転生した王妃は親バカでした

ぶるもあきら

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ワタクシの憂鬱(モーリスside)

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ワタクシはモーリス=ディテール

伯爵家の長女として生まれて、18歳で子爵家の三男を婿に貰い約30年。
今ではディテール伯爵家の女当主でございます。

水属性を持つ我がディテール家は先祖代々王家の出産に立ち会うのです。
出産したばかりの母子を素早く後処理して清めて差し上げる為でございます。

その後、何代か前の当主様が大変優秀な方でそのまま乳母兼教育係を賜り、現在のワタクシの娘までそれが続いております。

ワタクシは今の国王、レオナルド陛下の末妹であるアリス王女様が16歳で成人される時まで教育係として仕え、その後は引退し、今は伯爵家当主としての仕事に専念しておりました。

それなのに…

確かにレオナルド陛下に呼ばれた時は嫌な予感はいたしました。

陛下の教育係も務めたワタクシは彼の性格を良く存じております。

陛下はお優しい…
悪く言うと優柔不断なのでございます。
何か悩み事や問題がおこるとシュンとした顔で

「モーリス…どうすれば良い?」

と相談されます。

今更ワタクシを呼ぶのは良い話では無いのだろうと想像に難しい事ではありませんでしたが、

ですが!

流石にバネッサ王妃に仕えて欲しいとは想像しておりませんでした。
しかも今すぐ、1日でも早くとおっしゃる。

バネッサ王妃はなかなか破天荒な方で、このままではお腹の御子の命が危ないのだと陛下に泣きつかれ渋々ながら現場復帰したのでございます。

結果、今はワタクシが引き受けて本当に良かったと思っております。

バネッサ王妃はお話しで聞いていた以上の方でございました。
到底ご懐妊されているとは思えない行動をされる方です。

暴飲暴食は当たり前、馬車で買い物にも出かけるし、ヒールの高い靴を履き気に入らない使用人を蹴り上げたりもいたします。

バネッサ王妃に仕える事が王宮初仕事である娘に回らなくて正直安堵いたしました。

娘可愛さもありますが、娘では無理だったと思います。

そんな慌ただしい生活も10ほど月が過ぎた頃、お菓子をバクバク食されていたバネッサ王妃が産気づかれました。

ひたすら自分に甘く、痛みに弱いバネッサ様のお産は長時間を極め、このままでは母子共に危険と思い王宮医療士を呼ぶしか無いかと思われました。

しかしそれはお腹を切って御子を取り出す方法なのです。
お身体に傷を付けるのはバネッサ様の性格上荒れるであろうと思っていたワタクシは悩みました。

王宮医療士のクビが切られかねないのです。

「まだ時間がかかりそうです…」

ワタクシがその言葉を告げた途端にバネッサ様は急におとなしくなられました。

不味い!気を失われたか!!

ワタクシは慌てましたが、意外にもバネッサ王妃はヒーヒーフゥーと怪しげな呪文を唱え始めました。

するとなんと、ずっと停滞していたお産が急に進みました。

「そうです!王妃様良いですよ」

思わず声を掛けると呪文を唱え続けたバネッサ王妃は無事に御子を出産されました。

「産まれましたー!王子ですぅー」

助手についていたマリーヌが歓喜の声を上げると共にワタクシは御子とバネッサ王妃を清めました。

その間、バネッサ王妃は放心状態でございましたが、長時間のお産に心身共にお疲れでしたのでしょう。
すぐにお休みになられたのでございました。






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