転生した王妃は親バカでした

ぶるもあきら

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星野 春香

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普通の平凡な家庭に生まれ、普通に大学まで進学し、一般企業に就職。

3年後には同期の男性と結婚して、星野春香と名前が変わる。
子供も授かり、普通の幸せな家庭を築いていた。

思い返せば、私はこれといった挫折を経験する事もなく淡々とここまでは生きてこれた。

が、そこから急展開だったと自分でも思う。
夫の浮気に気がついてしまったからだ…

結婚して3年、娘は2歳
私は人生初の挫折を味わった

挫折を知らない人はいざ挫折すると弱い。

私は狂ったように夫を責めた。

夫はただただ謝って、もう浮気相手とは会わないと約束してくれた。

愚かな私はその時は夫の言葉を信じたのだった。


一度裏切られると、心のどこかに疑念が生まれる。
ちょっとした事でも疑ってしまう自分が嫌で見たくないものは見ない事にした。

私には娘がいる…
この子の為にも幸せな家庭を築き続けなくてはいけないの

それからも夫の疑わしい行動は続く。
見たくないのに視界に入る。

会社の人と飲んで帰るとまたあの女のキツイ香水の匂いがする。

女の勘などという高度なものじゃない、バレバレなのよ…

ワイシャツに口紅の跡を見つけた時は破り捨てたし、財布から行った事のない店のレシートを見つけた時も握りつぶした。


馬鹿にしてる…
気がつかないとでも思っているの?
それともわざと気づかせたいの?

その答えはそんなに時間を置く事なく知る事になった。

浮気相手の女から私に電話がかかって来たからだった。

大胆にもその女は、夫と愛し合っているから離婚しろと言ってくる。

私も怒りに任せて言い返し、妻と浮気相手の不毛な言い争いは続いた。

でもそれに終止符を打ったのは浮気相手の女のこの言葉


「私、彼の赤ちゃんを妊娠してるのよ!」


頭が真っ白になった…
なんで?
浮気じゃ無かったの?
その女と新しい家庭を築くつもり?

どうやって電話を切ったのかあまり記憶にない。

ただこの時、私の心は完全に死んだ…


離婚も考えた

夫から切り出されたら多分離婚しただろう。

でも夫はまだ私が不倫の事実を知らないと思っているのか、何も言ってこない。

まだ2歳の我が子から父親を奪う事にもなるし、何より今まで平穏な人生だった私に幼い子供を抱えて、生きていく自信が無かった。

見ない事にしよう…
何も知らないふりをしよう…

離婚しない事が浮気相手への復讐にもなる…

そう思って約14年、私は過ごして来た。

その間も浮気相手の女からの連絡や嫌がらせは続いた。

子供が産まれた時はわざわざ写真まで送りつけてきた…

怒りに震えたが、やっぱり私は娘の為、自分の為に瞳を閉じた。

そんな生活で、知らず知らず私の心は病んでいき不調を感じるようになった。

ネットで調べて、夫と娘には内緒で心療内科に通院する事にした。
カウンセリングの先生と話をすると少し楽になれる気がして夫が会社、娘が学校へ行くと足げに通った。

そこである男性と知り合ったのだった。

彼は私より少し年上、奥様に先立たれてから心に穴があいたように喪失感に見舞われやっぱりカウンセリングに来ている患者だった。

はじめは待合室で度々会うから少し雑談する程度だったのに、お互いが気がついてしまったのだった。

彼は亡くした奥様を埋めてくれる存在が必要で、私は長い時間蔑ろにされて来た女としての自信をくれる人が必要

お互いが必要としている存在だと…


それからの私は考え方が180度変わった。
娘の為とは言えなんであんな男に執着していたのだろう…

離婚しよう。
あかりを連れて、あの男から解放されよう。
そう決めた時は久しぶりに晴れやかな気持ちになった。

でも…
人生なかなかうまくはいかないものね…

通院していた病院で気になる数値があるから検査をしようと言われた。

結果は女性特有の悪性腫瘍だった…

すぐにでも入院を勧められたが、少しだけ時間をもらった

もうすぐ、あかりの高校の入学式がある。
それだけは出席したい…


そしてあかりの入学式の後、私は夫とあかりに宛てた手紙と離婚届を置いて、家を出た足で入院したのだった。

本当はあかりも連れて家を出たかった…

でも病気の母親と2人ではあまりにもあかりに負担が掛かり過ぎる…


落ち着いたら迎えに行くと手紙には書いたが、いつになったら迎えに行けるのか、検討も付かなかった。


知り合った男性にも話さなかった。
奥様を亡くされて弱っていた彼に、追い討ちをかけるように私の病気の事など言えなかった。


こうやって私はひとり闘病生活をする事になったのだ…




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