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一方その頃国王は…(レオナルドside)
しおりを挟む僕の最近の日課は、1日の終わりにモーリスからのバネッサの報告書を読む事だった。
はじめは予想通りと言うか、相変わらずと言うか侯爵令嬢、今や一国の王妃とは思えない行動の数々。
僕の気持ちは益々離れ、すでに諦めの境地だった。
しかし出産後、オスカーが産まれてからは180度内容が変わった。
僕は到底信じられなかった。
でもモーリスが虚偽の報告書を上げるとは思えず、きっとバネッサの方が何か企んでいるのだと考えた。
だからバネッサの本性を1番良く知るギースに頼んで内偵に行って貰った。
しかし予想外にもギースにも理解不能だったらしい。
アレはバネッサとは別人だとか言い出したし、そんな事あり得ないだろう。
お披露目パーティーも拒否されたと言う。仕方なくもうしばらく様子を見る事にした。
その後の報告書も信じられない事が続く…
プラント侯爵の領地に水害があったと報告が上がっていたが、実はバネッサの助言で最小限の被害で済んだらしい。
どういう事だ?
その後、侯爵がバネッサに大量の肉を贈ったらしいが、王妃宮に仕える全員に振る舞った?
侍女も使用人も庭師も御者も料理人もバネッサを慕って仲良くしている?
僕の知るバネッサとあまりにも正反対で、まるで何か物語でも読んでる様な気持ちになる。
そう言えばオスカーを産んでから1度もここに乗り込んで来ないな。
前は毎日の様に派手なドレスを着飾って、これでもかと宝石を付けて、キツイ香水の匂いをプンプンさせながら僕に会わせろと怒鳴っていたのに。
気がつけば3ヶ月以上姿を見ていない。
バネッサに会いたく無いがために、産まれてから1度もオスカーにも会ってない。
モーリスからの報告書によると金髪で濃紫の瞳。
僕の幼い頃に良く似ているらしい。
あ、ようやく首が座ったとも書いてあったな…
そろそろ再度お披露目の打診をしても良いかも知れない。
母上に急かされてもいるし、父親としての役目を放棄している罪悪感もある。
モーリスに相談して、僕が会いに行ってみるか…と、深いため息をついた。
翌日、報告書を持って来たモーリスにお披露目の事でバネッサと話しをしたいと相談した。
「陛下、では明日の夕食でもご一緒されてはいかがでございますか?」
は?
なぜ食事までしなくてはならない?
過去の経験から、香水まみれのバネッサとの食事は苦行である事を知っていた。
僕は思わず顔をしかめる。
「バネッサ王妃はオスカー王子のお世話をほとんど自分でされています。夜中も何度も起きておられます。ワタクシども乳母はせめてお食事だけでもゆっくりしていただきたく、その時間だけはオスカー王子をお預かりしているのです。」
つまりは食事の時間しかゆっくり話せる時は無いとモーリスに言われて、僕は了承するしか無かった。
そして多分、口にはしないがモーリス自身もバネッサを慕っているのだろう。
夫としても父親として不甲斐ない僕を嗜めているのだと感じた。
産まれた時からこの国の第一王子として生きて、王太子になり、次期国王になるために学び、努力してきた。
恋愛など興味が無かったし、そんな暇も無かった。
僕に近付いてくる令嬢は下心が透けて見える女性ばかりで、嫌悪感こそあれど、好きになるなどありえない。その代表がバネッサだったのだか…
人を愛すると言う気持ちも正直よく分からない。
人間として僕は何か欠けているのだろう。
そんな僕だから、有益ならば政略結婚でもなんでも良かったのは事実だった…
ただ…
せめて普通の相手ならまだパートナーとして尊重できたのにと思わずにはいられなかった。
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