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第2の災害の予感
しおりを挟むレオナルドにエスコートされながら、王宮の高い所にあるテラスに出る。
その瞬間の大歓声に頭がクラクラした。
下の広場にはたくさんの国民が押し寄せていて笑顔で手を振っている。
あれ?私って国民にも嫌われてる王妃の設定よね?
不思議に思いながら国民に向けてスピーチをするレオナルド陛下を見た。
「ここに、我が国の第一王子であるオスカー=クラウドを披露する。」
モーリスがオスカーを抱いて陛下に手渡す。
今日1番の歓声が響き渡った。
時間にして5分くらいのお披露目に国民は嬉しそうに笑い、手を叩き歓喜した。
その時、私はと言えばテラスから見える遠くの山を見ていた。
その特に変わった事のない山が真っ赤に染まった姿に既視感があったからだった。
もしかして… もうその時期?
そんな事を考えていると、スピーチを終えた陛下にオスカーを手渡される。
あまりに多くの人々とその熱気、歓声に驚いて泣きそうになってるオスカーを見て慌てて背中を撫でた。
「手を振ってやってくれ…」
私の耳元に口を近づけて陛下が言う。
非常に近い距離の国王と王妃を見て国民は更に奇声を上げて喜んだ…
あ、国民サービスね。
そう理解した私はオスカーを右手に抱っこしながら左手で小さく手を振ったのだった。
そのままの流れでテラスから邸内へ入る。
国民へのお披露目はこれで終了した。
後は夕方になってから貴族に対してのお披露目パーティーだけど、割と時間が空くのだ。
この隙にオスカーへ授乳を済ませてお昼寝をさせようと計画していたのだが、さっきの山がどうしても気になって考え込んでしまう…
「王妃?どうかしたか?」
顔色の悪い私を気にかけてくれる陛下。
そう、このレオナルドと言う人は本当に優しい人なんだ。
国王としては致命的な程に…
この先聖女と出会って愛を知り、愛する人と国のために共通の敵であるバネッサと戦いながら強く頼もしい国王に成長して行く…
でも今は聖女ともまだ出会って無いし、私も敵認定されていないはずだから原作の愚かなバネッサが愛してやまない優しいレオナルド様なのよね…
「ええ…大丈夫です。あまりに国民に歓迎されていてビックリしただけです。」
と、当たり障りのない返事を返した。
すると、陛下は当たり前だと言う顔で、
「それは王妃は国民の救世主だからな。」
は?救世主?
バネッサは大ボスのはずですが?
どうやらプラント領地の水害の件をはじめ、海側の領地では海藻の出荷が増えて生活が豊かになったと言う。
また作物の育ちが悪い平地の領地には、たんぽぽがたくさん自生しているらしく王妃が愛飲しているとたんぽぽ茶が噂になり思わぬ収入源となっているのだとか…
「これら全ては王妃の功績だよ。」
陛下はそう話しエスコートで触れていた私の手を強く握る。
どう言う訳か、知らない内に自分のしていた行動が知れ渡っていた様だ。
原作でもバネッサの悪評は瞬く間に国民に知れ渡っていたから当然と言えば当然なのかもしれない。
それならば一層…
あの赤い山は回避しなければならないイベントだと私は強く思った。
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