転生した王妃は親バカでした

ぶるもあきら

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謎の気持ち(レオナルドside)

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バネッサを見て思考が止まった。


「お待たせいたしました。お久しぶりでございます陛下…」

と挨拶してカーテシーをする…
僕は許可をするのを忘れ、たっぷり10秒は過ぎた。


「あ、ああすまない…」


遅れた自覚があった僕は謝罪してから席に促した。


いや、誰?
ギースが別人だと言ったが、今なら理解ができる。

見た目も仕草も全てが僕の知るバネッサとは違うのだ。

不躾だと思いながらも対面に座る彼女をマジマジと見てしまった。

高いワイン、脂まみれの肉、甘すぎるお菓子を一切口にせず、野菜や魚と変わった食材を好んで食べていると報告書で見たが、それだけでこんなに体型が変わるものか?

目がチカチカする様なドレスばかり着ていたのに、今日は上品な…ああ、あれはたしか母上のドレスだ。

甘える様なネットリした話し方も必要以上に距離をつめて纏わりつく行動もしない。なんなら普通の…いや洗練された令嬢の仕草だった。

そして気がついた。

はじめて名前ではなく陛下と呼ばれた事。
今まで煩わしい程に向けられていた視線が今日は全く無く、逆に目線を合わせようとしない彼女の冷めた目。

それらの意味する事とは…


王妃宮の新しい料理長だと言う若い青年が料理を運び説明をする。
スープから湯気が見えて思わず皿に触れた。


「随分と温かいな」


王宮では口にする事のない温度に驚いた。

バネッサは毒性がある物を見分ける事も毒物を取り除く事も出来ると言う。
闇属性の公表されている能力のひとつ毒魔法だろう。

魔法もそんなに優秀では無かったはずなのだがな…

今は毎日オスカーのために使っている事も知っていた。
これは報告書では無くモーリス本人の口から


「ワタクシには抱えきれません!」


と言って聞かされたプラント侯爵家の秘匿の複写魔法。
上位貴族のパワーバランスが崩れてもおかしくないほどの能力。

実際僕も扱いに困り、知らない振りをしている。

事実ならば未知で、恐ろしく強力な能力となるだろう。
若いと国王と侮られる事もある僕は…

(この能力を国政に使えるのならば)

などと考えたりもするが、現状は主にオスカーの尻を清める為に使っていると聞くと、なんだか笑えてくる。

僕はバネッサの事を何も知らないんだな。
いや、知ろうとしなかった、知る価値すら無いと思ってた。

若い料理長へ優しく微笑むバネッサを見て心臓がチクッと痛んだが、それすら知らない痛みだった。


その後も食事は続き、珍しく美味な料理に程よい会話。
想像すらしていなかった和やかな時間を過ごせた。

海の草を海藻と呼び、その効果を熱く語る姿も、ドレスや宝石では無く(ライス)の話しに頬を赤く染めて喜ぶ姿も不思議と好ましく思ったし、美しい漆黒の瞳に見つめられた時にははじめてむず痒い様な謎の気持ちになった…


さて、ここからが今夜の本題だ…
僕は君に伝えなくてはならない。



お披露目パーティーのエスコートをさせてくれと…



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