異世界呪われた救世主~異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす~

陽月純

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第一章 救世主と聖女

第29話 オーガ

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 昨日のフロックスターリングとの戦闘で驚いた事にレベルが二も上がっていた。スライムやケイブバットより経験値が多い小動物。しかも、美味しく頂ける。まさに一石二鳥。また会いたいものだ。

「おはよう」
「おはよう……ござい……ます……!」

 ミコトがテントから出てきたので挨拶すると、凄い勢いでテントへ戻って行った。

(すっぴん、見られちゃった……。恥ずかしい!)

 何だったんだろう? まぁいいか。朝飯の用意でもしておくか。

 俺が準備をしていると、ポーラと一緒にミコトもやって来た。

「ポーラ、おはよう」
「おはよう。早いのね」
「ああ、人生初めての野宿だったからか、早く目が覚めたんだ」

 俺の用意した朝食を食べ終え、出発の準備を始める。

「ミコト、そういえばさっきは何でテントに慌てて戻ったの?」
「え? それは……」

 ミコトが返事に困っているとポーラが代わりに答えた。

「アスカ、寝起きすぐの顔なんて見られたくないものよ」

 そんなものなのか? そう言われると、今のミコトは薄っすらと化粧をしていた。俺からすればすっぴんと大差無く、可愛いと思うのだけど。

「そうか。それは悪かった」
「いえ、私の方こそ……」

 そんなやり取りをしている内に準備が整った。

「よし、行こうか」

 旅を始めて二日目。今日は本当に何も無かった。モンスターと遭遇する事もなく、また、通りを歩く人もおらず何もない1日だった。

「今日は本当に何も無い一日だったな」
「アスカは何か問題が起きて欲しいのかしら?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど、ここまでモンスターとも遭遇しないとは思っていなかったからね」
「正直、何もこのまま起きないで、エスティまで辿り着きたいものだけれど」

 まあ、それが一番なのは間違いないのだけれど、それでもこの先、アルの言うあいつとやらに一撃を喰らわせるにはもっと強くなる必要もあるという、このジレンマ……。

「明日は村に着くと思いますよ」
「そうね。でも、ゆっくり滞在はしないわよ」
「分かった」

 アルは俺達の話しを聞きながら、小さな体を丸くして眠りにつき始めていたが、俺にだけ念話を送ってきた。

『アスカ、明日は気を付けて……ね……』

 そのまま眠ってしまったようだ。どういう意味なんだ? 何か起きるっていうのか? アルの言葉が気になりながらも眠りについた。

 そして、翌日の昼、俺達は予定通りベント村へと着いた。

「お昼はこの村で食べて出発しましょうか」

 ポーラの提案にミコトと俺は頷き、村の酒場へと足を運んだ。

「いらっしゃい……」

 昼間とはいえ、客が一人も居ない。その上、店主の方も何だか暗い。俺達を見ることもなく後ろを向いている。

「三人なのだけれど、何か食事を戴けるかしら?」
「ああ……。適当な席について、待っていてくれ」

 俺達ご席につくと、店主は料理を始めた。

「何かあったのかな? やけに暗いけど」
「前にこの村を訪れた時はこんな感じじゃありませんでしたけど」
「そうね。ちょっと様子がおかしいかもしれないわ」

 俺は昨日のアルの言葉を思い出す。『気を付けて』、何か関係があるのだろうか?

 肝心のアルは村に騒ぎが起こるのを避けるために、今は<空納>の中に身を潜めている。あいつから俺に声を掛けてこないと、念話での会話が出来ないから、確認のしようが無い。

「お待ち……。ん!」

 料理を運んできた店主が俺達を見て驚いている。そんなに驚くようなパーティか?

「あ、あんた達。旅の人かい?こんな美人三人で旅をしているなんて腕には自信があるんだよな?!」
「まあ、一応はそれなりには強いとは思うけれど、それがどうかしたのかしら?」
「ちょ、ちょ、ちょっと、待っていてくれ。あ、いや、ゆっくり食事をしていてくれないか!」

 そう言うと、店主はバタバタと慌てて店から出て行った。

「どうしたのかしら?」
「まあいいや。食べようぜ」

 俺達が出された料理を食べていると、店主が男を連れて戻ってきた。

「おぉ。お前の言う通りだな」
「でしょう。村長」

 村長? 言う通り? 何の事だろう?

 俺達は顔を見合わせ、首を傾げる。

「食事中にすみません。私はこの村の村長をしているワーズと言います」

 ワーズは俺達の前に来ると挨拶を始め、勝手に俺達と同じテーブルに付いた。

「いやぁ。実に美しい方々だ。あなた達のような美しい女性が旅をしているとは。危険なモンスターや言い寄って来る男共から身を守りながら旅をしているのでしょう?」
「まだ旅立ってから三日目だからな。まだ危険なモンスターには出会っていないよ」
「おや、そうでしたか。でも、腕は立つのでしょう? 実は、お願いがございまして」
「お願い?」

 冒険者ギルドを通さず、直接依頼を出す事があるのだろうか? ポーラの方を見ると、首を横に振る。受けない方が良いという事だろう。

「はい。今、この村は恐ろしいオーガに狙われているのです」

 それで、この静けさなのか。

「狙われているとは、どういうことですか?」

 ミコトがワーズに聞き返す。

「はい。そのオーガは配下のゴブリン共を連れて二日程前、突然、村に現れました。そして、村一番腕の立つ者を容易く倒すと、私たちにこう言ったのです。『今から三日後、俺達の住む森に食べ物を持ってこい。持って来なければこの村を滅ぼす』と」

 なんてベタな展開だ。

「この村を救って戴けないでしょうか。オーガの討伐をお願い出来ませんか?」
「アスカ、ミコト」

 ポーラが俺とミコトを交互に見ると、俺達は頷いた。

「ああ」
「はい。やりましょう」
「ということで、その依頼。私たちが引き受けるわ」

 ワーズの顔がぱぁっと明るくなる。

「ありがとうございます。ありがとうございます」

 まだ討伐してもいないのに、ワーズは何度も何度も頭を下げる。そして、店の奥から酒場の店主が何か飲み物を持ってきた。

「良かったな。村長。これで、この村も助かるな」
「ああ。お前のおかげだ」
「これ。依頼を受けてくれた礼だ。飲んでくれ」

 俺達は店主が出してくれた赤い飲み物を飲んだ。美味い。なんだ、この飲み物。

「あら、美味しいわね。これ」
「はい。美味しいです」

 皆一気に飲み干した。それを見て、店主がほっとした表情をした。何で俺達が飲んだのを見て、安心するんだ?

「美味しかったですか? それは良かった。本当に」
「これは何の飲み物……」

 あれ? 何だ急に眠くなってきた……。ポーラとミコトも眠そうだ。いや、寝たぞ。だめだ、俺も眠い……。

「よしよし。薬が効いてきたみたいだな」

 薬? どういう事だ……

「これで、この村は救われる。村から犠牲は出ずに済みましたね。村長」

 意識が薄れていく。何の話をしているんだ。この二人は。駄目だ。眠たすぎる……。起きて、いられない…。

「さあ、準備するのだ……」

 目が覚めると、そこは真っ暗だった。

 なんだ? 体がだるい……。それに狭い。ここはどこだ?

 ポーラとミコトの姿も見えない。目が暗闇に慣れて来て、どこに自分が居るのか分かった。

 何で樽の中に閉じ込められているんだ?
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