異世界呪われた救世主~異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす~

陽月純

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第三章 女神と親友

第105話 アスカ vs ノゾム

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 ミサオとの勝負に勝利したノゾムが、次は俺と勝負をしたいと言い出した。

「何を突然言い出すんだ?」
「別に大した事じゃないぜ。単に勝負してみたいだけさ」
「勝負する必要あるか?」
「何だ?お前ひょっとして俺に負けるのが怖いとか?」

 妙に食い下がってくるけど、本当に勝負する必要は無いし、さっさと先に進みたいんだよ。

「はぁ……。怖いとかそんなんじゃないって。早い所フォレストパレスに行きたいだけだよ」
「デイジーちゃんは逃げないから大丈夫だって。じゃあ、こうしよう。俺が勝ったらこのパーティーのリーダーは俺。お前が勝ったら今まで通りお前って事で」
「俺たちにリーダーなんてあったのか?」

 俺の問い掛けにミコト達は首を傾げ、俺を指差すと、

「アスカじゃないの?」
「アスカよね?」
「いつから俺はリーダーだったんだ?」
「「最初から?」」

 リーダーのつもりはなかったけど、二人は俺がリーダーだと思っていたらしい。

「ほら見ろ」
「いや、誰がリーダーでも構わないよ……」
「兎に角、勝負だ。勝負」

 はぁ……。俺は大きな溜め息を吐く。勝負しないと先に進まなそうだ。

 何故かミコトたちも俺とノゾムが勝負するのを見たい顔をしている。特にミサオは、あたしの敵を取れとまで言ってきた。

「分かったよ。ったく、しょうがない奴だ…」

 俺は観念して、さっきまでノゾムとミサオが勝負をしていた広場に歩いていく。

「言っておくけど、俺はカスステータスだからな。全力でやるぞ」
「何を言っているんだよ。アスカ、全力を出さないと勝負にならないだろ。俺が武器を使わないのは殺し合いになるからだ。試合だからな、やりたいのは」

 俺が<アクセルブースト>を使うのと同時にノゾムが突っ込んできた。

「開始の合図まだだろうが!」

 ノゾムは俺の文句を無視して殴り掛かって来た。俺は後ろに飛んで、その攻撃を躱す。

「おっ。やるな。スピードは互角って感じかな」

 ノゾムの言う通り、スピードはほぼ互角。少しノゾムの方が速いといった感じだ。強化したスピードで無強化のノゾムに若干負けているという事になんか腹立つ。

 ノゾムは俺がそんな事を考えている事など関係なく再び間を詰めて来る。

「<気弾>」

 当たらないのは百も承知だが、牽制に<気弾>をノゾムに放つが、ノゾムは横に飛び退きあっさりと躱す。光弾はそのまま後ろの大きな木に当たるとメキメキと音を立てながら倒れた。

「おいおい。アスカ、お前、俺を殺す気か!」
「何言っているんだ。あんなので死ぬわけ無いだろう?」

 俺の魔力じゃ大した威力は無いはずの<気弾>を見て、ノゾムが抗議してくるが、俺はあっさりと問題ないだろと返事をする。

「いや、木が砕けて倒れてんじゃねぇかっ!あの木、意外と丈夫なんだぞ」
「それは安易にお前の力が凄いと言っているのか?」

 その丈夫な木を一瞬で切り倒したノゾムが言っても嫌味にしか聞こえない。

「そりゃ確かに俺の大鎌は攻撃力あるけど、だから勝負には使ってないだろうが。っていうか、あんなの喰らったら、堪らないだろうが!」
「死ぬほどの威力じゃないし、ステータス負けしているんだ。何も問題無いだろうが」
「ちっ。なら、俺だって! ソニック……」
「させるかよ」

 ノゾムが<ソニックエッジ>を手刀から放とうとした瞬間に<フラッシュムーブ>で一瞬で距離を詰め、顎を下から突き上げ、すぐに後ろへ飛んだ。

「ぶべっ」

 俺の力じゃノゾムの防御力だと、突き上げたダメージは無いだろうが、虚を突かれて舌を嚙んだのか、口の中が痛そうに顔を歪ませた。

ひてぇひゃねぇか痛ぇじゃねぇか!」

 ノゾムは手で口を覆いながら、俺を睨んでくるが俺はもう既にノゾムから距離を取っている。反撃の隙など与えない。だが、ノゾムの様子を見ていると、やはり俺の突きによるダメージは無いように見える。

「やっぱり素手だと全く打撃のダメージは無さそうだな」
「思いっきり舌噛んだ。痛ぇいってぇ。何だよ、今の?」
「スキルだよ」
「いいなぁ。俺もそのスキル欲しいぞ。教えろよ」
「教えても覚えられないだろう?」
巻物スクロールに転写してくれればいいだろ」
「考えとくよ」

 ノゾムが素早く手刀を振る。懲りずに<ソニックエッジ>かと思った瞬間、右胸に衝撃を覚え、俺は吹き飛ばされた。

「がはっ」
「へっ、どうだ。<ディメンジョンスラッシュ>だ」

 何が起きたのかさっぱり分からなかった。ノゾムが手刀を振ったのと同時に衝撃が来た。<ディメンジョンスラッシュ>名前からすると任意の空間を斬るアーツか。

「こんなの持っているなら、<フラッシュムーブ>要らないだろ」
「これ、MP大量に使うんだよ」

 今のでかなりのダメージを受けてしまった。やっぱりステータスの差が大きい。俺たち召喚者は、この世界の住人よりも強い。ミコトやヒデオのように突出したステータスが異常に高いパターン、ミサオや俺のようにステータスは低いがその分スキルやアーツが突出しているパターン。そして、ノゾムはステータスもアーツもどちらも高いパターンのようだ。こいつ、一番チート野郎なんじゃないのか? 単純なゴリ押しをされるとステータスの低いスキル/アーツ型の俺とは相性が悪い。

「だからと言って、負ける理由にはならないか……」
「おい、アスカ。無理するなよ。今のは完璧に入っているから手刀だったとは言え、ダメージがデカかっただろ?」
「心配するな。まだ、終わってないぞ」

 俺は右手に<衝波>を発動させる。対人戦なら全力で放つ必要は無い。さっきの一撃で勝ちを確信し、余裕ぶっているノゾムに一泡吹かせてやろう。

「いくぞ!」

 俺の掛け声を聞いても余裕の表情をしているノゾムの目の前に<フラッシュムーブ>で現れる。

「喰らえ!」
「お前の非力な攻撃じゃ、俺には通用しねぇよ! 返り討ちだ!」

 俺が現れるのを待っていたのだろう。カウンターと言わんばかりに俺の突き出す拳に合わせて右ストレートを打って来た。

「俺の方が早い!」

 ノゾムの一撃が俺に届く前に俺は再び<フラッシュムーブ>を使い目の前から消える。

「何っ!?」

 空を切るノゾムの拳。俺はノゾムの横に現れるとそのまま顎を打ち抜く。

「<衝波>!」
「やられてたまるか!」

 ノゾムは殴られまいと体を仰け反らせるが、俺の拳の方が一瞬早く、ノゾムの顎を殴打する。

「がっ……」

 <衝波>の衝撃波で脳を揺らされ、ノゾムはそのまま倒れ込む。

「俺の勝ちだ」

 気を失ったノゾムに俺は勝利宣言をする。
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