異世界呪われた救世主~異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす~

陽月純

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第一章 救世主と聖女

第11話 錬装

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 隠し通路の奥から現れたゴブリン達に俺達はあっという間に囲まれてしまった。

 俺とポーラがゴブリン達に警戒しながら構えを取ると、囲んでいるゴブリン達の後ろから体が一回り大きく、身に着けている装備も他の者より上等な装備をしたゴブリンが不気味に笑いながら現れた。

「ゲッ、ゲッ、ゲッ。オンナ。ニンゲンノオンナ。オマエタチ、ソッチノオンナ、テダスナ。ソレ、オレノモノ」

 気味が悪い。そして、どうもそっちの女というのは俺の事らしい。さっきから俺の方を見てニヤニヤしている。

 これはアンファ村に初めて辿り着いた時のエストの気持ち悪い笑顔を思い出させる。あいつ、モンスターのくせに俺の事をいやらしい目つきで見てくる。すると、ポーラが俺に言ってきた。

「気を付けて。ゴブリンは人間の女性を犯して、子供を作るのよ。繁殖力が強いから犯されたら最後、ゴブリンの子を身籠ってしまうわよ」
「はぁっ?! 俺は男だぞ!」
「今は女でしょ! あいつらには関係ないわ。それにあの後ろにいるのは只のゴブリンじゃないわ。ゴブリンコマンダーよ。あいつのSTRは私より上のはずよ」

 ポーラが険しい顔で警戒している。その様子から今の状況が非常にやばいのは間違いなさそうだ。

 俺は緊張のあまり、ゴクリと唾を飲み込んだ時、ゴブリンコマンダーが部下のゴブリン達に命令を下した。

「オマエタチ、ソッチノミリョクカンジナイオンナ、オマエタチニヤル。オレノジャマ、サセルナ。ヤレ!」

 命令を受けたゴブリン達が一斉にポーラに向かって手に持っている棒切れや石を振りかざし、襲い掛かって行った。

 その中の何体かは、命令を無視して俺に向かって攻撃してきた。俺は振り下ろされた棒切れを躱すと、耳元でブン! と豪快な空振りの音が聞こえた。あんなので殴られたら、ひとたまりもないぞ。

 俺はすかさずゴブリンの顔面を殴りつけた。見事にゴブリンの頬にクリーンヒットしたが、俺の非力なステータスでは、下っ端ゴブリンにダメージを与える事が出来なかった。

 殴られたゴブリンは頬をポリポリと指先でかくとニヤァっと満面の笑みを浮かべ、俺の腕を掴もうと手を伸ばしてきた。

「しゃがんで!」

 ポーラの掛け声を聞いた俺はすぐにその場にしゃがみ込むと、すぐさまポーラは周囲を囲んでいるゴブリン達にアーツを発動した。

「<サークルエッジ>!」

 ポーラは剣を水平に構えると一回転する。そして、発動されたアーツはポーラの周囲に風の刃を作り出し、円状に広がると、周囲のゴブリンを切り裂いた。

「「「ギャァァァァッ」」」

 腕や足が千切れ飛ぶ。ポーラは逆回転で再びサークルエッジを使う。

「まだぁっ! <サークルエッジ>!」

 二回目のサークルエッジで俺達を囲んでいたゴブリン達が一掃され、光の粒子となって消えた。

 凄い。ポーラが本気を出すとこんなに強いのか。俺が感心しているのを他所にポーラは残ったゴブリンコマンダーに向かって駆け出した。

「ムム。オンナ、ヤル。デモ、オレ、オマエノアイテシナイ。オマエ、コイツラト」

 ゴブリンコマンダーが右手を上に掲げ、ビッとポーラに向かって指さすと、ポーラの周りに魔法陣が現れ、そこから再び武器を持ったゴブリン達が現れた。

「嘘!」
「まじかよ!」

 ポーラが現れたゴブリン達と戦闘になるとゴブリンコマンダーが、俺の方に向かって駆け出してきた。

 ゴブリンコマンダーは持っていた剣を鞘に納めると俺に向けて手を伸ばしてきた。

「オマエ、オレ、アイテ」
「気持ち悪いんだよ!」

 俺は捕まらないようにゴブリンコマンダーの手を躱そうと体を捻るが、奴の動きの方が俺の倍以上。簡単に服を掴まれてしまった。

「やばいっ!」

 捕まったら最後だ。俺はすぐに体を反対に捻ると、服が千切れ大きな右胸が姿を現す。

「ゲッゲッゲ……イイカラダ……オカシガイアル」
「誰がお前なんかに!」

 ゴブリンコマンダーが舌なめずりしながら、再び手を伸ばしてきた。俺はすぐにしゃがみ込むと同時に前へと飛び込むと、ゴブリンコマンダーの背後へと抜けた。

 そのままポーラの方へと走る。ポーラの方はだいぶゴブリンを退治し終わっていて、残り三体と戦っている。

 ポーラの方へ走る俺をゴブリンコマンダーはすぐに追いかけて来て、あっという間に追いつくと、前へと回り込んで、俺の腹を蹴り飛ばした。

「ぐふぅっ」

 蹴りをもろに喰らった俺は地面を転がりながら吹き飛ばされてしまった。

「ニゲテモムダ。オマエ、オレノコ、ウム」

 今の一撃で俺の体が言うことをきかなくなった。動けない。奴がゆっくりと近付いて来る。なんとか逃げなきゃ犯される……。

 必死に逃げようと手を伸ばすと、蹴られた時の拍子に俺のステータスプレートが地面に落ちていた。プレートを掴み、立ち上がろうとした時スキル欄へと続く矢印が赤く点滅していた。

 何だ? 初めてもらった時は点滅なんてしていなかったぞ?

 プレートをよく見れば、レベルが二に上がっている。どうやらケイブバットを退治した時に上がっていたのだろう。この点滅はレベルアップでスキルを取得したという事なのか!?

 この状況を変えられるスキルが増えているのを祈りながら矢印を押して立ち上がる。丁度その時ポーラが最後の二体のゴブリンを倒し、こっちに駆け寄ろうとしていた。

「アスカ! 大丈夫!」
「オマエ、ジャマ」

 ゴブリンコマンダーがポーラの方を向いたその隙を逃さず、プレートのスキル欄をチェックする。すると、スキルが二つ増えていた。それは、<錬装>、<アクセルブースト>の二つ。

 <アクセルブースト>は名前から言って、素早さを上げる物だろう。もう一つの<錬装>、これは何だ?

 俺が悩んでいると、ゴブリンコマンダーが俺の方に魔法陣を出現させ、五体のゴブリンが召喚された。

「オマエタチ、ソノニンゲンのオンナ、ニゲナイヨウニイタメツケロ。オレ、コイツコロシタラソッチイク。オカスノハキンシ。テダシタラ、オレガオマエタチコロス。ワカッタナ!」
「「「「「ギギッ!」」」」」

 ゴブリン達は、リーダーの命令に頷くと俺を取り囲み、絶体絶命の状態になってしまった。俺は、ステータスプレートをポケットに仕舞い込むと手に触れるものがあった。

 それを握って取り出すと、それはケイブバットの牙だった。そういえばポケットに全部仕舞い込んでいたっけ。

 五体のゴブリン達が一斉に俺に向かってくる。俺はすぐに<アクセルブースト>を使ってみる。俺の体がほんのり赤く輝いたかと思うと、何だか軽くなった気がする。それにゴブリン達の動きが遅くなったような気がする。

 俺は振り下ろされる棒切れを前に出て避ける。五体のゴブリンは全員空振りに終わり、俺の動きについてこられないみたいだ。予想通り、素早さを上昇させるスキルだった。

 これならダメージを受ける事は無いぞ。俺は次いで<錬装>を使ってみる。どんな効果だろう。

 するとケイブバットの牙を握っている右手が光りだした。そして、光が収まったかと思うと、右手にはケイブバットの牙と思われる鋭利な爪がついた手甲が装着されていた。
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