異世界呪われた救世主~異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす~

陽月純

文字の大きさ
100 / 105
第三章 女神と親友

第100話 ティバル族の集落

しおりを挟む
 ティバル族の集落ティバルにバラトレスト兵に連れて来られた俺たちは、族長の家に案内された。人の嘘を見抜くという族長が悪人では無いと言い切った事から、小隊長の態度が激変した。

「すまなかったな。お前たちのことを疑っていたが、族長殿があのように言っておられるのなら、間違い無いのだろう」
「いえ、分かって貰えれば構わないですけど、族長さんって俺たちを初めて見たのにそこまで分かるものなんですか?」

 疑いが晴れたのだから構わないけど、もし、族長が黒だと言っていたら俺たちは間違いなく殺されていたような気がする。

 気になって小隊長に質問をしてみれば、族長は<審理眼>という固有スキルを持っているらしく、善人、悪人の区別、虚偽を言っているのかが分かるとの事だ。戦闘力の無いティバル族が生き残るのに役立っているとの事らしい。

「凄いスキルだな。俺たちの世界にも欲しいよな」
「でも、怖いスキルだね。悪人って判定されたら、覆すのも厳しそう」
「いえ、私の<審理眼>は心底性根が腐ったような者しか、悪人判定は出ませんよ。盗賊達や殺人を起こしているような者達ですね」

 もっとも、軍人は戦時に相手を殺める事もあるから、悪人判定された者は、中々判断がつきにくいらしい。そんな訳で、漸く小隊長も俺たちの話を信じてくれる事になった。

「それで、ブラッド様の使者であるあなた達が何故このような場所に?」
「いや、何故ってフォレストパレスに向かっていたら、爆発音が聞こえて来たから、そっちに向かうと、サウザート兵との戦闘中だったんですけど」
「爆発音が聞こえて向かって来てくれたのはありがたいのですが、その……」

 小隊長の歯切れが悪い。
 何かおかしな所でもあったのか?

「皆様はサウザートの何処からこちらに入って来られたのですか?」

 族長が何か心当たりがあるのか俺たちの進入経路を確認してきた。

「えっと、サウザート軍に見つからないように、海岸沿いにやって来ましたけど、何か問題でもありましたか?」

 小隊長と族長が顔を見合わせ驚いている。

「海岸沿いだって!」
「そうですけど、そんなに驚かなくても」

 小隊長が首を横に振る。

「いや、驚くだろう。確かにそこからならここを通るか。だが、あそこは今、砂の悪魔が縄張りにしていた筈。よく無事に抜けられたものだ」
「砂の悪魔?」

 ミコトが聞き返すと、小隊長は頷き、砂の悪魔について教えてくれた。

「ああ、あれがそうだったのか……」
「無事に来れて良かったね……」

 俺たちの様子を見ていた族長が気を利かせてくれたのか、飲み物を出してくれた。

「どうやら、砂の悪魔に出会ったようですね。無事にここまで来れたようで幸いです。これを飲んで、心を落ち着かせてください」

 俺たちは、差し出された飲み物を口にする。

「おいしい!」
「紅茶みたい」

 色味は濃い抹茶のような色をしていたが、飲むと少し甘味を感じるお茶だった。しかも、何だか心が落ち着く気がする。

「御口にあったようで、なによりです」
「話を戻そう。あなた達は、ブラッド様からどのような依頼を受けて来たのか話せるかな?」
「ああ。このアルをデイジー様に先ずは会わせる所からかな」
「子竜を?」
「そして、セドニーは殺してはいけないということを伝えに」
「魔王セドニーを倒してはならないだと!」

 小隊長が怒鳴り声を上げる。

「それではこの戦争が終わらないではないか!」
「いや、アルをデイジー様に会わせた後は、セドニーにアルを会わせる事でたぶん戦争は終わります」

 小隊長と族長は首を傾げ、不思議そうに俺たちを見ていた。

「何を言っているのかさっぱり分からない」
「すみません。俺たちも詳しく説明出来なくて」
「僕が二人に会えばぁ、過去の記憶が蘇って、仲良くなるんだよぉ」

 アルが更によく分からないが説明をするものだから、二人の頭の上に? マークが浮かんでいるのが見ていて分かる。

「むぅ。全く分からん。とにかく、フォレストパレスに向かうのだな」
「はい」

 小隊長は徐に胸に巻いてある布に手を突っ込む。

「ちょ、何を……」

 そして、紙を一枚取り出した。

 何処に入れているんだよ! と突っ込みたくなったが、黙っておいた。ミサオの視線が怖い。

 小隊長は、気にすることもなく取り出した紙に何か書き込み始め、書き終わると再び胸の間から封筒を取り出す。

「お前のおっぱいは異空間収納でも持っているのか」

 ミサオが小声で何やら呟いていたが、聞こえなかった事にしよう。

「すまんが、これをデイジー様に届けてくれないか?」

 封筒を俺に差し出し、デイジーに渡すように頼まれた。

「別に構いませんけど、俺たちに任せていいんですか?」

 自分の部下ならもっと早く届けることが出来るのではないか聞いたら、急ぐものでもないし、俺たちが渡した直接渡した方が良いと言われた。

 これは、俺たちの事について何か書いているのだと俺は悟ったので、届けることにした。

「ところで、族長さん。ここに住んでいるティバル族の方は少ないのですか?」

 ミコトが族長に質問する。それは、俺も思っていた。建っている家があまりにも少ない。

「はい。このティバルには、私を含め二十八人程しか居りません」

 二十八人とはまた随分と少ないな。

「何分、私達は戦う力を持たない種族。モンスターに襲われたり、盗賊に襲われたりでかなりの人数が減りました。まだ、フォレストパレスにも何人か居りますが、全部で五十人にも満たないでしょうな」

 モンスターはともかく盗賊?

「盗賊にも襲われるのですか?」

 ミコトの質問に族長は首を縦に振る。

「ここにはそんなに金目の物がありませんから、不思議に思うのもしょうがないですな」
「あなた達は、ここに来たのは初めてなのか?」
「あたしはブラッドに連れられて一度だけフォレストパレスに行ったけど、亜人の人には会わなかったな」
「俺たちは初めてです」
「そうか。族長?」
「構いませんよ」
「彼ら亜人は、確かに数が少ない。人族の方が圧倒的に多い。何故、亜人族が人族の盗賊に襲われるか。それはな、慰み物として捕らえるんだ」

 ミコトとミサオの表情が引き攣る。

「何故……?」
「人族と亜人族では子が出来ないんだよ。でも、亜人族と人族と体の作りに殆ど差は無い。だから、な」

 小隊長が顔を俯く。

「分かりました。道中、もし盗賊を見つけたら、ぶっ倒して、囚われている亜人族の人が居たら開放しますよ!」

 俺の言葉に有り難いと手を握られた。小隊長からも戦争が無ければ盗賊討伐が本来の仕事と言われ助かると言われた。

 ここでやる事が増えたな。

 俺たちは、顔を見合わせ拳に力を込めるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...