バレー部入部物語〜それぞれの断髪

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バレー部入部物語〜それぞれの断髪

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3月の柔らかな春風が西米学園の体育館を優しく包んでいた。女子バレーボール部の新入生たちは、緊張と期待を胸に抱きながら、一歩一歩体育館に足を踏み入れた。彼女たちの顔には、新しいスタートへの不安と興奮が浮かんでいた。

先輩たちは、その緊張をほぐすかのように温かく迎え入れてくれた。彼女たちの姿は、新入生にとってまるで大人びた姉のように映った。先輩の中には、ベリーショートに刈り上げた髪型をした者もいれば、美しいロングヘアをポニーテールにしている者もいた。

練習が始まると、先輩たちは新入生に基本から丁寧に教えてくれた。球技の技術だけでなく、チームワークの大切さも伝えてくれた。新入生たちは、先輩たちの落ち着いた振る舞いと、バレーボールへの情熱に心を打たれた。

練習の終わりに、監督が彼女たちの前に立ち、「君たちは全国大会に出場して、優勝するためにここにいる。推薦で入った者も、そうでない者も、ここにいる以上は一つのチームだ。一致団結するためにも、身だしなみは統一しよう。4月の入部式までには、全員髪を短くして来てほしい。耳がしっかり見え、制服の襟に髪が触れないようにすること。このルールを守って、一丸となって頑張ろう。では、今日はこれで解散だ!」と力強く語った。

新入生たちの間では、監督の言葉を受けてさまざまな感情が交錯した。自慢のロングヘアを短くすることへの躊躇、チームの一員としての誇り、そしてこれから始まる高校生活とバレーボールへの情熱が彼女たちの心を揺さぶった。

しかし、監督の言葉は新入生たちにとって、チームの一員としての自覚を新たにする大切な瞬間でもあった。彼女たちは、チームのため、そして共通の目標に向かって努力する仲間たちと一緒に、新しい挑戦に立ち向かうことを決意した。髪を切ることは、ただの規則ではなく、新しいスタートを切るための象徴的な行為となったのだ。

~~~~~

【浅田雛子】

浅田雛子は、心を決めて地元の床屋の扉を押し開けた。鏡が並ぶ広々とした店内は、男性客で賑わっていたが、彼女の出現に一瞬、静寂が訪れた。店の主人が微笑みながら迎え、彼女を古いがしっかり手入れされた椅子へと案内した。

浅田雛子が床屋の椅子に腰掛けると、店主は彼女の豊かなロングヘアを優しく梳かし始めた。その一本一本には、中学時代の汗と笑顔が絡みついているようだった。髪は一旦、低く結ばれ、長さを保持するための準備が整えられた。

「どうされますか?」店主が尋ねると、雛子は少し緊張した様子で、ベリーショートにしてほしいと伝えた。店主は驚いたように彼女の長い髪を見つめたが、すぐに笑顔で応じた。「わかりました。大丈夫、お任せください」

彼女の髪は、湿らせてから梳かれ、整えられた。店主は、細心の注意を払いながら鋏を入れ始めた。一呼吸置いて、鋏を閉じると、長い髪の束がスルリと切り離され、静かに床へと落ちた。その瞬間、店内にはほとんど音がなく、落ちる髪の束が生み出す静かな音だけが響いた。

雛子はその瞬間を鏡越しに見つめていた。彼女の目には、決意と寂しさが混在しているように見えた。店主は鋏を再び動かし、もう一束、また一束と髪を落としていった。切り落とされた髪の束は、彼女の過去の象徴のように床に積み重なっていった。

店主は細心の注意を払いながら、残された髪を段階的に短くしていった。まるで彫刻を削り出すかのように、彼の手は慎重に、確実に動いた。彼のハサミは熟練されたリズムで動き、雛子の新しい姿が徐々に明らかになっていった。

雛子は鏡に映る自分の姿を見守りながら、心の中でさよならを告げた。長い髪と共に、中学時代の自分もそこに置いていくような感覚がした。店主は髪を短く刈り上げながらも、形を整え、彼女の新しい姿に命を吹き込んでいった。

雛子の新しいヘアスタイルの輪郭がほぼ完成した時、店主はバリカンを手に取り、横の髪、耳周り、そして襟足に入れていく作業に移った。バリカンの電源が入ると、その低い振動音が静かな店内に響き渡った。

まず、雛子の頭の側面にバリカンを当てると、店主は非常に繊細に、そして慎重に髪を削ぎ落とし始めた。バリカンは彼女の頭皮に沿って滑らかに動き、余分な髪を正確に取り除いていった。横の髪が短く整えられると、その清潔感とすっきりとした印象が一層際立った。

次に、店主は耳周りに注意を向けた。バリカンを耳の形に合わせて優しく動かし、耳のラインを美しく見せるための細かな調整を施した。耳の後ろと側面の髪を丁寧に削ぎ落とすことで、プロフェッショナルな仕上がりが実現された。耳周りがすっきりすることで、雛子の顔立ちがより一層引き立てられた。

最後に、襟足の整理が行われた。バリカンは彼女の首のラインに沿ってゆっくりと動かされ、襟足の髪が短く、かつ整った形に刈り込まれていった。この細かな作業は、ヘアスタイル全体のバランスを整え、洗練された印象を与えるために重要であった。

バリカンの刃が髪を刈り取るたびに、微細な髪の断片が舞い落ちた。店主は髪の長さと形を丁寧に見極めながら、バリカンを操り続けた。彼の手際の良さと確かな技術により、雛子のヘアスタイルは緻密に仕上げられていった。

バリカンが終わると、店主は細かい髪の断片を払い落とすためにブラシを使い、雛子の首筋や肩を丁寧に清掃した。鏡に映る雛子の新しい姿は、彼女自身の変化と成長を物語っていた。バリカンによって生み出された細部の整理は、彼女のヘアスタイルに洗練さと精密さを加え、その新章の始まりを完璧に象徴していた。

雛子の新しいヘアスタイルが完成すると、彼女は深い息を吸い込んだ。鏡に映る自分の姿に、彼女は新しい自分自身を認識し、その変化を受け入れ始めた。切り落とされた髪の束が彼女の足元に静かに横たわり、新たな章の始まりを告げていた。

「ほら、どうですか?」店主が仕上げに微笑みながら尋ねた。雛子が鏡を見ると、そこには見慣れた自分とは違う、新しい自分が映っていた。ベリーショートが彼女の新しい勇気と決意を象徴しているようだった。

「素敵です。ありがとうございます」と、彼女は心からの感謝を込めて言った。その瞬間、店内の他の客たちも感動に包まれ、彼女の大胆な変身を称賛した。

床屋を出る時、雛子は新しい自分を胸に、これからの挑戦に向けての確かな一歩を踏み出していた。

【木澤瑠美】

木澤瑠美は、緊張と期待で胸がいっぱいだった。西米学園バレーボール部の体験練習に参加した際、コーチから意外な指示を受けたのだ。「木澤、入学したらもっと短くして来い。チーム一丸となって全国優勝を目指すんだ。その決意を見せてくれ」と。

中学時代からショートヘアだった瑠美にとって、これは新たな挑戦だった。「さらに短く?」と自問自答する彼女の心は揺れたが、全国優勝という夢に向かっての一歩と考え、覚悟を決めた。

練習後、家に帰る道すがら、瑠美は自分の髪に手をやった。「みんなと一緒に頑張るためには、これくらいのこと、やらなきゃね」と心に語りかける。

翌日、彼女は地元の床屋に足を運んだ。入るなり、店主のおじさんが驚いた表情を隠せなかった。「瑠美ちゃん、どうしたの? いつものショートでいいの?」

「いえ、今日はもっと短くしてください。ベリーショートにしてほしいんです」と瑠美は決意を込めて言った。

店主は微笑みながら首を縦に振った。「わかったよ。バレーで全国優勝を目指すんだって? それなら、俺も全力で応援させてもらうよ」

木澤瑠美は、床屋の椅子に静かに座り、緊張と期待で胸を高鳴らせた。店主がカバーをかけると、彼女のショートヘアが今にもその形を変えようとしていることを実感した。

「本当に短くしていいんだね?」店主が最後の確認をすると、瑠美は深く息を吸い込んで、「はい、お願いします」と強く頷いた。

店主はバリカンを手に取り、その刃を瑠美の側頭部に軽く当てた。バリカンが鳴り始めると、彼女の髪の毛が刃とともに動き、瞬く間に床に落ちた。バリカンの振動が頭皮を通じて感じられ、瑠美はその感覚に身を委ねた。

店主は慎重にバリカンを動かし、瑠美の髪を均一に短くしていった。側面から後頭部にかけて、一気に長さを取り、襟足に向かって細かく調整していく。髪の毛が刈り取られるたびに、瑠美の頭の形がはっきりと現れ、新しいスタイルが徐々に形を成していった。

耳周りは特に注意深く扱われ、店主はバリカンを傾け、瑠美の耳の形に合わせて髪を整えた。繊細な手つきで耳のラインを際立たせ、清潔感あふれる仕上がりを目指した。

次に、店主はより細かいアタッチメントをバリカンに装着し、襟足を丁寧に整えた。襟足の髪を短くすることで、首元がスッキリとし、より爽やかな印象になる。瑠美の襟足にバリカンが触れるたびに、小さな髪の毛が舞い落ち、彼女の新しい姿が完成に近づいていった。

最後に、店主は鋏を取り出し、トップの髪を細かく調整した。鋏が髪を切る音が静かな店内に響き、瑠美のヘアスタイルに最後の仕上げが施された。トップの髪はツンツンとワックスによって立ち上がっている、動きと軽さを加えて、瑠美の活発な性格を反映させた。

仕上げに、店主は小さなブラシで瑠美の顔周りの切り落とされた髪の毛を払い、鏡を彼女の前に差し出した。「どうだい、新しいスタートにふさわしいスタイルになったと思うよ」と店主が言うと、瑠美は鏡に映る自分の姿を見て、初めてのベリーショートに心から満足した笑顔を浮かべた。

「これで、西米学園での新しい挑戦が始まるね。ありがとう、心から気に入りました!」瑠美は新しい自分を受け入れ、全国優勝に向けた第一歩を踏み

床屋を出る時、彼女は頭が軽くなったのを感じ、心も新たな気持ちで満たされていた。「新しい自分で、新しい挑戦だ!」と心に誓い、西米学園でのバレーボール生活のスタートを心待ちにした。

【谷内深月】

谷内深月は、西米学園の体育館の出口に立ちながら、新しい人生の門出に思いを馳せていた。彼女の髪はお団子ヘアにまとめられており、そのスタイルは中学時代からの恋人が最も愛したものだった。

「深月、これからはバレーボールに集中するんだ。チーム一丸となって頑張るためにも、髪は短くして来てくれ」とコーチから言われた言葉が、彼女の心に響いていた。

家に帰ると、彼女は鏡の前に長い時間立ち、今までの自分と向き合った。「ずっと彼のために伸ばしてきた髪…でも、今は新しい自分を見つける時ね」と、心の中でつぶやいた。

翌日、深月は地元の美容室に向かった。ドアを開けると、美容師が笑顔で迎えてくれた。「深月ちゃん、どんな風に変身するの?」

深月は深呼吸をしてから答えた。「今日は、すごく短くしてもらいます。ベリーショートでお願いします」

美容師は少し驚いた表情を見せたが、すぐに優しい微笑みを浮かべて言った。「大丈夫、素敵に変身させてみせるわ」

彼女の髪を解くと、長い髪が肩を滑り落ちた。美容師が髪を梳かしながら、「大切な髪を切るのは勇気がいるわね。でも、新しいスタートにはぴったりだわ」と言葉をかけた。

美容室の椅子に座り、谷内深月は自分の長い髪を最後に撫でた。美容師が彼女の髪を梳かしながら、今日の大胆な変身に向けた準備を始めた。鏡に映る自分の姿を見つめ、深月は決意を新たにした。

「それでは、始めますね」と美容師が言うと、深月は頷いた。はさみが彼女の長い髪に入ると、最初の一束がサッと切り落とされた。その束が床に落ちる瞬間、深月の心の中には新たな道が開けたような感覚があった。

美容師は熟練の手つきで、次々と深月の髪を短くしていった。切り落とされるたびに、彼女の耳が少しずつ露わになり、新しい自分への変化が目に見えて現れていった。

次に、美容師はバリカンを手に取り、深月の耳周りを整え始めた。バリカンが耳の後ろを通ると、髪が細かく削ぎ取られ、徐々に耳が完全に露出し始めた。耳周りがクリアになることで、彼女の顔立ちが際立ち、新しい髪型の形がはっきりとしてきた。

うなじの部分に移ると、美容師はさらに慎重にバリカンを動かした。深月の首のラインに沿って、うなじの髪を短く刈り上げていく。バリカンの振動が直接、彼女の肌に伝わり、それはまるで変身の儀式のようだった。うなじが次第に現れるにつれて、深月の後ろ姿にも新たな美しさが宿り始めた。

刈り上げられたうなじは、彼女の首筋をより長く、エレガントに見せ、バレーボールでの動きやすさを考えた実用的なスタイルとしても完璧だった。

美容師が最後の仕上げを行い、深月の髪型を整えると、彼女は鏡に映る自分の新しい姿を見て、息をのんだ。「こんなに変われるなんて…」と感嘆の声を漏らした。

美容師は微笑みながら、「素敵ですよ、深月さん。新しいスタートにふさわしいですね」と言った。

刈り上げられた耳周りとうなじを感じながら、深月は新たな自分に自信を持ち、これから始まるバレーボールの強豪校での日々に胸を躍らせた。彼女にとって、この断髪はただの髪型の変更ではなく、新しい人生の章の始まりを象徴していたのだった。

カットが終わり、美容師が鏡を持って来てくれた時、深月は自分の新しい姿に目を見張った。「これが私…?」と驚きながらも、その変化を受け入れ、自信を持ち始めていた。

「いいわね、深月ちゃん。新しい自分を楽しんで」と美容師が励ますと、深月は力強くうなずいた。「はい、ありがとうございます。この新しい自分で、バレーボールにも人生にも全力で挑みます」

美容室を後にすると、彼女は新しい風を感じながら、これからの挑戦に向けての一歩を踏み出した。バレーボールの強豪校、西米学園での新しい生活と、自分自身への挑戦が、今、始まろうとしていた。

【針谷真琴】

針谷真琴は、西米学園の新たな門をくぐり、既に気合いの入ったベリーショートヘアをさらに刈り上げる決意を固めていた。彼女はこれまでの自分を超えるため、そしてチームに自分の決意を示すために、今日がその一歩となることを知っていた。

床屋のガラス戸を押し開けると、真琴は少し緊張しながらも、「こんにちは、初めてなんですけど…」と声をかけた。

店の主、一郎さんは温かく迎えてくれた。「初めてのお客さんかい?どういうスタイルにするかね?」

真琴は深呼吸をして、自分の意志を固めた。「今、ベリーショートなんですが、もっと短くしてください。できるだけ短く。バレーボールのためです」と力強く答えた。

一郎さんは真剣な表情でうなずき、「わかった、任せておくれ」と言い、彼女を古びたが落ち着く椅子へと案内した。

針谷真琴は、決意を固めて床屋の椅子に座った。今日、彼女は自分の限界を超え、丸坊主になることを選んだ。一郎さんがバリカンを手に取り、真琴に向かって「本当にいいのかい?」と最後の確認をした。

「はい、お願いします。」真琴の返事は静かだが、その決意は固かった。

カバーをかけられ、鏡を見つめる真琴。一郎さんはバリカンを手に取り、「じゃあ、行ってみようか」と言いながら、まずは頭のてっぺんから手際よく髪を削ぎ落とし始めた。バリカンの音と振動が、真琴の決意をさらに固くしていく。

サイドに移ると、一郎さんはバリカンを細かく動かし、耳周りを非常に短く整えた。耳が完全に露わになり、頭の形がはっきりとしてきた。

一郎さんは躊躇することなくバリカンを頭頂部にあて、その刃が真琴の髪を削ぎ落とし始めた。彼女の頭皮が徐々に現れ、一気に彼女の髪は短く刈り取られていった。鏡に映る自分の姿に、真琴は少し驚きながらも、その変化を受け入れていた。

バリカンは真琴の頭を丁寧に滑り、耳周り、後頭部、そして襟足まで、一切の髪を残さずに剃り上げていった。一郎さんの手際の良さで、真琴の頭は瞬く間に丸坊主に変わった。彼女の頭皮が均一に露出し、その潔さと新鮮さが新しい魅力となった。

最後に一郎さんが細かい残りの髪を整え終えると、真琴の丸坊主が完璧に仕上がった。「どうだい、感想は?」一郎さんが尋ねると、真琴は鏡に映る自分の姿を見つめ、深い感慨に浸っていた。

「信じられない…でも、すごく清々しいです。新しいスタートにふさわしいですね。ありがとうございます。」真琴の言葉には、新たな自分への期待とバレーボールへの情熱が込められていた。

床屋を出るとき、真琴は頭の軽さと風を直接感じる新しい感覚に心を躍らせた。この丸坊主は、彼女の新しい章の始まりであり、バレーボールに対する彼女の純粋な献身を象徴していた。西米学園での挑戦に向かって、真琴は新しい自信と決意を胸に、一歩を踏み出した。

「どうだい、これで十分短いかな?」一郎さんが最後の確認をすると、鏡に映った自分の姿に、真琴は驚きつつも、心からの満足感を覚えた。「完璧です。ありがとうございます!」彼女の顔には、新しい挑戦への自信と決意がはっきりと浮かんでいた。

床屋を出るとき、真琴は頭が軽く感じられ、風が直接頭皮に触れる新鮮な感覚に心を奮い立たせられた。この新しい髪型が、西米学園でのバレーボール部での彼女の新たなスタートとなり、チームへの強い結束と個人の決意を象徴するものとなることを、真琴は確信していた。

【皆川沙苗】

皆川沙苗は、高校の新しい門をくぐり、その心は期待と不安で揺れていた。彼女の長い髪は中学時代の彼女のトレードマークだったが、西米学園のバレーボール部に入ってからは、その髪型が彼女を悩ませる原因となっていた。

練習の初日、彼女は周りを見渡し、驚愕した。スポーツ推薦で入学した同級生たちは、皆、ベリーショートか坊主頭だった。「みんな…すごく短い…」と沙苗はつぶやいた。

その時、監督が彼女のもとに近づいてきた。「沙苗、お前は推薦ではないから、髪型を強制するつもりはない。だが、試合に出たいなら、チームの統一感を大切にして欲しい。それに、動きやすさも変わるからな」

家に帰り、鏡の前に立った沙苗は、自分のロングヘアを何度も撫でた。「試合に出たい。でも、この髪を切るのは…」

数日間悩んだ末、沙苗は決心した。「チームのためなら…」と心に誓い、彼女は美容室の扉を開けた。

中に入ると、美容師が笑顔で迎えた。「沙苗さん、いつものトリートメントですか?」

「いいえ、今日は…」沙苗は少し震える声で、「ベリーショートにしてください」と言った。

美容師は驚いたが、沙苗の決意を感じて、「わかりました。大丈夫、素敵にしますね」と答えた。

沙苗は美容室の椅子にじっと座り、自分の長い髪を最後になでると、深呼吸をして美容師にうなずいた。彼女の心臓はドキドキしていたが、決意は固かった。

美容師は沙苗の髪を丁寧に梳かし、長い束を後ろで一つにまとめた。そして、はさみを持ち上げ、「大丈夫ですか?」と最後に確認すると、沙苗は静かに「はい」と答えた。

クシュッという音と共に、沙苗のロングヘアの大部分が切り落とされた。彼女はその瞬間を鏡で見つめ、目を大きく見開いた。一つの長い髪の束が床に静かに落ち、彼女の新しい人生の第一歩を象徴していた。

美容師は次に、残された中間の長さの髪を段階的に短くしていくため、細かい鋏を取り出した。前髪から始めて、サイド、後ろへと移り、均等に髪を切り揃えていった。髪が切られるたびに、沙苗の顔がよりはっきりと現れ、彼女の新しいスタイルが徐々に形を成していった。

耳周りを整える際、美容師は特に慎重になり、髪を耳に沿って短く刈り上げていった。沙苗の耳が完全に露わになり、それが彼女の新しい髪型の大きな特徴の一つとなった。

襟足の部分に移ると、美容師はさらに細かく作業を行い、清潔感のあるベリーショートに仕上げた。バリカンを使って、襟足をさらに短く整えることで、沙苗の首筋がすっきりとし、活発な印象を与えた。

最後に全体のバランスを見ながら、美容師は微調整を加え、沙苗の髪型を完成させた。「どうですか?」と鏡を見せながら美容師が尋ねると、沙苗は自分の新しい姿に目を丸くした。髪がこのほど短くなるのは生まれて初めてのことだった。

「すごい…新しい私…」沙苗は自分の変化を実感し、美容師に感謝の言葉を伝えた。「ありがとうございます、想像以上に気に入りました!」

美容室を出る時、沙苗は風が直接頭皮に触れる新鮮な感覚に心地よさを感じながら、新たな自分と新たな挑戦に胸を膨らませた。

練習に戻ると、チームメイトからは驚きと賞賛の声が上がった。「沙苗、カッコいい!」「新しいスタートだね!」

試合の日、沙苗は自信を持ってコートに立った。彼女のプレーは以前よりも自由で、動きも軽やかだった。彼女は自分の選択が、ただ髪を切っただけでなく、自分自身を新たに発見することにも繋がったと感じた。

試合後、監督は沙苗の肩を叩いて言った。「よくやった。お前の決断がチームに良い影響を与えた」

沙苗は笑顔で応えた。「ありがとうございます。これからも全力で頑張ります!」彼女の自慢のロングヘアとの別れは、全国大会決勝戦の舞台に立つことの決意の表れだった。

【渡部渚】

渡部渚は、西米学園バレーボール部の体験練習を終えたあと、一人で更衣室に座り込んでいた。彼女の長い髪は彼女自身の一部のように感じられ、その輝きは彼女の自信の源だった。しかし、その日、コーチからの予期せぬ要求に直面していた。

「渚、お前も見た通り、このチームでは短い髪が規律の一部だ。入学する前にベリーショートにして来い」とコーチは言った。

家に帰ってからも、その言葉が渚の心に響き続けた。「どうしよう…」彼女は鏡の前で自分のロングヘアを何度も撫でながら、涙をこらえることができなかった。

翌日、渚は重い足取りで地元の美容室へ向かった。入店するなり、美容師が明るく迎えたが、渚の目には既に涙が溢れていた。

「渚ちゃん、どうしたの? 今日はどんなスタイルにするの?」美容師が尋ねた。

渚は声を震わせながら、「ベリーショートに…してください」と言った。その言葉は彼女にとって、大きな決断を意味していた。

美容師は渚の様子に気付き、優しく言葉をかけた。「大丈夫。渚ちゃんに似合う素敵なスタイルにするからね」

彼女の長く美しい髪は、今までの自分の象徴のようなものだった。美容師が彼女の豊かな髪を一束ずつ慎重に梳かし、結び始めると、渚の心はさらに重くなった。彼女の目には既に涙が溢れていた。

渡部渚は美容室の椅子に座り、既に心は乱れていた。美容師が彼女の髪を慎重に扱いながら、長い髪の束を一つずつ切り始めたとき、渚の感情は一気に溢れ出した。彼女の泣き声は次第に大きくなり、やがて尋常ではないほどの号泣に変わっていった。

「大丈夫ですか?」と美容師が優しく尋ねると、渚は小さく頷いた。彼女の心は決して「大丈夫」ではなかったが、チームの一員としての決意が彼女を前に進ませていた。

美容師は最初の一束を切り落とした後、渚の右側の髪を短く刈り上げていく作業を続けた。しかし、渚の涙と声が大きくなるにつれ、美容師は彼女の心情を察して、はさみを置いた。「渚さん、大丈夫ですか?少し…休みましょうか?」と優しく声をかけた。

その時、渚は鏡を見て、自分の見たことのない姿に気づいた。右側はすでにベリーショートに刈り上げられており、耳が完全に露わになっていた。しかし、左側はまだ彼女のロングヘアがそのまま残っており、中途半端なスタイルになっていた。この不均一な姿に、渚の泣き声はさらに激しくなり、美容師は彼女を慰めるためにカットを中断した。

美容室は一時的に静かになり、美容師は渚の背中を優しくさすりながら、彼女の落ち着くのを待った。渚は涙にくれながらも、この奇妙な状態で自分がどう見えるのかを認識し、混乱とともにある種の現実を受け入れ始めた。

「ごめんなさい、こんなになってしまって…」渚はぐすぐすとしながらも謝った。美容師は温かく微笑み、「大丈夫ですよ。一緒に最後まで綺麗にしましょうね」と励ました。

その後、渚は少し落ち着きを取り戻し、美容師は彼女の髪型を完成させるため、慎重に左側のロングヘアを切り始めた。渚の髪型が整うにつれ、彼女の心も徐々に穏やかになっていった。

髪が短くなっていくにつれて、渚の顔が少しずつ露わになり、その新しい姿が彼女自身にも現実となって迫ってきた。美容師が最後の髪の毛を整え、渚のベリーショートが完成したとき、彼女は自分が思っていたよりもずっと違う人に見えた。

完成した髪型を見た渚は、新しい自分と向き合う勇気を持つことができた。涙を拭いながら、彼女は「ありがとうございます、こんなに短くなるなんて想像もしていなかったけど、新しい私にも慣れていきます」と言葉にした。

その瞬間、渚は自分の内面にも変化が訪れていることを感じた。長い髪を切り落とすことで失ったものもあるが、その代わりに得た新しい自信と、未来への一歩を踏み出す勇気を実感した。涙はまだ止まらなかったが、それはもう失ったものへの悲しみだけではなく、新しい自分への期待と希望の涙でもあった。。

美容室を出る時、渚はまだ涙を拭いながらも、心の中で何かが変わったことを感じていた。失ったものもあれば、得たものもある。これから始まる高校生活での新たな挑戦に、彼女は新しい自分と共に歩んでいく決意を固めた。

【鷲尾美奈子】

鷲尾美奈子は、西米学園の体育館を後にした後、母親と一緒に静かに歩いていた。彼女の心は重く、頭の中は複雑な感情で満ち溢れていた。

中学時代から大切にしてきたロングヘアを結んでプレーしていた彼女にとって、高校のバレーボール部でのこの新しいルールは受け入れがたいものだった。「美奈子、部活のルールは守らないといけないの。私たちも約束を守るのが大切だと教えてきたでしょ?」母親は厳しい口調で言いながらも、心の中では娘の気持ちを理解していた。「でも、母さん…私の髪…」美奈子の声は震えていた。彼女は自分の大切なロングヘアを思い、その別れが心から辛かった。

床屋に到着すると、美奈子はしぶしぶ店内に入った。床屋の主人が彼女たちを迎え、「今日はどのような髪型にいたしますか?」と尋ねた。母親が答えた。「スポーツ刈りにしてください。高校のバレーボール部のルールで…」床屋の椅子に座る美奈子の目には涙が溢れていた。「本当に切らなきゃいけないの…?」彼女の声はか細く、抵抗しつつも諦めの気持ちが混在していた。母親は美奈子の手を握り、「大丈夫よ。新しい髪型もきっと似合うわ。バレーボールでの活躍が楽しみね」と励ましたが、その言葉が美奈子の気持ちを軽くするには足りなかった。

床屋の主人がバリカンを手に取り、その振動する刃を鷲尾美奈子の頭頂部にそっと当てた瞬間、美奈子の身体はわずかに震えた。バリカンの冷たい金属が彼女の頭皮に触れると、美奈子は思わず椅子に深くもたれかかった。

バリカンが動き始めると、その特有の音と共に、彼女の長い髪が一瞬にして根元から刈り取られていった。「やめてください、お願い…」美奈子の声は絶望的で、彼女の抵抗は言葉になって漏れ出ていた。しかし、床屋の主人は母親の意向を汲み取り、黙々と作業を続けた。美奈子が頭を振って抵抗しようとしても、彼は慣れた手つきで彼女の頭を優しく、しかし確実に抑えつけた。

床屋の主人が慎重にバリカンを鷲尾美奈子の豊かな髪にあてがった瞬間、彼女の心臓は一瞬でドキリとした。バリカンが鳴り始め、その刃が彼女の頭皮に触れると、一束、また一束と長い髪が切り落とされていった。美奈子は鏡を見る勇気がなく、目を閉じてその瞬間を静かに受け入れた。

美奈子のロングヘアが床屋の床に静かに落ちていく音は、まるで時が止まったかのように響いた。かつては彼女の背中を優しく撫でていた長い髪が、今や無情にも床に散らばっていた。美奈子はその音を聞くたびに、自分の大切な一部が失われていく感覚に耐えなければならなかった。

バリカンが彼女の頭を滑るたびに、冷たい風が直接頭皮に触れる新鮮な感覚が生まれた。その感覚は美奈子にとって未知のもので、彼女は自分の身に起きている変化に戸惑いを感じながらも、徐々にその感触に慣れていった。

バリカンは美奈子の耳の周りを通り、彼女の首筋に沿って滑らかに動いた。鏡の中で、彼女の美しい髪が次々と床に落ちていくのを見て、美奈子は涙を流しながらも、もはや抵抗する力を失っていった。バリカンの音は彼女にとって別れのメロディのように響き、心の中で何かが壊れていく感覚を覚えた。

刈り上げられた部分からは、風が直接肌に触れる新しい感覚が生まれ、美奈子はその感触に身をよじらせた。彼女が最後まで抵抗し続けたにも関わらず、バリカンの作業は着実に進み、やがて全ての髪が短く刈り揃えられた。作業が終わり、床屋の主人が「大丈夫ですよ、とても清潔感があります」と声をかけても、美奈子はただぼうっと鏡を見つめることしかできなかった。彼女の中には、新しい自分への恐怖と、大切なものを失った悲しみが渦巻いていた。

最後まで抵抗し続けた美奈子だったが、彼女の前に広がっていたのは、避けられない新たな現実だった。「ほら、美奈子ちゃん、だいぶスッキリしたね」と床屋の主人が言うと、美奈子は鏡に映る自分の新しい姿に目を向けた。スポーツ刈りになった彼女の顔は、以前とは違った新鮮さがあったが、彼女の目にはまだ涙が残っていた。

家に帰る道すがら、美奈子は母親に「新しい髪型、慣れるまで時間がかかりそう…」と小さな声で言った。母親は優しく彼女の頭を撫でながら、「でも、これもすべてはバレーボールのためよ。新しい髪型で新しいスタートを切って、頑張りましょう」と励ました。その夜、美奈子は鏡の前で長い間自分の新しい姿を見つめた。失ったものの寂しさと、これからの挑戦への不安が彼女の心を満たしていたが、同時に新しい自分になるための一歩目を歩んだ。

~~~~~

春の訪れを告げる暖かな陽光の下、西米学園女子バレーボール部のメンバーたちは、新たな髪型で練習に励んでいた。体育館に響くボールの音、選手たちの掛け声、そして足音が一つになって、力強いシンフォニーを奏でていた。

チームの一員として、刈り上げベリーショート、坊主、スポーツ刈りと、それぞれが自分の想いを込めた髪型にしていた。耳をすっぽりと出し、制服の襟に髪が触れないように整えられた短い髪は、彼女たちの覚悟と団結を象徴していた。

練習が進むにつれて、彼女たちの間には言葉以上の強い絆が生まれていた。刈り上げた髪から感じる風の心地よさ、頭の軽さが、運動のたびに新鮮な感覚として彼女たちの意識を刺激していた。この新しい髪型は、プレーの一つ一つに集中しやすくさせ、チームワークの向上にも寄与していた。

トスとスパイクの練習中、一人のプレイヤーが見事なジャンプを見せた。彼女の頭頂部が光に輝きながら、力強いスパイクがネットを越えた瞬間、チームメイトから拍手と歓声が上がった。彼女の髪型はスポーツ刈りで、その勇敢さとプレーの美しさが、チームに更なる活力を与えていた。

サーブの練習をしている選手は、刈り上げベリーショートの髪型をしていた。彼女がボールを放つたびに、その瞬間の集中力と決意が、短い髪から伝わってきた。彼女のサーブは正確で、力強く相手コートに突き刺さった。

守備の練習をしている選手の中には、坊主頭の選手もいた。彼女は機敏にコートを動き、どんな強烈なスパイクも見事にレシーブして見せた。彼女の髪型からは、清潔感とスポーティな美しさが感じられ、守備に対する彼女の真剣な姿勢が伝わってきた。

練習の終わりに、彼女たちは一列に並び、汗に濡れた顔を互いに見合わせながら、笑顔を交わした。髪型は違えど、彼女たちの目には共通の光が宿っていた。それは、共に戦い、共に成長する仲間たちの証であり、これからの戦いへの確固たる意志の表れだった。
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女性が坊主にする恋愛小説を短篇集としてまとめました。

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