異世界呪われた救世主~異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす~

陽月純

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第一章 救世主と聖女

第31話 村を襲う影

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 オーガとの戦闘が終わり、座り込んだ俺とポーラの元へミコト、アルがやって来た。アルが俺の頭の上に乗る。

「やったねぇ。二人共ぉ。凄かったよぉ」
「ポーラさん、大丈夫ですか?」

 ミコトはポーラに<ヒール>を掛ける。俺は<錬気>を使って、消費したOPをMPを使って補充する。

「一時はどうなる事かと思ったわ」
「本当に。でも、今回の戦いで分かった事がある」

 俺は、OPを回復させ立ち上がると二人の顔を見た。アルは俺が突然立ち上がったため、頭から落ち、ふわふわと宙を舞っていた。

「何が?」
「俺達は素早い敵との相性が最悪だ。素早さの対策が必要だな」
「確かに私のAGLは低いわ。あなたの言う通り、AGLが高い敵とは相性が悪いわよ。でも、最近の戦闘が異常過ぎるわ。はっきり言って、この島の中であればあそこまで素早いモンスターとはそうそう遭遇しないわよ。オーガなんてここで現れるようなモンスターじゃないわ」
「でも、足らないのは事実だろ。まあ、俺自身は全てが足らないんだけどな」
「それを言うと、私も攻撃手段があれば。足を引っ張っているのは私ですね」
「「そんなことない」わ」

 俺とポーラの声が重なる。ミコトが居なければ俺は死んでいただろう。正直、エスティで別れずこのまま一緒に旅をしたいというのが本音だ。

「ポーラ、セレスは物凄く速かったけど、彼女は君と同じ剣士なのにどうしてあんなに速いんだい?」
「姉さんのスピードは、あの防具と神器のおかげよ。あれらは装備者のAGLを高める効果があるのよ」

 装備品による補助効果か。レベルを上げるよりも早い戦力アップなのは間違いない。でも、そこまでの装備品なら費用もかかるはず。今の俺には到底手が出ない。

「装備品を強化するなら、どこかのダンジョンにある宝箱を探すというのもあるけれど……」
「大概のダンジョンは既に探索済みなのか」
「そうよ。だから、すぐに装備を強化というのは厳しいわね。一先ずベント村に戻って、オーガ討伐の報告と期待は出来ないけれど、武具屋を尋ねてみましょう」
「分かった」

 正直、あの村長と酒場の主人は一発ぶん殴ってやりたい。よし、村に戻るか。

「あの……」

 ミコトが口を開き、俺達がミコトに振り向くと、

「村ってどっちに行けば?」
「そういえば、そうだな……。どっちに行けばいいんだ? これ」

 周りを見ても、木、木、木……。村への道など見当たらない。参ったな……。でも、オーガ達が村にやって来たと言っていたからには、あの村に近い森という事は、間違いないんだろうけど。

「村に帰るのぉ? ちょっと待ってぇ」

 アルがそう言うと一気に上昇すると木の上まで飛んで行った。

「あっちに村が見えるよぉ」

 アルが東の方に村を発見してくれた。

「アル、ありがとう。じゃあ、行こうか。そういえば、アル、お前が昨日、気を付けてって言っていたのはこの事だったんだな」
「え? 僕、そんな事言ったかなぁ?」

 記憶に無いのか? まあいいか。俺達は、村へと歩きだした。暫く進むと森から出る事が出来た。だが、村らしきものは見えない。どういう事だ?

「アル?」
「まだ、だいぶ先だよぉ」

 アルの視力はどれくらいあるんだろう。とりあえず、東に向かって歩いていると街道に出た。その街道を暫く進むとやっとベント村が見えてきた。俺達が訪れた時と違い、人が外を歩いているようだ。

「なるほど。俺達を生贄に出したから暫くは大丈夫って感じか」

 沸々と怒りが込み上げてくる。

「アスカ、落ち着いて。とにかく村長のところへ行くわよ」

 そう言いながらもポーラの顔が険しかった。ポーラも怒ってるじゃないか……。村に入ると、外を歩いていた村人が俺達に気が付く。すると、まるで何事も無かったように、

「おや、旅の人かい? 丁度いい時に来たね。今日は今から村全体で祝いの祭りをする所なんだよ。ゆっくりしていくといい」
「へぇ。何か良いことでもあったんですか?」
「ああ、何でも村を苦しめていたモンスターから村を救ってくれた人がいるらしくてね。それで村が救われた事を祝おうと村全体でお祭り騒ぎなのさ」

 それは、俺達を生贄に出して村が救われた事を祝うという事だな。ポーラの顔が更に険しくなった。これ、村長死ぬんじゃないのか……。

「ところで、村長さんはどこに?」
「村長なら、家にいるはずだよ。ほら、あそこが村長の家さ」
「ありがとうございます」

 俺達は村長の家に歩いていく。途中、例の酒場の前を歩いたが、人がいる気配が無かった。もしかすると村長の家にいるのかもしれない。村長の家に着くと、大きな笑い声が聞こえてきた。

「わっはっはっは。お前のおかげで全て片が付いたな。まさか、ゴブリンがあの三人と食材で今後襲うことはないと約束をしてくれるとは」
「そうですね。三人を眠らせた後、ゴブリンがやって来るとは思ってもいませんでしたけど。交渉してみて正解でした」

 成程。そういう事か。やはり俺達は自分たちが助かるための生贄としてオーガ達に差し出されたという訳だ。俺は、村長の家のドアを叩く。

「うん。誰かな? ちょっと待ってくれ」

 ドアが開き、ワーズが出てきた。俺達を見て驚きを隠せず、顔が引きつっている。

「あ、あんた達……。な、なんで、ここに…。い、いや、そ、そうか。お、オーガを討伐してくれたのか!」

 白々しい態度だ。声は恐怖で震えている。

「俺達を嵌めておいて、よくそんな口が聞けるな」
「な、なんの事だ」
「とぼけても無駄よ。さて、どうしてくれようかしら?」

 ポーラが力強くドアを叩きつける。バン! 大きな音に驚きワーズは後ろに倒れ、尻餅をついた。

「ひ、ひぃ。ゆ、許してくれ。頼む。報酬なら何でもやるから! い、命だけは!」

 俺が思いっきり村長の顔を殴った。ワーズは鼻血を出し、床に倒れ込む。俺のSTR程度なら、痛い程度だ。これ、ポーラがやっていたら、死んでいるかもしれないからな。

「お金は貰っておくわ。今のアスカの一撃で今回は許してあげる。でも、次は無いわよ」

 ワーズは床を這いながら、奥に戻り金の入った袋を持ってきた。

「中に三千ゴル入っている。これが私の全財産だ。これで許してくれ……」

 金を受け取り、俺達はワーズの家を後にした。酒場の主人がワーズの所へ慌てて来て、部屋に運んでいくのが分かった。

「さあ、このお金で装備を整えましょう」

 俺達は村にある武具屋へ足を運んだ。店の中に入ると、残念な事にアンファ村で売っている装備と大して品揃えが変わらない。何か掘り出し物の一つでもないかと物色していると、外が急に騒がしくなった。

「なんだろう。外が騒がしいな?」

 店の外の様子を確かめようと入り口に向かった時、アルが<空納>から飛び出てきた。

「アル、どうした?」
「アスカ! 早く! 地面に穴を! 穴の中に隠れて! 早く!」

 アルの慌て方が尋常じゃない。いつもの間延びした口調が無い。

「きゃああ!」
「な、なんだ。あれは!?」

 外から悲鳴が聞こえる。

「アスカ! 早く!」

 アルの叫び声を聞きながらも、やはり外の様子が気になる。

「ちょっと待て。外の様子を見させてくれ」

 俺が武具屋から出ると、村は巨大な影に覆われ昼間だというのに暗かった。そして、村人たちが上を見ていたので、上を見てみれば、巨大な黒竜が大きな翼を広げ、村の上空にいた。
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