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第三章 女神と親友
第101話 ティバル族と錬装武器
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ティバル族の族長、バラトレスト軍の小隊長との話が終わり、族長の家を出た俺たちは、だいぶ日も落ちてきていたため、ティバルに泊めてもらうことになった。
「盗賊の話を聞いて、何だか無性に腹が立って、しょうがないんだけど!」
小隊長から聞いた盗賊達の行為にミサオは怒りを顕にしていた。
「そうね。亜人種って言っても同じ人なのに、私も許せない」
ミコトもミサオの意見に同意する。
「明日からフォレストパレスに向かう道中は、<感知>で盗賊たちが居ないか確認しながら進もう。見付けたら、もちろん」
「ぶっ飛ばす!」
ミサオの気合いが十分だ。空回りしなければいいけど。泊めてくれるという家を訪ねるとそこには三人のティバル族の親子が住んでいた。
「やあ、いらっしゃい。狭い所ですが、どうぞごゆっくりしていって下さい」
「ありがとうございます。今日はよろしくお願いします」
俺たちは、家の人たちに挨拶をすると、食事の用意をしてくれた。
「悪いね。僕たちティバル族は野菜ばかりで、肉を食べないから、君たちには物足りないかもしれないよ」
「そんな事ないです。いただきます」
美味い! 確かに肉は入っていないけど、しっかりと野菜の旨味が溶け出したスープだ。
「美味しい」
「何これ。こんなスープ食べたことない」
二人もスープの美味しさに満足して、ガツガツ食べていた。
「あらあら、そんなに美味しいの? あたしも嬉しいわ。おかわりもあるから、沢山食べてね」
「ありがとうございます」
ミサオは、ティバル族の母親のある一点をずっと見ている。
「これ、沢山食べたらあんな風になれるのかな」
「え、う、うぅん。どうかな?」
「ミコトは良いよね。大っきいから」
またその話か。小隊長の胸を見てからそればかりだぞ。
「ミサオ、その辺にしとけよ」
「うるさい。男のくせにあたしより大きいからって……。はぁ……。言ってて虚しくなってきたわ。ご馳走さまでした」
ミサオは、スープを平らげると貸してくれた部屋に先に行っておくと食卓から離れていった。
「もう。ミサオったら……」
「はははっ。面白い方ですな」
ティバル族の父親がミサオを楽しそうに見ている。
「ねぇ、お姉ちゃんは何を怒っていたの?」
「ふふっ。何を怒っていたんだろうね」
父親が不思議そうにしている娘に答えをはぐらかした。ミコトも気にしないでと娘に答える。
「ところで、何故、ティバル族の方々は戦う力が無いのですか?」
俺が質問すると、父親は難しい顔をして答えた。
「そうだね。あなた達人族は職業に対して、装備出来る武器の種類が決まっている。僕たちティバル族は、まず、職業を持たない」
この世界に来て初めて職業の無いという話を聞いた。
「そして、職業が無いから武器が装備出来ないというわけですよ」
「まさか、確かに職業に合った武器しか装備出来ないのに、職業無しなんて」
「ですから、身を守る力が、戦う力が無いのです。これまでに剣や弓、槍など様々な武器を手に取っても弾かれてしまいました」
唯一、生きるために料理用の包丁だけ持てるが、武器として使用しようと思うと弾かれるらしい。何だか俺みたいだな。うん? まさかね?
「すみません。これまでに試した武器にナックルはありましたか?」
「ナックル? いえ、そのような物は。何ですか、それは?」
俺はもう使わなくなったスライムブロウを取り出し、渡してみる。
「これです」
「見たことも無い武器ですね」
父親はスライムブロウを手に取ってみる。
「おや? 痛みを感じない」
拳に嵌めると、驚いたことに装備することが出来た。
「おぉぉぉ、そんな。これは本当に武器なのですか?」
「はい。それは前に使っていた物で、今はこれを使っているのですが」
俺の<錬装>武器は、誰でも装備出来るということなのか?
「ミコト、これ装備出来る?」
「どうかな?」
ミコトが手に取ると、
「痛っ」
ミコトは、痛みを伴い、スライムブロウは弾かれた。
「弾かれたね……」
「つまり、これは」
「そうですね。ティバル族の方々全てかは分かりませんが、俺のナックルを装備出来るみたいです」
「わ、私にも家族を守る力が! 戦う力が備わるということですな!」
父親の興奮度が半端ない。無理も無い。これまでただやられるだけの立場だった者が、守る力を手にしたのだ。この世界では、力が無ければ守る事も出来ない。その力を手に入れる事が出来、自分の愛する者を守ってやれる。そう思うと興奮してくるだろう。
「今日はもう遅いですし、明日、この事は族長に話しましょうか」
「是非、お願いします!」
そして、俺たちは貸してくれた部屋に入り、休むことにした。ミサオは腹を立てていたのか、既にふて寝状態だった。
翌朝、俺たちは泊めてくれた家族に礼を言い、族長に昨日の話をするため、父親と共に族長の家を訪れた。父親がスライムブロウを装備してみせると、族長も驚きを隠せず、自身も装備を試す。
すると、族長も装備することが出来、族長は急いで大人の男性を集め、皆に装備を試させた。見事に全員が装備することが出来た。
「おぉ、これで私たちティバル族も自衛することが出来る」
元々、戦う力を持たなかったティバル族は、武器を持てても自衛手段にしか使うつもりはないと言う。
でも、盗賊に襲われた時、レベル不足で結果全滅なんて事があるかもしれないので、少しはモンスターを倒して、レベル上げをするように小隊長から注意を受けていた。
<鑑定>してみたら全員職業が格闘士という、職業に就いていた。俺の拳士とは違うらしい。既にアーツも使える人が数人いたが、これも俺が使うものとは全く違うアーツだった。
集落にあった使わなくなった鍬なんかを使ってアイアンクロー、アイアンナックルを二十組<錬装>で作り、族長に渡すと大喜びで感謝された。
その後、フォレストパレスに向けて出発した。
「さてと、アル、お前何か知っているんじゃないのか?」
「何をぉ?」
<空納>から出て来ると惚けたように答える。
「ティバル族が俺の錬装武器を装備出来る事とか」
「あぁ。それは、アスカが召喚された影響だよぉ。元々ぉ、遥か昔に、君の使う武器はこの世界に存在したんだよぉ」
「初耳だぞ」
「だってぇ、聞かれなかったもん」
こ、こいつ。俺の冷たい視線を感じ取ったのか、アルはスッとミコトの後ろに隠れる。
「怒らないでよぉ。もっとも、プリメラとブラッド。この二人の力が本体に戻った事が大きいのかなぁ」
アルの本体が邪神を封印した時に、存在が消えてしまったという事らしい。その封印の力が弱まり、再び力を取り戻した事で、存在を認識出来るようになったんじゃないかという事だった。歩いている途中、<探知>を使っていると見付けた。
「居た。盗賊だ。二人共、やるぞ」
「「うん」」
俺たちは、盗賊のアジトへと進路を変えたのだった。
「盗賊の話を聞いて、何だか無性に腹が立って、しょうがないんだけど!」
小隊長から聞いた盗賊達の行為にミサオは怒りを顕にしていた。
「そうね。亜人種って言っても同じ人なのに、私も許せない」
ミコトもミサオの意見に同意する。
「明日からフォレストパレスに向かう道中は、<感知>で盗賊たちが居ないか確認しながら進もう。見付けたら、もちろん」
「ぶっ飛ばす!」
ミサオの気合いが十分だ。空回りしなければいいけど。泊めてくれるという家を訪ねるとそこには三人のティバル族の親子が住んでいた。
「やあ、いらっしゃい。狭い所ですが、どうぞごゆっくりしていって下さい」
「ありがとうございます。今日はよろしくお願いします」
俺たちは、家の人たちに挨拶をすると、食事の用意をしてくれた。
「悪いね。僕たちティバル族は野菜ばかりで、肉を食べないから、君たちには物足りないかもしれないよ」
「そんな事ないです。いただきます」
美味い! 確かに肉は入っていないけど、しっかりと野菜の旨味が溶け出したスープだ。
「美味しい」
「何これ。こんなスープ食べたことない」
二人もスープの美味しさに満足して、ガツガツ食べていた。
「あらあら、そんなに美味しいの? あたしも嬉しいわ。おかわりもあるから、沢山食べてね」
「ありがとうございます」
ミサオは、ティバル族の母親のある一点をずっと見ている。
「これ、沢山食べたらあんな風になれるのかな」
「え、う、うぅん。どうかな?」
「ミコトは良いよね。大っきいから」
またその話か。小隊長の胸を見てからそればかりだぞ。
「ミサオ、その辺にしとけよ」
「うるさい。男のくせにあたしより大きいからって……。はぁ……。言ってて虚しくなってきたわ。ご馳走さまでした」
ミサオは、スープを平らげると貸してくれた部屋に先に行っておくと食卓から離れていった。
「もう。ミサオったら……」
「はははっ。面白い方ですな」
ティバル族の父親がミサオを楽しそうに見ている。
「ねぇ、お姉ちゃんは何を怒っていたの?」
「ふふっ。何を怒っていたんだろうね」
父親が不思議そうにしている娘に答えをはぐらかした。ミコトも気にしないでと娘に答える。
「ところで、何故、ティバル族の方々は戦う力が無いのですか?」
俺が質問すると、父親は難しい顔をして答えた。
「そうだね。あなた達人族は職業に対して、装備出来る武器の種類が決まっている。僕たちティバル族は、まず、職業を持たない」
この世界に来て初めて職業の無いという話を聞いた。
「そして、職業が無いから武器が装備出来ないというわけですよ」
「まさか、確かに職業に合った武器しか装備出来ないのに、職業無しなんて」
「ですから、身を守る力が、戦う力が無いのです。これまでに剣や弓、槍など様々な武器を手に取っても弾かれてしまいました」
唯一、生きるために料理用の包丁だけ持てるが、武器として使用しようと思うと弾かれるらしい。何だか俺みたいだな。うん? まさかね?
「すみません。これまでに試した武器にナックルはありましたか?」
「ナックル? いえ、そのような物は。何ですか、それは?」
俺はもう使わなくなったスライムブロウを取り出し、渡してみる。
「これです」
「見たことも無い武器ですね」
父親はスライムブロウを手に取ってみる。
「おや? 痛みを感じない」
拳に嵌めると、驚いたことに装備することが出来た。
「おぉぉぉ、そんな。これは本当に武器なのですか?」
「はい。それは前に使っていた物で、今はこれを使っているのですが」
俺の<錬装>武器は、誰でも装備出来るということなのか?
「ミコト、これ装備出来る?」
「どうかな?」
ミコトが手に取ると、
「痛っ」
ミコトは、痛みを伴い、スライムブロウは弾かれた。
「弾かれたね……」
「つまり、これは」
「そうですね。ティバル族の方々全てかは分かりませんが、俺のナックルを装備出来るみたいです」
「わ、私にも家族を守る力が! 戦う力が備わるということですな!」
父親の興奮度が半端ない。無理も無い。これまでただやられるだけの立場だった者が、守る力を手にしたのだ。この世界では、力が無ければ守る事も出来ない。その力を手に入れる事が出来、自分の愛する者を守ってやれる。そう思うと興奮してくるだろう。
「今日はもう遅いですし、明日、この事は族長に話しましょうか」
「是非、お願いします!」
そして、俺たちは貸してくれた部屋に入り、休むことにした。ミサオは腹を立てていたのか、既にふて寝状態だった。
翌朝、俺たちは泊めてくれた家族に礼を言い、族長に昨日の話をするため、父親と共に族長の家を訪れた。父親がスライムブロウを装備してみせると、族長も驚きを隠せず、自身も装備を試す。
すると、族長も装備することが出来、族長は急いで大人の男性を集め、皆に装備を試させた。見事に全員が装備することが出来た。
「おぉ、これで私たちティバル族も自衛することが出来る」
元々、戦う力を持たなかったティバル族は、武器を持てても自衛手段にしか使うつもりはないと言う。
でも、盗賊に襲われた時、レベル不足で結果全滅なんて事があるかもしれないので、少しはモンスターを倒して、レベル上げをするように小隊長から注意を受けていた。
<鑑定>してみたら全員職業が格闘士という、職業に就いていた。俺の拳士とは違うらしい。既にアーツも使える人が数人いたが、これも俺が使うものとは全く違うアーツだった。
集落にあった使わなくなった鍬なんかを使ってアイアンクロー、アイアンナックルを二十組<錬装>で作り、族長に渡すと大喜びで感謝された。
その後、フォレストパレスに向けて出発した。
「さてと、アル、お前何か知っているんじゃないのか?」
「何をぉ?」
<空納>から出て来ると惚けたように答える。
「ティバル族が俺の錬装武器を装備出来る事とか」
「あぁ。それは、アスカが召喚された影響だよぉ。元々ぉ、遥か昔に、君の使う武器はこの世界に存在したんだよぉ」
「初耳だぞ」
「だってぇ、聞かれなかったもん」
こ、こいつ。俺の冷たい視線を感じ取ったのか、アルはスッとミコトの後ろに隠れる。
「怒らないでよぉ。もっとも、プリメラとブラッド。この二人の力が本体に戻った事が大きいのかなぁ」
アルの本体が邪神を封印した時に、存在が消えてしまったという事らしい。その封印の力が弱まり、再び力を取り戻した事で、存在を認識出来るようになったんじゃないかという事だった。歩いている途中、<探知>を使っていると見付けた。
「居た。盗賊だ。二人共、やるぞ」
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