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第一章 救世主と聖女
第37話 試練の塔
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ポーラとミコトの自由が認められ、心置きなく試練の塔に挑めるようになった。俺達は、宿屋を出ると試練の塔がそびえ立つエスティの中心へと向かった。
途中、武具屋があったが、ポーラ曰く、神器は何を貰えるのか分からないらしく、新しく買った装備が神器と被るとお金が勿体ないという事から、寄るのを止めた。挑むのに防具を揃えておきたいという気持ちもあったが、所持金は少ないからな。貰った神器に合わせて装備を買う方が良いだろう。
武具屋を通り越し、試練の塔の入り口に辿り着いた。入り口には、俺達以外にも塔に挑む冒険者達で賑やかだった。
「これ全部挑戦者なのか……」
「そうね。でも、この中の内、何人がプリメラ様に会えるかしら?」
「そんなに大変なのか?」
「ええ。はっきり言って、アスカ。あなたも踏破出来るか分からないわよ」
まあ、そうだろう。俺のレベルは塔に挑むのに足りないのは分かっている。それでも、挑まないといけない気がする。それに何故か、不思議と踏破出来る。そんな気がするのさ。
「分かっているけど、来たからには挑戦しないとな」
踏破出来そうというのは口にしない。
「それより、ミコトは神器を貰わなかったのか?」
ミコトはこっちに召喚された時にプリメラに会っている。それなら最初に渡されていてもおかしくない。
「それが……。プリメラさん、いきなり神器なんて使っていたら、私が育たないだろうからって、この世界と私の役目の話をした後、すぐに地上へ転移されたから貰っていないんです」
神器を最初から持っている方が、育つような気もするけど。まあ、女神にも考えがあっての事だろうから、俺がとやかく言う事では無いか。
「分かった。それじゃあ、強くなった姿を見せて、神器を貰おうぜ」
「はい!」
挑戦者の列に並んで順番を待っていると、塔の中に入って行った冒険者が傷だらけで戻って来る。全身傷だらけで満身創痍だ。その冒険者が塔の関係者なのだろうか、ローブを着た人たちに運ばれていく。
「凄い傷だったな」
「失敗した人ね。大丈夫、この塔は今まで死者は出た事が無いわ。限界ギリギリになったら自動で塔の外に転移されるのよ。そして、彼らが治療を施してくれるのよ」
死ぬギリギリまでは、戦うという事か。すると、すぐに次の冒険者が塔の中から転移してくる。今度は無傷だ。
「お、あいつは踏破に成功したのか!?」
無傷で出てきた事で、俺は神器を授かり転移してきたものと思ったが、ポーラがあっさり否定した。
「違うわね。あの人は、試練の塔に入ったまではいいけど、試練を受ける事もなく、転移させられたのよ」
「どういう事だ?」
「もしかして、リタイアですか?」
「リタイア?」
「あ、挑戦を自分の意思で止めたって事です」
「そうかもしれないけど、多分違うわね。最初のフロアで力不足と見做されたのよ」
は? 挑むのは自由だけど、力不足なら強制排除ってことなのかよ。確かに、転移してきた冒険者は悔しそうに地団駄を踏んでいる。
「あれだけ悔しそうにしているという事は、強制転移の口ね」
ああはならないように頑張らないと……。
順番を待っていると、こっちへ歩いて来る男の姿が目に入った。あれは…。
「ビリー?」
ミコトが歩いてきた男の名を口にする。そう。あれはビリーだ。何故か完全武装をしていて、こっちへと歩いてきた。
「ミコト。今から試練の塔に挑むのかい?」
「はい」
「そうか。君」
ビリーは俺の方を向くと突然武器を構えた。
「昨日は、何をしたのか分からないが、まだ俺は負けたと思っていない」
え? こいつ、何を言い出すんだ?
「ビリー、あなた何を言っているの?」
「だから、俺は負けていない。今、ここでもう一度勝負をしよう」
こいつ馬鹿か?
俺がそんな事を思っていると、ビリーは突然俺に斬りかかってきた。
「うわっ。いきなり何するんだ!」
斬られる寸前で何とか躱し、抗議をするがビリーはお構いなしに再び斬り付けてくる。
「ビリーっ!」
ポーラの静止も聞く耳を持たず、俺に攻撃を続ける。俺は<アクセルブースト>を使って、攻撃を躱すがビリーは一向に手を止める気配が無い。
「避けてばかりいないで、反撃してこい!」
「いや、今から塔に挑むのに、何で力を消費しなきゃいけないんだよ」
「うるさい。塔に挑戦なんてさせるはずがないだろう」
周りの冒険者たちも何事かと様子を見ているが、ビリーの剣幕に誰も止めようとする者が居なかった。
ああ! もう! 何なんだよ!マリー達はどうしたんだ!
俺は攻撃を躱しながら、マリー達が現れてビリーを止めてくれないか期待するが、全く現れる様子が無い。
「姉さん達は止めに来ないぞ。俺の盛った薬でぐっすりと眠っているからな」
嘘だろ。俺に再挑戦するために仲間に睡眠薬を盛って邪魔が入らないようにして来たって言うのか! こいつ絶対馬鹿だ……。仕方がない。力を消耗したくはなかったけど……
「お前さえ、お前さえ居なければ。ミコトは俺の傍に居たのに!」
振るう剣に殺意がこもる。勝負というより俺を殺しに来ている。
「何度やっても俺が勝つんだよ!」
殺意のこもった一撃を紙一重で躱し、ビリーとの距離を詰め、頭目掛けて掌底を出す。
「お前の貧相なSTRの攻撃など、完全装備の俺に通用するものか!」
昨日も同じセリフを言っていたが、学ばないのか? 俺の掌底がビリーの頭に直撃し、昨日と同じく、ビリーはそのまま気を失い倒れた。騒ぎに駆け付けたローブ姿の男がビリーの様子を見ている。
「気を失っているだけか。一体何の騒ぎだったのかな?」
「いや、こいつが突然襲って来たんだ。だから、気絶させた」
「ふむ。君は塔の挑戦者なのかな?」
「はい」
「分かった。この男は私たちで様子を見よう。君は塔の挑戦、頑張ってきなさい」
てっきり事情聴取でもされると思っていたけど、見逃してくれるのならいっか。
「ありがとうございます。失礼します」
俺はローブの男に礼を言うと、列に戻って行った。もうあと二組で俺達の番という所まで進んでいた。
「ビリー、一体どうしたのかしら?」
「分からないけど、いい迷惑だよ」
「大丈夫ですか?」
「怪我は無いけど、OP使っちゃったよ。全く、今から必要だっていうのに」
そう言って、<錬気>を使ってOPを回復すると、魔力回復薬を<空納>から取り出し、飲み干す。
「あぁ。貴重な一本が……」
魔力回復薬を飲んだことで、挑戦前に万全の状態には戻れたが、貴重な魔力回復薬を消費することになってしまった。
「それにしても、アスカ凄いわね。まさか、二日連続でビリーを気絶させるなんて」
「さあ。あいつが馬鹿だったからじゃないのか? 同じ手で気絶するなんてさ」
「ビリーさんは、そんなに弱い人では無い筈ですけど」
ポーラもミコトの言葉に頷く。
「ともかく、順番だ。中に進もうぜ」
話をしている内に、俺達の順番が回って来た。二人は頷き、塔の入り口の中へと入って行った。
途中、武具屋があったが、ポーラ曰く、神器は何を貰えるのか分からないらしく、新しく買った装備が神器と被るとお金が勿体ないという事から、寄るのを止めた。挑むのに防具を揃えておきたいという気持ちもあったが、所持金は少ないからな。貰った神器に合わせて装備を買う方が良いだろう。
武具屋を通り越し、試練の塔の入り口に辿り着いた。入り口には、俺達以外にも塔に挑む冒険者達で賑やかだった。
「これ全部挑戦者なのか……」
「そうね。でも、この中の内、何人がプリメラ様に会えるかしら?」
「そんなに大変なのか?」
「ええ。はっきり言って、アスカ。あなたも踏破出来るか分からないわよ」
まあ、そうだろう。俺のレベルは塔に挑むのに足りないのは分かっている。それでも、挑まないといけない気がする。それに何故か、不思議と踏破出来る。そんな気がするのさ。
「分かっているけど、来たからには挑戦しないとな」
踏破出来そうというのは口にしない。
「それより、ミコトは神器を貰わなかったのか?」
ミコトはこっちに召喚された時にプリメラに会っている。それなら最初に渡されていてもおかしくない。
「それが……。プリメラさん、いきなり神器なんて使っていたら、私が育たないだろうからって、この世界と私の役目の話をした後、すぐに地上へ転移されたから貰っていないんです」
神器を最初から持っている方が、育つような気もするけど。まあ、女神にも考えがあっての事だろうから、俺がとやかく言う事では無いか。
「分かった。それじゃあ、強くなった姿を見せて、神器を貰おうぜ」
「はい!」
挑戦者の列に並んで順番を待っていると、塔の中に入って行った冒険者が傷だらけで戻って来る。全身傷だらけで満身創痍だ。その冒険者が塔の関係者なのだろうか、ローブを着た人たちに運ばれていく。
「凄い傷だったな」
「失敗した人ね。大丈夫、この塔は今まで死者は出た事が無いわ。限界ギリギリになったら自動で塔の外に転移されるのよ。そして、彼らが治療を施してくれるのよ」
死ぬギリギリまでは、戦うという事か。すると、すぐに次の冒険者が塔の中から転移してくる。今度は無傷だ。
「お、あいつは踏破に成功したのか!?」
無傷で出てきた事で、俺は神器を授かり転移してきたものと思ったが、ポーラがあっさり否定した。
「違うわね。あの人は、試練の塔に入ったまではいいけど、試練を受ける事もなく、転移させられたのよ」
「どういう事だ?」
「もしかして、リタイアですか?」
「リタイア?」
「あ、挑戦を自分の意思で止めたって事です」
「そうかもしれないけど、多分違うわね。最初のフロアで力不足と見做されたのよ」
は? 挑むのは自由だけど、力不足なら強制排除ってことなのかよ。確かに、転移してきた冒険者は悔しそうに地団駄を踏んでいる。
「あれだけ悔しそうにしているという事は、強制転移の口ね」
ああはならないように頑張らないと……。
順番を待っていると、こっちへ歩いて来る男の姿が目に入った。あれは…。
「ビリー?」
ミコトが歩いてきた男の名を口にする。そう。あれはビリーだ。何故か完全武装をしていて、こっちへと歩いてきた。
「ミコト。今から試練の塔に挑むのかい?」
「はい」
「そうか。君」
ビリーは俺の方を向くと突然武器を構えた。
「昨日は、何をしたのか分からないが、まだ俺は負けたと思っていない」
え? こいつ、何を言い出すんだ?
「ビリー、あなた何を言っているの?」
「だから、俺は負けていない。今、ここでもう一度勝負をしよう」
こいつ馬鹿か?
俺がそんな事を思っていると、ビリーは突然俺に斬りかかってきた。
「うわっ。いきなり何するんだ!」
斬られる寸前で何とか躱し、抗議をするがビリーはお構いなしに再び斬り付けてくる。
「ビリーっ!」
ポーラの静止も聞く耳を持たず、俺に攻撃を続ける。俺は<アクセルブースト>を使って、攻撃を躱すがビリーは一向に手を止める気配が無い。
「避けてばかりいないで、反撃してこい!」
「いや、今から塔に挑むのに、何で力を消費しなきゃいけないんだよ」
「うるさい。塔に挑戦なんてさせるはずがないだろう」
周りの冒険者たちも何事かと様子を見ているが、ビリーの剣幕に誰も止めようとする者が居なかった。
ああ! もう! 何なんだよ!マリー達はどうしたんだ!
俺は攻撃を躱しながら、マリー達が現れてビリーを止めてくれないか期待するが、全く現れる様子が無い。
「姉さん達は止めに来ないぞ。俺の盛った薬でぐっすりと眠っているからな」
嘘だろ。俺に再挑戦するために仲間に睡眠薬を盛って邪魔が入らないようにして来たって言うのか! こいつ絶対馬鹿だ……。仕方がない。力を消耗したくはなかったけど……
「お前さえ、お前さえ居なければ。ミコトは俺の傍に居たのに!」
振るう剣に殺意がこもる。勝負というより俺を殺しに来ている。
「何度やっても俺が勝つんだよ!」
殺意のこもった一撃を紙一重で躱し、ビリーとの距離を詰め、頭目掛けて掌底を出す。
「お前の貧相なSTRの攻撃など、完全装備の俺に通用するものか!」
昨日も同じセリフを言っていたが、学ばないのか? 俺の掌底がビリーの頭に直撃し、昨日と同じく、ビリーはそのまま気を失い倒れた。騒ぎに駆け付けたローブ姿の男がビリーの様子を見ている。
「気を失っているだけか。一体何の騒ぎだったのかな?」
「いや、こいつが突然襲って来たんだ。だから、気絶させた」
「ふむ。君は塔の挑戦者なのかな?」
「はい」
「分かった。この男は私たちで様子を見よう。君は塔の挑戦、頑張ってきなさい」
てっきり事情聴取でもされると思っていたけど、見逃してくれるのならいっか。
「ありがとうございます。失礼します」
俺はローブの男に礼を言うと、列に戻って行った。もうあと二組で俺達の番という所まで進んでいた。
「ビリー、一体どうしたのかしら?」
「分からないけど、いい迷惑だよ」
「大丈夫ですか?」
「怪我は無いけど、OP使っちゃったよ。全く、今から必要だっていうのに」
そう言って、<錬気>を使ってOPを回復すると、魔力回復薬を<空納>から取り出し、飲み干す。
「あぁ。貴重な一本が……」
魔力回復薬を飲んだことで、挑戦前に万全の状態には戻れたが、貴重な魔力回復薬を消費することになってしまった。
「それにしても、アスカ凄いわね。まさか、二日連続でビリーを気絶させるなんて」
「さあ。あいつが馬鹿だったからじゃないのか? 同じ手で気絶するなんてさ」
「ビリーさんは、そんなに弱い人では無い筈ですけど」
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