19 / 77
バネッサvsレオナルドround2
しおりを挟む私が席に付いた所で、食事がサーブされ始めた。
貴族の食事として一般的なのはフランスのコース料理の様に、順番に一品ずつサーブされるが、王族ともなると毒味係のチェックを通り次第提供されるのでどうしても冷めた料理になる。
でも私のいる王妃宮では関係ないけどねー
「トマトとブロッコリーのサラダと海藻スープでございます。」
いつも通り、サーブされた料理をロニーが説明してくれる。
「随分と温かいな…」
私が席に付いてからひと言も発しなかったレオナルド陛下がスープ皿に触れながら言った。
「温めてからすぐお出ししてますので…」
ロニーが答えると、陛下は驚いた顔をした。
まあ、そりゃわかるよ。
今まで仕方ないとは言えずっと冷めた料理食べて来たんだもんね。
「料理は温かい物は温かい内に、冷たい物は冷たい内に頂くのが1番美味しいのですわ…」
と、ロニーの言葉に補足する。
「陛下、ご安心下さいませ。私はどんな少量でも毒物が見えます。万が一口にしても取り除く事も容易い事です。」
そう言って温かいスープをひと口。
うーーん美味しい!!
バッチリよロニー
気持ちを伝えるためにロニーを見て微笑む。
それを見たロニーも安心した様に一礼して次の料理のために下がって行った。
「これは海の草か?」
スープに浮かぶ海藻を珍しそうに見ているレオナルド陛下。
海藻の事をこの世界では(海の草)と呼んでいるのは私も商人から聞いて知った。
「あら、よくご存知ですのね。」
とは言え貴族には無縁の食材。
王様のレオナルドが知っていた事に驚いたのだ。
「ああ、船で隣国に行く事もあるからな…」
なるほど…
国王としての公務はしっかりやってるってモーリスも言ってたわねー。
と、さほど興味もないので曖昧に笑っておいた。
「しかし、食べれるのか?」
まあっ!またこの優秀食材を蔑ろにしましたわねっ!!
私は再び海藻の素晴らしさを語って聞かせながら
「それから髪の毛にも良いのですよ。」
と、付け加える。
「僕は令嬢じゃないから髪の毛は別に気にしないよ。」
苦笑いする陛下。
あまい…あまちゃんよ陛下。
「いいえ男性の方が大事なのです。陛下のお父様、前国王陛下はお年をとられてから髪の量が少なくなられたかと?」
陛下は私の言葉にハッとした顔をした。
「遺伝…親子は似るものでございますよ?陛下。」
思い当たる事があったのか、それからは黙々と口に入れた。
その後も淡々と食事は続き、珍しい食材や調理法はロニーに聞いたりしながら、陛下も食事を楽しんでいる様子だった。
食後に陛下には紅茶、私には先日やっと出来上がったたんぽぽ茶が出された。
これは、ある日庭師のダリルがくれた花がたんぽぽだったのを見て私は歓喜した。
この世界にもあったのねー!!
たんぽぽの葉を洗ってから干して、煎ったものが茶葉になる。
これはノンカフェインの上に母乳の出が良くなる魔法のお茶なのだ。
「珍しい茶だな?」
私のカップを見て陛下が言う。
確かにたんぽぽ茶は香り高いわけでもないし、正直高級品ばかり口にしてる陛下には合わないだろう。
「ずっと探してたお茶なんです。」
そう返事してひと口飲んだ。
まぁ素人が作った物だし、そう美味しくはない。
でも母乳の為、天使の為。
他にも何か探してるのか?と聞かれたから見た目や特徴を教えながらお米を探していると話した。
「ん?ライスとか呼ばれてる物か?」
おおーっと!
そうですその通りです。
お米でもごはんでもライスでもOKです!
「たしか隣国で口にしたな?…」
欲しいのかと聞かれ、もうヘッドバンキングなみに頷く。
聞いておいてやると言うレオナルド陛下をバネッサははじめて男前ー!!と思った。
33
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
私たちの離婚幸福論
桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる