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おとなしくしようと思いまして

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ムンプスの流行している領地をまわり、苦しむ領民を癒し続けて数日

残るは帝都のみとなりました。

ウェルとエリックも私の言った通り力が強くなってきて、今では喜んだ2人がノリノリで癒して回っている

それでも1日に2回は私に癒されてるけどね。



「ねぇ、勇者パーティーのメンバーって今帝都にいるのよね?」


どちらにと言うわけでもなくボソリと聞けば


「あー、そうだなそろそろパレードがあるんじゃないか?」


と、ウェル


「なんだ?アンもしかしてパレード見たいのか?」


と、続けてエリック

見たいわけあるかぁー

でもやっぱりね…
鉢合わせる可能性は低いけど出来るだけ近寄りたくないわ

とため息をつく私にエリックは何を勘違いしたのか


「はーん、さてはアンも勇者のファンなんだろ!」


はあ?
この私がロディオのファンだと?


どうやら、勇者人気は絶大でしかもロディオは見た目も麗しい。

魔王を倒して帝都に戻る旅路ではファンという名の女性達に囲まれる事も良くあったのだとか。


「なんだよ、ロディオに紹介してやるぞ?」


なんでやねん!
今更紹介されたくないわ!


「でも、勇者様と聖女様は恋人同士なのでしょ?」


何気なく言った私の言葉にウェルとエリックは顔を見合わせた後、ゲラゲラと笑い出した。


「なんだよそれ!どこ情報?」

「どちらかと言えばロディオは聖女から逃げてましたけどね」


はあ?
逃げるってなんで?


「いや、あれは逃げると言うか眼中に無いって感じだな…」


おいおいロディのさん?
あなた何しちゃってんの?


「ロディオは田舎に残してきた幼馴染みの事しか興味ないんだよ」

「そうそう!年中手紙書いては封筒にチュッチュしてたよなー」


Q.チュッチュとは?


「以前その子からもらった返事の手紙も胸ポケットにいつも入ってて、チュッチュしてたな」


唇を尖らせる仕草をするエリックを見てようやく理解する。


A. いやぁーー!!


私は自分が持っているロディオからの山のような手紙を思い返して内心悲鳴を上げた

あの封筒全てにチュッチュされてるの?

ちょっ何してくれてんの!!


青ざめる私を見て、ロディオにチュッチュする相手がいる事にショックを受けていると思われた私は2人に意味もなく慰められるのだった。


そしてとうとう帝都に入った。

さすがに帝都の端っこと言えど今までの領地に比べれは近代的な街ではあるが、ムンプスに感染した人が多いのか、感染を警戒しているのか、とても閑散としていた。

よし決めた。

わたしゃーもう手を出さないよ!
なんなら帰る!充分頑張った!!


「ねぇ、ここからはウェルとエリック2人でも平気でしょ?」


私の提案に2人は目を見開いて反論してきた


「何言ってんの?無理に決まってるじゃん」

「俺達だけじゃウィルスとやらは消せねーよ!」


えーーだって2人とも強くなったしー

ウィルスは消せなくても自然治癒するよー


悪足掻きする私の両手を2人に掴まれて身長差の激しい2人と私は宇宙人の様に連行されるのであった。

くぅーー
それならばプランBだ!

帝都では2人のカゲに隠れて引きこもる!
透明人間のように気配を消してやる!
私が帝都にいたという事実を隠蔽するのだ!!

別にロディオに会わなければ帝都にいようが構わないはずなのに、この時の私は

帝都=ロディオ=帝都にいちゃダメ

の方程式が出来上がっていた。


そしてそのあとの計画では、私はトラビス領にしばらく厄介になるつもりでいる。

だって色々忙しかったし、ロディオの帰りも異常に早いから村を出る準備なんか出来てないのよ。

パレードが終わって村へ行くロディオ

その頃私はドラビス邸に避難してケビン君と楽しく過ごし、聖女とロディオが帝都に戻った頃に村に帰ればいい

それならば…?
あれ?
わざわざ村を出る必要なんてないんじゃない?

お父さんともお母さんとも、クリスお兄様とも別れる必要まったくないじゃん!


先行きが明確になって、安心した私はあれだけ気配を消して透明人間になるつもりでいた帝都で、これでもかと癒しの力を使いまくり、ムンプスで苦しんでた人々に感謝されまくるのだった…



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