切ったの?」
「うん、切ったよ。凪先輩みたいになりたくて」
「えっ、本当?」
「うん、本当だよ。凪先輩はすごいよ。野球も上手いし、カッコいいし、彼氏もいるし」
「えっ、彼氏?」
「うん、彼氏。この人は凪先輩の彼氏でしょ?」
彼女は私の隣にいた彼を指さした。私は彼を見て、照れた。
「あ、あの…」
「凪ちゃん、恥ずかしがらなくていいよ。俺たちは付き合ってるんだから」
彼は私の手を握って、堂々と言った。私は彼の手にぎゅっとした。
「そうなの…?」
「うん、そうなの。凪ちゃんは俺の彼女だよ」
「じゃあ、私は君の彼女だよ」
「そうだね。凪ちゃんは俺の彼女だよ」
私たちは笑った。私たちはお互いのことを大切に思っていた。
そして、3年生が最後の大会で見事にホームランを打った。先輩や後輩、指導者からも気に入られ、その後の新チームではキャプテンを務めた。いよいよラストで最後の大会は悔いも残らず2回戦負けしたが、彼との出会いもあり、負けた日に寮の近くで人目も気にせず汚れたユニフォームで私から彼に感謝のハグのプレゼントをした。
2年のときにばっさり刈り上げをしてからは、3年の冬の帰省も含めて髪の毛を染めたり学校で禁止のパーマを楽しんでいた。
退寮する前日に、3年生全員が生徒指導に呼ばれ体育館に集まった。
それが悪夢の始まりだった。
野球部の女の子も含めて他にも数人が禁止のパーマをしていた。帰省中にパーマをしていて、まだパーマが残ってる生徒は卒業式不参加という判断が下された。
そんなことは口だけだと思っていた私も含めて野球部では、4人も罰を受けることになった。
野球部4人は罰を待たずに高校最後の思い出作りに4人全員が自主的に坊主にすることを決めた。
学校の先生方に最後の最後に迷惑をかけた後悔があり、4人以外にも3年生連帯責任で女子野球部の15人が卒業式前日に教室で1ミリ坊主にした。
迷惑をかけた4人は自主的にスキンヘッドにした。メンズショートやスパイラルパーマ、ショートボブ、セミロングもたくさんいたのに…。
「凪ちゃん、本当にやるの?」
「うん、やるよ。これが私たちの決意だから」
「でも、君の髪はすごく綺麗だよ。もったいないよ」
「大丈夫だよ。髪はまた伸びるし、今は先生方に謝りたいんだ」
「そうか…。分かった。じゃあ、俺が君の髪を切ってあげるよ」
「えっ、本当に?」
「うん、本当に。俺は君のことを一番分かってるからね」
「じゃあ、お願いするね」
私は彼に任せて、椅子に座った。
彼はバリカンとカミソリを持ってきて、私の髪を切り始めた。私は初めてのスキンヘッドに緊張したけど、後ろで先輩たちが見守っているから安心した。
髪が次第に短くなっていく感覚に、不安と決意が入り混じった気持ちが湧いてきた。彼が丁寧に髪を剃っていく様子に、私たちの間に流れる深い信頼と絆を感じた。
「はい、出来上がりだよ」
彼がそう言って、私の頭を優しく撫でた。鏡を見ると、そこには新たな自分がいた。まるで戦士のような勇敢な姿。私は自分のスキンヘッドを触り、新しい自分を受け入れた。
「どう?大丈夫?」
「うん、大丈夫。ありがとう。新しい自分も悪くないね」
「そうだろ?君ならどんなスタイルも似合うよ。そして、これは君の強さの証だよ」
私たちは互いの目を見て、笑顔を交わした。この経験が私たちをさらに強く結びつけたことを感じた。
卒業式の前日、凪ちゃんは学校で起きた一連の出来事の後、深い決意のもとスキンヘッドになった。この大胆な行動は、彼女自身の成長と変化を象徴するものだった。その日の夜、彼女は彼の家に泊まることになった。二人にとっては、高校生活の終わりと新しい未来への一歩を踏み出す特別な夜だった。
私たちは彼の部屋に入った。彼はドアを閉めて、私に優しく微笑んだ。私は彼の目に深い愛情と尊敬を見た。彼は私の手を引いて、ベッドに誘った。私は彼に従って、ベッドに座った。彼は私の隣に座って、私の頭を撫でた。私は彼の手の温もりに心地よさを感じた。
「君は本当に素敵だよ。君のスキンヘッドは君の美しさを際立たせているよ。君は勇敢で強くて、誰にも負けないよ」
彼はそう言って、私の頬にキスした。私は彼の唇に甘い感触を感じた。私は彼の胸に抱きついて、彼の匂いに酔った。彼は私の背中に手を回して、私を優しく抱きしめた。その安心感と温かさに包まれながら、私たちは互いの近さを感じ、心を通わせた。彼の抱擁は、言葉以上に深い愛情と支えを示していた。
彼の優しい言葉と行動は、私の自信をさらに強め、私たちの間の信頼と絆を深めた。部屋の静寂の中、私たちは互いの存在の価値を認め合い、お互いがこれまで歩んできた道と、これから歩む道に対する尊敬と理解を深めた。
この特別な夜は、私たちの関係に新たな次元を加え、お互いの人生における重要な支えとなる経験となった。互いの深い結びつきを確認し合い、未来への強い絆で結ばれた私たちは、心に残る貴重な思い出を作り上げた。
彼は私の坊主頭を優しく撫でながら、その勇敢な選択と私の内面から溢れる美しさに心からの愛情と尊敬を感じているようだった。私の新しい姿は彼にとって、強さと自己表現の象徴であり、その勇気に深く感動していた。私の坊主頭を見るたびに、彼は個性と彼女が選んだ人生の道をさらに愛おしく思った。
彼は私の目を見つめ、その決断によって私が放つ独特の輝きを感じ取り、美しさは外見だけでなく、その強い意志と心の強さにもあることを理解していた。坊主頭は彼にとって、真の美しさと精神的な成長を物語るバナーのようなものだった。
彼は私の頭を優しく撫でることで、深い愛とサポートを静かに示し、私の選択を全面的に支持していることを伝えた。この瞬間、私の坊主頭は彼との間の愛と信頼の強い絆を象徴しており、勇気ある一歩は彼らの関係をさらに深めるものとなった。
彼の部屋は温かく、安心感を与える空間で、私はそこにいるだけで心が落ち着いた。彼らは長い間、互いに深い感情を抱いていたが、今夜はその感情を初めて形にする時だった。二人はお互いのことを尊重し、愛情を込めて接し、高校生活の最後を記憶に残る瞬間にした。
この夜は、彼らにとって新たな絆を確認する時間となり、お互いへの理解と信頼がさらに深まった。二人は青春の一ページを共に閉じ、新しい章へと進む準備ができていた。彼らが共有した経験は、高校生活という大切な時期の中で、忘れられない思い出として心に刻まれた。
翌日、私たちは新しい自分として卒業式に臨んだ。スキンヘッドとなった私の姿は、同級生や教師たちに大きな驚きをもたらしたが、勇気ある決断に敬意を表する人々も多かった。卒業式では、過去を振り返りながらも、未来への希望に満ちた言葉が語られた。
式が終わった後、私は校門で待っている彼のところまで走った。二人は手を繋ぎ、互いに笑顔を交わしながら、これから始まる新しい人生への第一歩を踏み出した。彼らの前には無限の可能性が広がっており、私の高校生活で築いた絆が、これからも私たちを支え続けることだろう。
3月1日、いよいよ高校の卒業式だ。私は野球部のエースで、約2年半住んでた寮を退寮したばかりだ。寮生活は大変だったけど、楽しい思い出もたくさんある。その中でも一番大切なのは、彼との出会いだ。
彼とは1年生の夏休み期間中に知り合った。私は学校から離れた場所で寮生活をしていたから、夏休みも自主練に励んでいた。ある日、公園で素振りをしていると、とある男性に声を掛けられた。
「すみません、ちょっといいですか?」
彼は私の打撃フォームが気になったらしく、勇気を出して教えてくれた。彼は仕事帰りにいつも寮の近くを通っているらしく、私以外の生徒も見かけることが多かったけど、私の練習態度が一番のお気に入りだったらしい。何回も見るうちに、私も彼に興味を持ち始めた。会う度に素振りを教わっていた。
「こうやって手首を返すと、ボールに力が入るんだよ」
「へぇ、すごいね。ありがとう」
「いやいや、俺も野球が好きだからさ。君はどこの高校の野球部?」
「えっと、私は神月高校の野球部だよ」
「へぇ、神月高校か。強いんだろうね」
「まあまあかな。でも、私はまだまだだよ。もっと上手くなりたい」
「そういう気持ちが大事だよ。俺は君のこと応援してるからね」
「ありがとう。それじゃ、またね」
「うん、またね」
私は彼の優しい笑顔にドキドキした。彼の名前は…。
1年の冬休みには、帰省するまでずっと練習オフにバッティングセンターにも連れて行ってもらった。夜ご飯もご馳走になりながら、自分のプレーについてやチーム事情の悩み事を打ち明けた。彼は私の話を真剣に聞いてくれて、アドバイスや励ましの言葉をくれた。
「君はすごい才能があるよ。だから、自信を持ってプレーしろよ」
「でも、私はまだまだだよ。先輩や後輩にも負けないように頑張らないと」
「君は君のペースでいいんだよ。周りと比べる必要はないよ。君は君だから」
「そうかな…。ありがとう。君はいつも私のことを褒めてくれるね」
「いやいや、本当のことを言ってるだけだよ。君は本当に素敵な女の子だよ」
「えっ…?」
私は彼の真っ直ぐな瞳に見つめられて、赤面した。彼は私に惹かれているのだろうか。
そして、2年の春の大会では、3回戦負けはしたものの、初めて4番という光栄な打順も務め、さらにはホームランまで打てた。大会が終わってから、久しぶりに再会したときには、彼の前で私は泣いてしまった。
「凪ちゃん、お疲れ様。すごかったよ。ホームラン打ったときは、俺も感動したよ」
「ありがとう。でも、負けちゃったんだ。悔しいよ」
「負けても、君は最高だよ。君は俺の誇りだよ」
「本当?」
「本当だよ。だから、泣かないで。笑ってよ」
「うん…」
彼は私の頭を撫でてくれた。私は彼に抱きついて、ありがとうと言った。彼と出会っていなければ、ホームランも打ててなかったと思う。
2年の夏の大会前には、ロングヘアーを捨てて、チームのために野球部1番短い髪型にすることに決めた。そのときも彼と大会に向けて髪型の相談をした。大会1週間前のオフには、友達にも内緒で彼の通っている床屋に一緒に入った。
「凪ちゃん、本当に切るの?」
「うん、切るよ。チームのためにね」
「でも、凪ちゃんの髪はすごく綺麗だよ。もったいないよ」
「大丈夫だよ。髪はまた伸びるし、今は野球に集中したいんだ」
「そうか…。分かった。じゃあ、俺が凪ちゃんの髪型を決めてあげるよ」
「えっ、本当に?」
「うん、本当に。俺は凪ちゃんのことを一番分かってるからね」
「じゃあ、お願いするね」
私は床屋の理容椅子に腰かけ、心臓の鼓動を感じながら鏡に映る自分の姿を見つめた。椅子はゆっくりと後ろに傾けられ、理容師が私の髪を梳きながら、今日のスタイルについて最後の確認をする。
「本当にいいんですね?刈り上げても」と理容師が尋ねると、私は緊張しながらも決意を固め、「はい、お願いします」と答えた。隣に立つ彼は私の手を握り、静かに支えを示す。
理容師は首回りにタオルを巻き、さらにカットクロスを広げて私を覆う。その準備が整うと、理容師はバリカンを手に取り、その刃を確認した後、私の後頭部にそっと当てた。バリカンが鳴り始めると、その振動が頭皮に伝わり、私は息を飲む。理容師は非常に丁寧にバリカンを動かし始め、長い髪がサッと落ちていく様子が鏡越しに見えた。
刈り上げは後頭部から始まり、理容師は耳周りに移っていく。バリカンの音とともに、私の首筋からふわりと髪が落ちていった。髪が落ちる度に、心の中には新しい自分への期待とさよならを告げる寂しさが交錯する。
理容師はサイドも慎重に刈り上げていき、耳の形に合わせてバリカンを微調整する。細かい部分にはさらに細いバリカンを用いて、綺麗なラインを作り上げた。私の新しい髪型は徐々に形を成していき、その都度、理容師は私の顔立ちや骨格を考慮しながら、最適な長さと形を選んでいた。
刈り上げが一段落すると、理容師はバリカンを置き、はさみと櫛を手に取ってトップの髪に移った。ここでも丁寧なカットが施され、新しいスタイルが完成へと近づいていった。
最後に、理容師は髪に軽く水をスプレーし、最終的なスタイリングを行った。私の髪型が完成すると、理容師は大きな鏡を持ってきて、後ろ姿を見せた。鏡に映った私の新しい姿に目を見張り、初めて見る自分のスタイルに心の中で驚きと共に新たな自信を感じた。
「いかがですか?お気に召しましたか?」理容師が優しく問いかけられ、私は深く息を吸い込んでから、大きな笑顔で「はい、とても素敵です。ありがとうございます」と感謝
「凪ちゃん、どう?気に入った?」
彼が私の横に来て、私の刈り上げを撫でた。私は彼の手にぞくぞくした。
「うん、気に入ったよ。ありがとう」
「よかった。君はどんな髪型でも似合うよ。でも、俺は君の刈り上げが一番好きだよ」
「えっ、本当?」
「本当だよ。君の刈り上げは俺の宝物だよ」
「そうなの…?」
彼は私にキスをした。
私は彼に抱きしめられて、幸せだと思った。彼は私のことを本当に愛してくれているんだと感じた。私も彼のことが大好きだった。
「凪ちゃん、君は俺のこと好き?」
「うん、好きだよ。大好きだよ」
「本当に?」
「本当にだよ。だから、ずっと一緒にいてね」
「うん、ずっと一緒にいるよ。君と離れたくないよ」
「私もだよ。私たちは運命だよ」
「そうだね。君と出会えて、俺は幸せだよ」
「私もだよ。君と出会えて、私は強くなれたよ」
私たちはキスをした。私たちはお互いのことを想っていた。
寮に着いたら、先輩や後輩にも驚かれたけど、私は自信を持って自分の髪型を見せた。可愛がっている1年生も私と同じ刈り上げショートにイメチェンしていた。私は彼女に声を掛けた。
「あら、優梨ちゃん、髪切ったの?」
「うん、切ったよ。凪先輩みたいになりたくて」
「えっ、本当?」
「うん、本当だよ。凪先輩はすごいよ。野球も上手いし、カッコいいし、彼氏もいるし」
「えっ、彼氏?」
「うん、彼氏。この人は凪先輩の彼氏でしょ?」
彼女は私の隣にいた彼を指さした。私は彼を見て、照れた。
「あ、あの…」
「凪ちゃん、恥ずかしがらなくていいよ。俺たちは付き合ってるんだから」
彼は私の手を握って、堂々と言った。私は彼の手にぎゅっとした。
「そうなの…?」
「うん、そうなの。凪ちゃんは俺の彼女だよ」
「じゃあ、私は君の彼女だよ」
「そうだね。凪ちゃんは俺の彼女だよ」
私たちは笑った。私たちはお互いのことを大切に思っていた。
そして、3年生が最後の大会で見事にホームランを打った。先輩や後輩、指導者からも気に入られ、その後の新チームではキャプテンを務めた。いよいよラストで最後の大会は悔いも残らず2回戦負けしたが、彼との出会いもあり、負けた日に寮の近くで人目も気にせず汚れたユニフォームで私から彼に感謝のハグのプレゼントをした。
2年のときにばっさり刈り上げをしてからは、3年の冬の帰省も含めて髪の毛を染めたり学校で禁止のパーマを楽しんでいた。
退寮する前日に、3年生全員が生徒指導に呼ばれ体育館に集まった。
それが悪夢の始まりだった。
野球部の女の子も含めて他にも数人が禁止のパーマをしていた。帰省中にパーマをしていて、まだパーマが残ってる生徒は卒業式不参加という判断が下された。
そんなことは口だけだと思っていた私も含めて野球部では、4人も罰を受けることになった。
野球部4人は罰を待たずに高校最後の思い出作りに4人全員が自主的に坊主にすることを決めた。
学校の先生方に最後の最後に迷惑をかけた後悔があり、4人以外にも3年生連帯責任で女子野球部の15人が卒業式前日に教室で1ミリ坊主にした。
迷惑をかけた4人は自主的にスキンヘッドにした。メンズショートやスパイラルパーマ、ショートボブ、セミロングもたくさんいたのに…。
「凪ちゃん、本当にやるの?」
「うん、やるよ。これが私たちの決意だから」
「でも、君の髪はすごく綺麗だよ。もったいないよ」
「大丈夫だよ。髪はまた伸びるし、今は先生方に謝りたいんだ」
「そうか…。分かった。じゃあ、俺が君の髪を切ってあげるよ」
「えっ、本当に?」
「うん、本当に。俺は君のことを一番分かってるからね」
「じゃあ、お願いするね」
私は彼に任せて、椅子に座った。
彼はバリカンとカミソリを持ってきて、私の髪を切り始めた。私は初めてのスキンヘッドに緊張したけど、後ろで先輩たちが見守っているから安心した。
髪が次第に短くなっていく感覚に、不安と決意が入り混じった気持ちが湧いてきた。彼が丁寧に髪を剃っていく様子に、私たちの間に流れる深い信頼と絆を感じた。
「はい、出来上がりだよ」
彼がそう言って、私の頭を優しく撫でた。鏡を見ると、そこには新たな自分がいた。まるで戦士のような勇敢な姿。私は自分のスキンヘッドを触り、新しい自分を受け入れた。
「どう?大丈夫?」
「うん、大丈夫。ありがとう。新しい自分も悪くないね」
「そうだろ?君ならどんなスタイルも似合うよ。そして、これは君の強さの証だよ」
私たちは互いの目を見て、笑顔を交わした。この経験が私たちをさらに強く結びつけたことを感じた。
卒業式の前日、凪ちゃんは学校で起きた一連の出来事の後、深い決意のもとスキンヘッドになった。この大胆な行動は、彼女自身の成長と変化を象徴するものだった。その日の夜、彼女は彼の家に泊まることになった。二人にとっては、高校生活の終わりと新しい未来への一歩を踏み出す特別な夜だった。
私たちは彼の部屋に入った。彼はドアを閉めて、私に優しく微笑んだ。私は彼の目に深い愛情と尊敬を見た。彼は私の手を引いて、ベッドに誘った。私は彼に従って、ベッドに座った。彼は私の隣に座って、私の頭を撫でた。私は彼の手の温もりに心地よさを感じた。
「君は本当に素敵だよ。君のスキンヘッドは君の美しさを際立たせているよ。君は勇敢で強くて、誰にも負けないよ」
彼はそう言って、私の頬にキスした。私は彼の唇に甘い感触を感じた。私は彼の胸に抱きついて、彼の匂いに酔った。彼は私の背中に手を回して、私を優しく抱きしめた。その安心感と温かさに包まれながら、私たちは互いの近さを感じ、心を通わせた。彼の抱擁は、言葉以上に深い愛情と支えを示していた。
彼の優しい言葉と行動は、私の自信をさらに強め、私たちの間の信頼と絆を深めた。部屋の静寂の中、私たちは互いの存在の価値を認め合い、お互いがこれまで歩んできた道と、これから歩む道に対する尊敬と理解を深めた。
この特別な夜は、私たちの関係に新たな次元を加え、お互いの人生における重要な支えとなる経験となった。互いの深い結びつきを確認し合い、未来への強い絆で結ばれた私たちは、心に残る貴重な思い出を作り上げた。
彼は私の坊主頭を優しく撫でながら、その勇敢な選択と私の内面から溢れる美しさに心からの愛情と尊敬を感じているようだった。私の新しい姿は彼にとって、強さと自己表現の象徴であり、その勇気に深く感動していた。私の坊主頭を見るたびに、彼は個性と彼女が選んだ人生の道をさらに愛おしく思った。
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彼の部屋は温かく、安心感を与える空間で、私はそこにいるだけで心が落ち着いた。彼らは長い間、互いに深い感情を抱いていたが、今夜はその感情を初めて形にする時だった。二人はお互いのことを尊重し、愛情を込めて接し、高校生活の最後を記憶に残る瞬間にした。
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翌日、私たちは新しい自分として卒業式に臨んだ。スキンヘッドとなった私の姿は、同級生や教師たちに大きな驚きをもたらしたが、勇気ある決断に敬意を表する人々も多かった。卒業式では、過去を振り返りながらも、未来への希望に満ちた言葉が語られた。
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