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そう、だから初乳は大事!
しおりを挟む侍女のお仕事着を着たマリーヌが真っ白な布に包まれたオスカーを抱き私の部屋に恐る恐る入る。
「バネッサ様、オスカー王子をお連れしました…」
マリーヌは私の実家、プラント侯爵家から連れてきている専属侍女で、今はモーリスの補助も兼用している。
つまり私に仕えて長い彼女はそれだけ私の我儘に振り回されて来た人でもあり完全に怯えている様子だった。
「マリーヌ、ありがとう」
早くオスカーをよこせとばかりに両手を広げてマリーヌに言うと彼女は目をまんまるに見開いてポカンとしている。
「マリーヌ?」
私が再度呼びかけると、ビクッとしたマリーヌは恐る恐るオスカーをベットに座る私へ差し出した。
「バネッサ様が…ありがとうなんて…」
小さい声でブツブツ呟くマリーヌ。
ちょっと!聞こえてるからね!!
そんな事よりもと、ようやく手元に来た息子のオスカーを見る。
ふわふわな髪の毛は金色で、瞳は眠っていて見えないけど、多分王家の証の紫でしょう。
すーっと通った鼻筋につぶらなくちびる
いやぁこれって…
控えめに言っても天使でしょ!
マジで羽根はえてるんじゃね?
おててもぷにぷに!ほっぺもぷにぷに!
可愛いっ~可愛いが過ぎるっ!
と私の脳内はリオのカーニバルのごとくお祭り騒ぎしていたのに
「バネッサ王妃もうよろしいですか?」
モーリスの言葉に一時停止した。
すかさず私の腕の中からオスカーを取り上げようと手を伸ばすモーリスからオスカーを隠す。
「ダメよ!オスカーに授乳させなきゃいけないでしょ」
すると今度はモーリスが驚いた様に目を丸く見開いて私を見る。
「新生児の時はまだ少しの量しか飲めないのよ。だから2、3時間おきにこまめに授乳しなくちゃいけないのになぜ私から引き離すわけ?」
ベテラン保育士(自称)をなめんなっ!
と言わんばかりの勢いで反論すれば、今度はマリーヌまでも驚いている。
「たしかにその通りでございますが、私共でお世話させて頂きますので心配はごさいません。」
モーリスがまた感情を見えない顔に戻って答える。
どうやらこの世界にも粉ミルクの様な人工乳が存在していて、基本的には貴族の奥様方は自ら母乳を与える事は無く、乳母や侍女が世話をするのが当たり前の事なのだとか…
この国の王妃である私も当然乳母に任せると思われていた様だけど…
そんな事知るか!!
私はこの作品の作家だけどそんな細かい設定まで決めてないし、そもそも作中のバネッサと違って私はこの天使を自分で育てたいのだ!
「モーリス、オスカーには私の母乳を与えます。そもそも出産後1週間くらいまでの初乳は必ず与えなくてはいけません!」
「初乳…でございますか…?」
モーリスでもわからない、この世界では知られていない事なんだと悟った私は力強く力説した。
「初乳の中には高濃度タンパク質とかミネラルとか、とにかく栄養が豊富で少ししか飲めない新生児でも充分なのよ。それに何より免疫力をつける為にも絶対与えるべきなの!感染症や黄疸からの抵抗力がついて結果健康な子になるの!だから初乳は大事なの!」
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