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第5話 : 決心 [4]

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紗耶香は何かわからないことに惹かれて、その微妙な雰囲気を桃香がその要求を承諾するものと受け止めているが、これは単なる錯覚だ。

「ああ… 私だけ悪い子にして自分は抜けるということだよね?」 桃香はその要求がけしからんだけだ。 紗耶香の計画が何なのか分からないけど、自分が操り人形のようになったような気分には耐えられない。

「この喧嘩を始めた理由を考えてみて。 果たして誰が取り持ったのだろうか? 仲直りしようとする賭けではなかったの? こうやって私たち2人の間に喧嘩をつけようとするじゃない? 何が欲しいの?」 桃香は自分がこれまで小説のために築いてきた信念のために真剣な態度で賭けに臨むが、いざ紗耶香がいたずらをしているような気がする。

「それは…」紗耶香は何とも言えない。

「私に電話をしてそちらの新入部員として入ろうとする子が誰なのか先に問い詰めたのはお前じゃないか? だから教えてあげたの。 ところで、あなたが聞いてもいないのに、私が先にあなたに電話して教えたと?」桃香はこの時がチャンスだと思っては言い続ける。

「そんな意味じゃないって!」紗耶香は声を高めて強く否定する。

「そういう意味じゃなければ? こんな悪質な仲違いに遭ってその元凶となる罪まで被ったのに、理由さえ知らずに受け入れなければならないの? 一生会わない人でもなく同じ部員なのに、後で私のところに来てこれを問題視して問い詰めれば、その時は何と釈明すればいいんだろう?」ただ紗耶香を信じて他のことは全部差し置いておくことができるが、祐希との葛藤がさらに激しくなるのは我慢できない。 どんな理由であれ、結局このようなことになったら何の意味もない。  取り返しのつかない結果を後悔する行為に過ぎない。

「私が後で言うよ。 でも今はダメだよ。 先に調べたいことがあるんだ。」紗耶香もやはり桃香に劣らず頑固だ。 紗耶香の立場でもこれだけは譲ってあげられない。

「一度だけ知らないふりをしてくれ。 私が約束するよ。 後でちゃんと釈明する。 きっと君も後で私の気持ちを理解する日が来るだろう。 あなたを心から信じていたから、私がこうしようと決心したの。 私たちの間に対する信頼がなかったら、どうして私がこのような決定をする勇気を出すことができただろうか?」ここまで話したのに桃香が受け入れられないと言えば、ただひざまずいて祈るしかない。 紗耶香は自分が最善を尽くしたと思う。

二人は黙ってお互いを見つめる。

桃香が先にため息をつき、静寂を破る。

「分かった。約束は必ず守らなければならない。」桃香は仕方なく一度受け入れることにする。

「約束?」紗耶香は首をかしげる。

「そうだね、後でその意味を話してあげるという約束。」桃香は自分がまだ心を開いたわけではないと断言する。 彼女はこれをもう一度はっきりさせる。

「分かった!誓う!」長く切実な説得の末に言葉が通じたということを発見し、顔が明るくなる。 紗耶香は感謝の気持ちを込めて桃香の手をぎゅっと握って上下に振る。

「そして…もう一つ… 本当にその時になっても受け入れられないなら、私に何を言ってもいい。 喜んで甘んじて受け入れる。」紗耶香はもう一度真剣な表情で確固たる意志を表わす。

「そうだね。」桃香もやはり短く答える。

彼らがそのように会話を終える頃にバス停に到着する。

バスが到着し、彼らは同じバスに身を委ねる。

一方で学校に到着した弘は、引き続きどんなテーマで小説を書くか悩んでいる。

その時も栞奈がやってくる。

「何をそんなに熱心に考えているの?」彼女は彼がノートの片側に何かをたくさん書いているのを目で確認する。

「小説を構想しているのに… 適当なあらすじが思い浮かばなくて…」 彼は頭を掻きながら答える。

「あらすじ? 何の小説?」 知りたがらないわけにはいかず、彼の後ろから顔をぐっと突きつけて尋ねる。

「実はこの学校の文芸部に入ろうとするけど入部条件がちょっと不思議。 小説を書いてこの学校の学生たちから、学校の文化祭の際に、投票を受けるのだそうだ。 だから相手よりもっと多くの票を得れば 入ることができるんだって…」

「何だよ!」 彼女はそれを聞いてびっくりして大声で叫ぶ。 どうしてこんな重大な事実を平気で言えるのだろうか?

彼女の叫び声が教室に鳴り響いてはクラスにいるみんなの関心を引く。

「静かに… 静かに…」 彼もやはり耳元で鳴る叫び声にびっくりしては、指を口に近づけて声を低くしろと言う。

「あ、ごめんね… 興奮して…」栞奈は自分が教室にいるすべての生徒の注目を集めたというのが恥ずかしくて声を低くする。 弘は目の前に自分の相手がいるという事実を知るはずはないが、いざ弘が意図せず栞奈に対決相手が自分だと表わしたも同然だ。

「なぜ?」もちろん、数週間前までは小説に無関心だった弘が突然こんなことをするというから栞奈の観点からは驚くべきことだが、いざ弘はこれがそんなにすごいとは思わない。

「いや…ただ…」 栞奈は自分の相手が誰なのか内心気になったが、このように突然知り合ってびっくりせざるを得なかった。 想像すらできなかった。

「これがそんなに興奮するほどすごいことなのか?」彼は首をかしげながら尋ねる。

「それでいいものを見つけたの?」彼女は平気で彼に接そうとする。

「いや… それで悩んでる。」 彼はやはり何も知らないかのように淡々と答える。

「そうなの?」彼女は彼がこの事実を知ったら全く同じ反応を見せると思う。

「うん。それで今日この文芸部の部員に会うつもりなんだ。 私を候補に選んだ人が何か私にインスピレーションを与えてくれる人だと言って、ただ会ってみようと思う。 特に期待はしていないんだけど··· それでも気になるから。」

「あ… 本当? また別の部員?」 また別の部員だなんて。 彼は彼女の興奮をさらに刺激する言葉を平気で吐き出す。 彼女も今すぐこれが誰なのか見たいが、努めて落ち着いて答える。

「うん。」

「うん!」彼女は彼ともっと長く話すとその事実がばれそうだ。 ぎこちない会話を早く終えて自分の席に戻ることにする。

いつもと大きく変わらない一日が過ぎ、約束の時刻になる。

弘は簡単に自分の荷物を整理して待ち合わせ場所に行こうとする。

栞奈はランドセルを包み,教室の外に出たときから通りを開けたまま慎重に追いかける。

彼がどこまでこんなに行くつもりなのか、彼女が焦り始めた頃、彼は公園に到着する。

彼の足取りが止まり、彼女もやはりここにその約束場所だと直感する。

そこでは同じ制服を着た少女が誰かを待っている。

彼は初対面で先に話しかけなければならないというのが少し不慣れだが、彼女がまさにここで自分を待っているその部員だと直感する。

「あの、もしかして… 文芸部員?」彼が先にこっそり話しかける。

「あ!お前があの子が言ったその新入だな?」彼女は突然顔に顔色を変え、まるで元々知っていた間柄でもあるかのように親しく近づいてくる。

「ええ… まあその通りですね。」

「そうだね!お会いできて嬉しいよ! 私は紗耶香。」

「私は弘と申します。 お会いできて嬉しいです。 私に小説を書くインスピレーションをくれる人だと聞いたんです。」

「ああ… そう誘引したんだ。」紗耶香は祐希が弘を呼び出そうと何を言ったのか内心気になったが、いざ知ってみると自然にうなずけるようになる。

「誘引?どういう意味?」彼は首をかしげる。

「大したことないから気にするな。」 彼女は彼ににっこり笑う。

「とにかく何かインスピレーションを得ようと出てきたの?」いざ紗耶香がこういう約束をしたわけではないが、いざ祐希がそのようなことを言ったので、自分が何か弘がインスピレーションを得るのに役に立たなければならないという漠然とした責任感が生じる。

「実は私も特に期待はしていなかったんです。 ただ同じ部の部員になる人だという話を聞いたら気になって出てきました。」 彼もやはりこれが相手に余計な負担感だけを抱かせると知っている。

「そう?」

「はい。」

「それでは… 負担がないね。 目的が一脈相通じることだよ。 僕は特にインスピレーションを 与えたりする人じゃないんだ。 ただ誰なのか知りたくて見に来たんだから。」たとえとても短い時間だったが、彼女は自分が余計な悩みをしたと思う。

「気になることがいくつかあります。」弘はこれが古い疑問を解決する良い機会だと思って絶対見逃せない。

「ちょっと待って!」と彼女は突然手のひらを伸ばして彼の言葉を切る。

「ちょっと待って。」

「私たちはちょうどお互いに初めて会った仲じゃない?」

「はい。」

「私たちはお互いをゆっくり知っていく必要があると思う。」

「はい。」

「お互いに初めて会ったこの瞬間から質問を吐き出したら不便でぎこちないだろう?」

「はい。」

「よし!よし! だから私たちお互いに3つだけ聞いて別れよう! 第一印象を判断するのに質問3つで十分じゃない? 私たちが縁になって今度会う時に言いたいことを残しておこうということだよ。」

「はい。」

「それでは… 先に一つやって。 思いやりのしるしだよ!」

いざ聞いてみろと言うと、すぐに一つが思い浮かぶ。

「うーん… 私が誰かと競争して勝ってこそ、文芸部に入ることができるんじゃないですか。」

「そうだよ。」

「ところで、私はまだその相手が誰なのか分からないんですよ。」

「あ…それが最初の質問?」最初から困った質問だ。

「はい。」

「これは私もまだ分からないから答えてあげられない。 ごめんね。元々は桃香に知らせてくれと言ったが、あまりにも肌寒い人なので、適当な機会がなかったんだ··· 悪い人ではないのに。」 先に提案したのに、いざ最初の質問からきちんと答えることができないのが申し訳ないだけだ。

「あ、そうですか?」それを聞くと思い出す一人がいる。 ひょっとしたら思い出す人が彼女しかいないのかもしれない。

「あ…桃香が誰なのか知らないんだね。」

「いいえ… 分かる気がするんですが…」 弘が絶対知らないはずがない人だ。 彼がこうすることに決めたことに多大な影響を及ぼした人だ。

「分かると思う?」

「はい。とにかく彼女が指名した候補が私が相手にして勝たなければならない相手だということですよね?」弘が今すぐ知っていることはこれしかない。

「そうだ!そうだ!」
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