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判決の時
しおりを挟む私達が王宮に戻った三日後、罪人エリーゼとパウロが王宮入りしたと報告が入る。
王宮に連行されたと言う事は前世のものとはほど遠いが一応は裁判的な事が開かれる。
といっても弁護士や検察がいるわけでは無くて、ただ裁判官であるレオが判決を言い渡すだけの裁判である。
参加者全員がレオの判決に反論する機会はあるが今回は平民二人だし、親や親族が参加するとは聞いていないから反論はまず無いだろう。
この話を私が聞いたのはレオとベットの中でだった。
レオは約束通り?夜、わざわざ王妃宮まで来て寝る様になった。
本来、国王と王妃が夜を共にする場合、専用の部屋が王宮にある。
そして国王の方から前もって日にちの打診があって、その夜に王妃の方から王宮の部屋に出向くシステムになっているらしい。
まあそんな打診は今まで無いから知らなかったけど…
それなのにレオの突然の行動に、侍女達が大慌てだったのは当然の事で、
当のレオは
「オスカーも一緒なのだろう?」
と、これまた当然顔。
まあ、たしかにそうは言いましたけど…
慌てて湯浴みや夜着を用意しようとする侍女達に、
「これはそういうことするわけじゃなくて、お忙しい陛下とオスカーの語らい時間なの」
と説明したが、レオが来る時間にはとっくに寝てるオスカーではあまり説得力もなく、生温い目で見られている。
まあ、そんな日が三日も続けばいい加減慣れてきた様子だけどね。
そして冒頭の裁判の話だった。
「バッサも参加するかい?」
レオに問われ、少し悩む…
本来ならガッツリ関係者だから参加するべきなのだろう。
しかも実際は父親と義妹の事だし、もう二度と関わる事は無いと思ってはいたが最後まで見届けるべきなのかも知れない。
私は参加するとレオに返事を返した。
翌日、王宮内にある裁判が開かれる場所へ足を運ぶ。
こんな場所あったのね…
バネッサは即日執行だったから知らないわ、やっぱりもう私作品のようでも私の作品ではないのだろう。
それもそうか、今からヒロインで聖女のはずのエリーゼに罰が下されるのだから。
中に入ると高い所に用意された席に案内されて座る。
既に室内にはたくさんの参加者である貴族の面々が座っていた。
えー?
平民二人の裁判にこんなに人が集まるの?
と不思議に思って後ろのゲンに聞くと、貴族にとって裁判の場は陛下の動向、考え方を知る格好の場所だし、なにより陛下に意見をして自分の名声を上げようと考える貴族もいるのだとか…
なにそれ面倒臭い!
ここにいる人達ってレオに意見する気満々な人達って事?
最後にレオが入って来て一番高い場所に座ると皆が立ち上がり一斉に忠誠の礼を取る。
「よい」
レオの掛け声でまた一斉に席に座った。
「これより罪人エリーゼと同じく罪人パウロに審議を下す。」
普段より低めの重みのある声でレオが宣言すると、縄で拘束されたエリーゼとパウロが連れて来られる。
遠目から見てもすっかりやつれているエリーゼとパウロに胸がチクリと痛んだ。
「大丈夫…?」
コソッと後ろから呟くゲンに大丈夫だと頷くけど、私の動揺はゲンにもバレバレだったのだろう。
前世からの色々な思いが頭を過ぎる…
私はいつも彼らと戦おうとはせずに逃げて来た。
あかりの時はそれで良いと思っていたけど、ここの世界で今の立場と状況ではそれは許されない事なんだと思う。
私も前世からの長い因縁にケリをつけるべきだろう。
判決の時が来たのだと改めて気を引き締めた。
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