転生した王妃は親バカでした

ウルトラマンで朝食を…

「不細工だわ…」

昨日、想定外の人物との再会に自分でもビックリすることほど泣いてしまった。

前世を通しても人前で涙が止まらなくなる事は初めてだと思う。

やっぱり歳を重ねて、自分も親になって子供を育てると気持ちの変化も涙もろくなるのも当然なのかも知れない。

いや、18歳で結婚してオスカーがもうすぐ２歳ってことは今の私はピチピチの20歳だけどね。

とにかく前、現世通して初めてと言って良いほどに泣いた私の目はパンパンだった。

そんなグズグズだった私に昨夜のレオは何も聞いてはこなかった。
絶対気になったていただろうが、ただ黙って側にいてくれた。

何か聞かれた所で何も話せない私からすればとてもありがたい対応だった。


「まぁー、いたいいたい？」


横で一生懸命に朝食を食べているオスカーがスプーンを振り回しながら言う。

なんと２歳間近になって、最近は2語文を話せるようになってきたのだ。


意志の疎通が出来るようになったわが天使オスカーは控えめに言っても、

可愛い…


「大丈夫でちゅよー」


思わず赤ちゃん語で返事をしながらオスカーの口元についたソースをぬぐう。


は！スプーンだ

オスカーの右手に握られたスプーンを見てふと思い出す。

前世で目が腫れている時は2本のスプーンを目にあててウルトラマンのポーズを取る事でマシになるんじゃなかった？

会社で同僚の子がやってた気がする！

私は自分の前にセットされているスープスプーンとデザートスプーンを両手に持った。

目の大きさが全然違うウルトラマンだが勘弁してもらおう、勢い良くスプーンを両目にあてた。

お、冷たくて気持ちいいぞ！

でもウルトラマンってツリ目よね？これじゃタレ目だわ…えーと…

と、どうでも良いこだわりを見せ、ツリ目にしようと角度を変える。

そんな私を見てキャッキャと笑うオスカー

うーん見えないけどきっと超絶可愛いのでしょう。


「バ、バネッサ様？何をしてるのでしょうか？」


急に呼びかけられて驚いてスプーンをはずす。
そしてそこにいる人物にもう一度驚いた。


「ハ、ハンナ？」


差し入れたお粥の食器を返しに来たついでに挨拶をしたいと言ってここに寄ったと言うハンナは私の目を見て柔らかく笑った。


「目が腫れている時はスプーンが良い訳では無くて冷やすのが良いのですよ。」


と、ハンナは手のひらを私の両目にあてた


「つめたっ…」


キンキンに冷えているハンナの手。
ああ、そうかディテール家の血筋だから水属性ね…

ほんの10秒ほど触れてた手が離れた時には確かにスッキリした気がした。


「バネッサ様、少しお話があるのですが…」


遠慮がちにに言うハンナに一緒に朝食をと誘う。
ハンナは戸惑っていたが、アリス王女の乳母であるハンナと2人で話す機会はなかなか無いだろう。
たまたま王妃に朝食に誘われた事にした方が自然だろうと言うと納得して同じ席についた。

侍女にハンナの分の朝食も用意してもらって下がらせた後でハンナの言葉を待った。

それでもハンナは思い悩んでいるかのように話を切り出さない。


「あ、あの…騎士様は…」


ようやく口にした言葉は、私の背後にいるゲンの事だった。

あー、ゲンを下がらせなかったから話ずらいのか…


「彼は大丈夫よ、息子だから…」


私の返事にハンナは目を丸くした。

そこで簡単にお母さんが出て行った後のあかりの話を説明する。
ハンナは辛そうな顔をして聞いていたが、ゲンがあかりの息子だと知ると、ゲンを見つめて微笑んだ。


「そうなのね…騎士様は、あかりの…あ、私の孫になるのね…」


ゲンにはハンナが私の母親だと説明していなかったが、私達の会話から推測していたのだろう。


「はじめまして、元太です。」


と、小声で自己紹介をした。


「まぁー！あちょぶー！」


そのタイミングで大人の話に飽きたオスカーが遊びたいと要求してくる。
私はゲンに頼んで、乳母sのところへオスカーを連れて行ってもらった。

その2人を目を細めて見送るハンナ…



「私は知らない内に前世にも現世にも孫がいたのですね…」


と、つぶやいた。