店にきた剣を買い取ったら、事件に巻き込まれました

Salvia

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第16話 出発

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 今日はガロンに呼ばれ、シャルともに書斎にきていた。


「失礼します」


「きましたのじゃ、父上」


 ガロンはかけていた眼鏡を外すとこちらを見た。相変わらず忙しそうだ。


「ああ、きたか。楽にしてくれて構わない」


 ガロンはアレスを見る。


「ここでの生活も慣れたか?」


「はい、シャル様やサラさん、リリアンさんにもよくしていただいております」


 慣れなかったこの生活もだいぶ馴染んできた。最初は不安の事も多かったが何だかんだいって人はやはり慣れる生き物なのだ。


「そうか」


 ガランは一つ息をはく。


「今日は石について進展があったのでな。その事で呼び出したのだ」


 石と言われて、アレスは体を揺らす。この生活の直接的な原因となった情報なのだ。懐に入れている赤い石が鈍く熱くなった気がした。


「皇都に石について確認をとった所返答がきた。現状、貴公の原初の石は仮契約の状態だ。本契約までには至ってないらしい」


「仮契約……」


「ほー、だからアレスのもつ赤い石はただ光るだけなんじゃな」


 アレスは一時期、文鎮代わりにしていた赤い石を取り出した。


「皇都の魔法学園には原初の石の研究機関があるのだ。そこでなら、仮状態の貴公の石は契約解除ができるかもしれない、という事だ」


「本当ですか!」


「ああ、ただ確証はない。あくまで可能性だ。それでも行くかね?」


「少しでも可能性があるのなら、試したいです」


 アレスは拳をギュッと握った。


「そうか……。なら私から魔法学園に文を送ろう」


「ありがとうございます!」


 ついに希望が見えたアレスには、その話は藁にもすがる気持ちだった。


「ふむ、そうだな。そういえばアレス殿は商人だったかな?」

 ガロンはいきなりアレスに向かってそう問いをかけてくる。


「はい。この街で商いをしております」


「では、取引をしないか?」


 ガロンはスッと何やら袋いっぱいに詰められた、丈夫な布袋を取り出した。


「もし赤い石の解除ができた際、その石を私たちで買い取ろう」


 ガロンは布袋をアレスに渡す。


「開けるがよい」


 渡されたアレスはそのズッシリとした小袋の紐を開けると、そこには白銀貨がみっちりと光り輝いていた。


「こ、これは」


「全部で1000万ダットある。白金銀貨100枚分だ」


 普段ほとんど見る事のない白銀貨を見てアレスはくらっとする。白銀貨特有の魔力を帯びた波動がいい知れぬ妖い力を感じた。


「それは前払いだ。解除ができてもできなくてその金額を支払おう。解除ができたさい追加で」


 ガロンはもう一つ同じ袋を取り出した。


「1000万ダット。白銀貨100枚追加で渡す」


 合計2000万ダット。白銀貨200枚だ。一商人のアレスにはどう頑張っても手の届かない値段だった。
それが今邪魔になっているこの赤い石を売るだけで白銀200枚、解除ができなくても前金100枚は確実に手に入る。どう考えても破格の取引だった。


「……」


「どうだ?」


「閣下、一つ質問よろしいでしょうか?」


「なんだ言ってみろ」


「この石を買い取った際、どのように使われるのでしょうか?」


「……それを貴公には教えられないな」


 ガロンは腕を組み、鋭い眼光を光らせる。


「わかりました。赤い石が解除された際にこの石をランウォール家にお譲りしましょう」


「そうか、それなら」


 ガロンは口角を上げる


「ただし、渡すのはシャルにです」


「ほう」


 アレスは前金の白銀貨100枚をガロンに返した。


「閣下にではなく、ランウォール家のシャルロッテ様に譲渡します。その代わり前金はいただきません」


「……」


「それでよろしいでしょうか?」


「……。良いだろう」


「商談成立ですね。それでは失礼します」


 そういうと、アレスは書斎をでた。


 廊下を歩いていると、バタバタと足音を響かせながらシャルが走ってきた。


「アレスーー!!待つのじゃ!」


 アレスは足を止め振り返る。


「やあ、シャル」


「はあはあ、やあシャルではない。何であんな事言ったのじゃ」


 シャルは少し戸惑ったような顔をする。


「うーん、何でだろう」
 

 ガロンが提示した商談はアレスにとって最高の話だった。あれだけの金があれば店も再建できて、借金も返せる。


「……どういうことなのじゃ?」


「正直、自分でも何故、あの条件のまま取引を飲まなかった、わからないんだ」


「……」


「ただ何となく、そのまま取引してはいけない気がした。商人の感かな」


「感って……」


 シャルはアレスに向かってもう!っと怒る。
 アレスは、今日一日シャルのご機嫌取りが必要だなっと考えるのだった。




「アレス準備はできたか?」


「ああ、できたよ。元からそんなに荷物がなかったからね」


 アレスは一度店に戻って、回収してきたいくつかの魔道具と回復薬を見せる。


「ふむふむ、見たことない道具がいくつかあるの。また今度教えてくれなのじゃ」


「うん。いいよ。シャルの方は準備終わった?」


「もう少し終わるのじゃ。この街から皇都までは馬車で2、3日かかるみただいのう。アレスは馬車で長距離を移動した事あるか?」


「何回か商品を仕入れる為に馬車を使用したことがあるね」


「それじゃあ大丈夫じゃのう。では馬車まで行くのじゃ」


 シャルとアレスは皇都まで足となる馬車の前まできた。


 貴族用の大きな馬車だ。大きな白い馬が2頭繋がっている。アレスとシャルは荷物を後部座席に入れた。


「シャル様」


 シャルとアレスが話しているとリリアンが現れた。いつもの鎧は着ていない。


 アレスはその時リリアンの鎧の下初めて見たなと気づく。


 思ってたより細身だ。普段の大きな鎧に見慣れていたからか、違和感がする。茶色の髪が肩にかかり少しカールしている。クリっとした目は年齢のわりに幼い印象を与えた。


「なんじゃリリアンか。今日は鎧を着てないんじゃな」


「はい」


「リリアンも準備は終わったのか?」


「それなのですが」


「ん?」


「……」


「なんじゃ、申してみよ」


 リリアンは地面に頭を擦り付け土下座する。


「しばらくお暇をいただきたいと思います」


「なっ……」


 シャルは驚愕で目を見開く。


「聞き間違いじゃろ?今お暇といったか?」


「はい……」


「どどどどどうしてじゃ!この前、魔冷庫に入ってたリリアンのプリンを勝手に食べたからか?それとも、大事にしてたリリアンの人形を壊してしまったのがいけなかったのか?」


「いえ、そういった理由ではありません。というかプリン食べたのやはりシャル様だったのですね」


「違うなら何故じゃ!」


「前回の戦いを覚えてますでしょうか」


「レイとの戦いじゃな。覚えておる」


「あの戦いで私は足手纏いでした。手も足もでなかった」


「そんな事はない!しっかり時間を稼ぎきったではないか」


「いえ、シャル様がきていただけなければ危なかったです。本来守るはずの主人に守られるなど騎士失格」


「……」


「ですから、しばらくお暇を頂いて武者修行に出たいと思います」


「武者修行とな」


「はい」

「うぬ……。意思は硬いのじゃな」


「……はい」


 シャルは一度だけ天を見上げ、一つため息をつく。


「はあ……仕方なかろう。わかったのじゃ、許可するのじゃ」


「!」


 リリアンは顔を上げる。


「ただし、文通は送る事。しっかりと何をしているのか定期的に連絡するじゃぞ」


「はい!わかりました!」


「アレス行くぞ」


 シャルはそう言うと馬車に入っていった。


「リリアン……」


 リリアンはアレスに向き直る。


「シャル様をよろしくお願い致します」


 リリアンは深々とお辞儀をした。


「逆に守られそうだけどね。うん。リリアンの分までしっかりシャルを見ておくよ」


 アレスはそう言うとシャルが入っている馬車に乗り込んだ。




馬車が動き出した。


「父上から、学園への紹介状をいただいのじゃ。あとこれをアレスにと」


 シャルからランウォールの家紋が入った指輪を渡される。


「これを持っていれば、ランウォールの客人という事が分かるのじゃ。無くすでないぞ」


「ああ、気をつけるよ」


アレスは大事そうに指輪をもつとポーチにしまった。


「学園か。どんな所だろうね。シャルは通ってたんだっけ?」


「いや、通ってはおらぬ。家庭教師に教えてもらっておったからのう」


「家庭教師なんだ。あれ?でもシャル貨幣の事すら知らなかったけど」


「座学は寝ておったのじゃ」


 シャルはドヤ顔をする。それを見てアレスは苦笑いを浮かべた。


「今回は二人か。リリアンがいないと寂しくなるね」


「いや、二人ではないのじゃ」


「えっ?」


 そういうと荷台からヒョコっと銀髪の少女が顔をだす。


「お邪魔してまーす」


「ええええ」


「あの家に置いておっても仕方ないの思ってのう。まあ妾の目の届く範囲に置いておくのが一番いいじゃろ」


 多分今頃、お屋敷は大騒ぎになってるなあっと思うアレスだった。
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