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初乳!これ大事!!
しおりを挟む少しウトウトとして、胸の痛みに目が覚めた。
んん?
ここは何処だ??
ふかふかのベットに黒いレースの天蓋カーテン…
全くもって見覚えはない… はず…
その時、控えめな音のノックがした
「どうぞ」
条件反射で返事をするとそっとドアが開き、ひとりの女性が入ってくる。
「バネッサ王妃、御目覚めでしたか…」
あ…
その声を聞いて彼女は私の股の間から話していた年輩の女性だと気がつく。
そうか、ここはあの小説の中だった…
「おめでとうございます。元気な御子でございました。」
あまり表情を変えずに祝辞を述べるこの女性は夫、レオナルド陛下が妊娠してからの私、バネッサ王妃につけた産婆兼乳母のモーリスだ。
作中のバネッサは自分の子供になど少しの興味も示さなかった。
じゃあ何故産んだのかって話しだが、夫であるレオナルド陛下の気を引きたかった事が1番であり、しかし妊娠中からたいした結果が得られなかった為に、出産後は既に興味を失っていた。
そうバネッサは実はレオナルドを深く愛していた。
元々の我儘で傲慢な性格から寵愛を得られないバネッサのレオナルドへの愛情は歪んだ形で執着となり、近い将来出逢ってすぐに愛される聖女への強い嫉妬へ繋がる。
どんな策を講じても手に入れれないと悟った時にバネッサは隠していた能力でこの国を崩壊しようとする。
どうせ自分の物にならないのなら壊してしまえと言わんばかりに。
そしてストーリーも終盤には大ボス化したバネッサをレオナルドと聖女が力を合わせて倒し、国と2人に平和と幸せが訪れめでたしめでたし…
と、大まかにはこんな内容だった。
そしてこのモーリスは全く我が子に関わらないバネッサの代わりに子供を護り育てる役どころだったはず…
「陛下から伝言がございます。」
視線を下に下げたままモーリスは淡々と話す。
子供の名前はオスカー。
ゆっくり休めと…
しかし現状あかりの記憶がある私からすれば、それこそ死ぬか生きるかの思いでやっと出産した妻を見舞う事もせず、伝言で済ませようとする夫に嫌悪感を抱いた。
なんならこの「ゆっくり休め」と言う言葉でさえ気を使ったモーリスの創作の様に聞こえる
こうやって立場が変わればヒーローもクズだわね…
「バネッサ王妃?」
なんの反応もしない私を不審に思ったのかモーリスが声をかける。
その声にふと起きた時からの胸の痛みを思い出した私は両胸を手でおさえた。
「私の赤ちゃん…オスカーはどこ?」
予想外の言葉だったのか、この部屋に入って初めてモーリスが顔を上げた
「別室で王宮医療士の診察を受けてから別の乳母がついておりますが…」
怪しむ様な視線を向けながらモーリスが答える。
ちょっと!
いくら傲慢なバネッサに対してだろうとその表情はあまりにも不敬じゃない?
一応は王妃よ私。
と、そんな事を思いながらも
「早くオスカーを連れてきて!初乳は大事なのよ!!」
と叫んでいた。
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