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第3話 : 出会 [3]

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学校が終わって祐希は近くの公園で弘を待つ。

祐希は自分と同じ制服を着た一人の男子学生が近づいてくるのを発見する。

身なりだけで自分が待っていたまさにその人だということに気づく。

これは弘も同じだ。

実際にお互いに会うのは初めてだ。

ぎこちなくならざるを得ない。

「はじめまして。」

「はじめまして。」

彼らは形式的な挨拶をしながら、少しぎこちない雰囲気を吹き飛ばそうとしている。

「こうしているよりは、どこかに行って話をしたほうがよさそうですね。」 彼が先に周りを見回して適当なところを探してみようと思う。

「はい、そうだと思います。」

彼らは踏切で信号を待つ。 弘は隣で黙って立っている祐希をちらりと見つめる。

彼らは通りの向こう側にあるファーストフード店に行く。

ハンバーガーを注文してからはぎこちなさに勝てず、彼が先に言い出す。

「一度もまともに小説を書いたことがないと言ったが、このように決心したきっかけと言えるものはあるのか?」弘の動機が気にならざるを得ない。

「きっかけか… ただ人生の目的もなく生きていた私に初めて面白さということを教えてくれたようです。 この小さな品物に初めて時間がたつのもわからずはまりました。 この小説には様々な背景の人物が出てくるじゃないですか? 誰かが何かのために毎日を生きていく話を記録した日記のような感じで、私はただこの日記を覗くのがとても面白かったです。 人の喜び、怒り、悲しみ、楽しさを込めた一つの物語がどんな方法であれ感情さえなしに毎日を過ごす誰かに面白さを与えることができれば、これは単なる記録物以上の価値があるのではないでしょうか?」

「ああ、そうなんだ。」率直で長々とした返事にどう反応すればいいのか分からない。

「それで私はこれが好きになりました。 一度もやったことのないことなので、何をどうすればいいのかさえ分からなくて未熟ですが、ただ漠然とこういうものを作りたくなりました。 文芸部で多様な人と同じ関心事を共有できれば、無料の学校生活の活力素のようなものになると思います。」

彼はそれを聞いて、自分が文芸部の一員になった日を思い出さざるを得ない。 その考えは彼を文芸部の部員として受け入れたくなる。

「それでですね、私がこの小説をもっと深く理解したいのですが、何か方法はないでしょうか? 私にその夢を植え付けてくれたこの小説の中の人物の心をもっとよく知ることができれば、きっと私が伝えたいテーマに対するインスピレーションを得られると思いますが…」

「それでは、その話の舞台になったところが直接行ってみてはどう? 似たような悩みがある時、その小説の実際の舞台になったところで気を引き締めたんだ。 彼らの境遇に移入してみれば、きっと何か感じることがあるはずだ。」自分が以前に体験したことを考えると、彼の心境に深い共感が生じるしかない。

「いい考えのようですね。」そうでなくてもそこに行ってみたかったが、いざ祐希がそう言ってくれると心を固めることができる。 彼らの人生を深く感じ、栞奈にきちんと答えてあげるためだ。 もしかしたら、その答えというのが彼が直接表現したい話かもしれない。 

「それでは計画を立てるのがどうなのか?どうせ小説に使う霊感を得るためのものだからあえて先送りする必要がないじゃないか。」

それでは私が一度考えてみて詳しい計画は携帯メールでお送りします

「そうだね。好きなようにしろ。 信じて従うよ。」

彼らは初めての出会いをこのように終える。

一方、栞奈はやはり望んだ答えを得られなかったのが残念だ。 弘の答えならいいインスピレーションを与えることもできると思った。 夢を探してさまよう人に感銘を与える小説を書こうと思う。 これこそ高校生によく似合うテーマだ。 いざそう考えると、昔の足跡をそのままついて行きたくなる。 故郷に帰りたくなる栞奈も、その小説のための旅行にふさわしい友達が心の中ですでに決まっている。

翌日、栞奈は学校に着いてからは弘に話しかける。

「今週末、もしかして時間がある?」

「なぜ?」昨日栞奈ががっかりしたことを考えると、慎重にならざるを得ない。 その質問に隠された本当の意図が何なのか分からなくて首をかしげる。 一日で突然変わった彼女の表情、行動、話し方。 すべてが慌てずにはいられない。 ただ時間があるかを尋ねるのではなく、時間がなければならないという話し方だ。

「私と一緒に旅行に行く?」

「どこへ?」彼女の突然の提案に戸惑う。 予想外のことを言うだろうと思ったが、昨日初めて会った祐希から旅行提案を受けてすぐ翌日にこんな話を聞くと、何か関係があるようにも感じられる。

「それは秘密!心配するな。いいところだから!」その場所を言ってしまえば、きっと旅行の楽しさが半減するだろう。 知らないまま行ったほうがずっとましだ。

「ところで私は週末に約束があって行けなさそうだけど。」 彼は困らざるを得ない。 彼女についてもっと深く知ることができ、彼女が本当に望む答えを見つける機会だと思っているにもかかわらず、その提案を受け入れることはできない。 つい昨日祐希との約束とこの約束を天秤にかけてみるが、二人ともとても重要でどちらかを破ることができないので、ただ先にした約束を守ることにする。 このまま断れば、他のことは知らなくても約束が重なって生じる困った状況は避けられる。

「なぜ?」彼女はその答えに失望せざるを得ない。 あまりにも突然の提案だと思っていたので、彼が中途半端な反応だけを見せるのが少し理解できるが、彼も内心その旅行を歓迎すると期待した。 明らかな根拠がある一種の信念であり、その根拠はすでに彼が知っている。

「すでに旅行の約束がある。」断ることにしたので、断固とした口調で余地を残さないようにしている。

「ああ、そうなの?残念だね。」単純に関心がないのなら、直ちに駄々をこねてでも連れて行こうとしたが、約束があるというからどうしてもそうはいかない。 これが彼を困難な状況に陥れるだけだと知っているからだ。

単純な合理化に過ぎないが、旅行の目的を考慮すれば一人で思い出を振り返ってみた方がむしろましだ。

一方、紗耶香は家に帰ってきてから好奇心がさらに大きくなり、変な妄想ばかりする。

紗耶香は祐希と桃香が新人をこんなふうに選ぼうとするとは想像もできなかった。これは紗耶香にとって突然の決定だった。  祐希もそのように争ったのが申し訳なかったのか、紗耶香にこの争いに関して相談し続け、紗耶香はそのような祐希のためにせいぜい和解する機会を作ったが、いざ紗耶香の努力が状況を予想できなかった方向に流れるようにした。 心配せざるを得ない。 祐希と桃香はそのように勝手に決めておいて、紗耶香には物事がどうなっているのか一言も言わなかった。 紗耶香は自分が好意的にしたことがこうなると知っていたら、その時なぜそのような非難を受けたのか悔しく感じる。 今日一緒に下校する途中にその理由を聞こうとしたが、やることがあって先に行ってみるという一言だけ携帯メールで残してさっと行ってしまった。


紗耶香はもう我慢できないかのように祐希に先に電話をかける。

「もしかして今週末に時間がある?」紗耶香は祐希が電話に出るやいなや本論を持ち出す。

「今週末?なんで?」

「ただ退屈で。以前せっかく一緒に遊びに行ったんだけど、いろいろ気になってちゃんと楽しめなかったじゃない? また今回やることになった賭けについて聞きたいこともあるからね。」

「あ…でもだめだと思う。」

「何で?」

"うちの文芸部に入る候補と約束があるんだ。」

「もう決めたの? 早いね。それで?週末に会うことにしたの?」やはりこういうことを決めたのに一言もなかったということに気分を害するが、努めて平気なふりをする。

「一度会ったんだけど、何か適当なインスピレーションが 思い浮かばないって言ってた。 霊感のための旅行に行ってみたいと言っていたよ。」

「あ… そうなの。」

「うん。だから時間を空けるのが少し大変そう。」

「それなら仕方がない。 その候補は誰? その女の子、結局見つけたの? 入ることにしたの?」

「いや、あの子じゃない。」

「どうして?結局、あの子を見つけられなかったの? うちの学校の生徒なのかどうかも知らないんだよね?」

「まあ… 似たような理由というか? とにかくあの子じゃない。」

「あ… 残念だね。」

「しょうがない。 それでもまあ大丈夫。 候補を一人探しはしたので。」

「そう?大丈夫?」 どうやって知り合った人なの?」

「私が見つけた人ではなくて。 うちの文芸部に入りたいと先に連絡をした子だよ。」

「それで、その子に決めたの?」

「うん、そういうことだよ。」

「あ…そうなんだ…」

「何で?」

「いや、ただうまくいっているか心配だからね。 そもそも望んだ和解方式はこういうものではなかったし。 何か気が抜けるじゃん? 新入部員を誰を選ぶかこんなに適当に決めたら、結局桃香と喧嘩したことが何の意味もないんじゃない?」

「適当だなんて…誰でも選んだとは言えないのが… こちらなりに事情があるからだよ。」

「どういう事情?」

「ただ話すのはちょっと複雑なことがある。」

「だからずっと秘密にしておくの?」

「お前らしくないのにどうしてそんな心配をするの? 何かあったの?」

「いや…私も厳然と部員なのに、私たちの部に誰が入るかについてあまりにも知らないようで。 教えてくれないし。 少し寂しかったんだから。 気になるし。」

「今望むかどうかに関係なく、結局後になれば会う人じゃない? 文化祭の時に会う人じゃない? そして…部員になるかもしれない人だし。」

「ずるいね。分かった。」

「私にはわからない。」

「ずるそうですね? よし、わかった。」紗耶香はそのように電話を切る。

その日以後、数日間何が起きているのか一人で考えてみるが、適当な答えが出てくることはない。 もしかしたら当然だ。

紗耶香は何の情報も得られないまま余計な疑いに襲われて頭の中だけ複雑になる。

時間は流れて週末になる。

「ここだよ!」祐希は嬉しそうに弘に手を振る。 他の人に邪魔を受けたくないので携帯の電源をしばらくオフにこととする。

「今日は本当に楽しみですね。」 弘も祐希を見つけて手を振る。

「よし。どうせ行くんだから、ちゃんと遊んでみよう!」

繰り返された日常から抜け出すと、青空から降り注ぐ暖かい春の日差しが迎えてくれる。

彼らは談笑しながらゆっくりと駅に行く。

祐希はいつも両親の手に引かれてばかりいるせいか、誰かが他の人とこのように旅行に行くのが不慣れだ。

彼らは電車に乗る前にトイレに行くことにする。
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