異世界呪われた救世主~異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす~

陽月純

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第一章 救世主と聖女

第41話 試練の塔攻略4

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 プリメラの試練の塔、最終試練が始まろうとしていた。二階層目と同じ広い何も無い部屋の中央に俺達は立っていた。そして、俺達を囲むように無数の召喚陣が展開されている。その中から現れたのは、斧を持った石像二体、剣を持った石像四体、盾を持った石像二体、杖を持った石像四体。計十二体。

「これはまた……。大層なお出迎えだな」
「そうね。骨が折れそうだわ……」
「頑張りましょう!」

 石像達が動き出すと、二つのグループにまとまった。斧一、盾一、剣二、杖二の構成に分かれ、俺達を挟むように陣取っている。片方ずつ。と、いう訳にもいかないか……。
 さっきの階はこの状況の予行演習だったということだ。

「アスカ、そっちは任せたわよ!」

 ポーラは俺が返事をする前に、目の前の石像のグループへと突っ込んでいく。

「分かった!」

 俺も返事をすると同時に前へと出ていく。すると、斧と剣の石像が俺に向かって走って来た。斧の石像は動きが遅く、剣の石像と先に接触すると、一体は縦に剣を振り上げ、一体は横に剣を振り払って来た。

「そんな攻撃、当たってたまるか!」

 俺は立ち止まり、剣の間合いには入らず、剣を振り終わった所を狙って一気に前へと出ると、石像の顔面目掛けて突きを放つ。石像の顔面に突きが当たるその瞬間、拳を止め急いで後ろへ飛び退いた。そのタイミングででかい斧がブン! と大きな音を立てて空を裂く。

 危ない。危ない。今、攻撃を止めて下がってなかったら、俺の右手無くなっていたぞ。

 そんなことを考えていたら、目の前の三体が散った。そして、その散った後を一本の石の槍が真っすぐこちらへと飛んできた。

「おっとぉっ!」

 横に飛び退き、石の槍を躱す。そこに剣の石像が剣を振り下ろして来た。再び後ろへ飛び退き躱したつもりだったが、掠めていたのか胸の辺りの服に一本の切れ目が入り、そこから血が滲んでいた。


「多勢に無勢とはよく言ったものだよ」

 後ろを振り向けば、やはりポーラも苦戦をしている。ミコトは、戦闘手段が無いため邪魔にならないように部屋の隅へと移動を終えていた。

 まずは一体。確実に倒さないと。どいつを先にやる? 前衛三体の連携も厄介だが、後ろからの魔術も面倒だ。ここはやっぱり……。

「お前からだぁ!」

 せめてもの救いはこの部屋が広い空間だということ。<アクセルブースト>、<アクセルギア>で素早さを上げた俺は、どの石像よりも素早く動ける。一気に駆け出し、前衛三体を通り抜ける。そして、盾の石像に向かってそのまま突っ込んで行った。石像は盾を構え、俺の攻撃に備えていたが、俺の狙いは違う。盾の石像の横を潜り抜け、<ストーンランス>を使った石像に攻撃を仕掛けた。低い体勢から石像の腹にまずは一撃。石像の体がくの字に曲がる。そこに顎目掛けて、拳を振り上げる。下から攻撃を喰らった石像がよろめいた所に、

「これで、止めだぁ!」

 <双牙>、<疾風>を使い石像の腹に叩き込む。ミコトが掛けてくれた<アドバンスフォース>の効果で、この一撃で砕けるはずだった。だが、俺の一撃が入るよりも早く、石像の体が白い光に包まれる。もう一体の杖の石像が、何かの魔術を使ったようだ。俺の一撃が石像の腹に命中。だが、石像は砕け散らなかった。

 馬鹿な!? 何で!? さっきの光か!

 動揺した俺に盾の石像が盾を押し当てて来て、吹き飛ばされてしまった。

「しまった!」

 石の槍が飛んで来る。それを横に飛び、躱すと前衛三体が追い付いてきていた。
 また三体の連携攻撃が始まる。二本の剣と斧を躱し、なんとか距離を取ると、俺が攻撃した石像が光に包まれているのが見えた。こいつらは、タンク、アタッカー、ヒーラー全て揃っているのか。あの杖のもう一体。あれを倒さないとダメージが回復されてしまう。

「アスカ! 回復役の石像がいるわ。そいつから倒して!」

 どうやらポーラもその事に気付いたらしい。

「ああ。分かった」

 杖の石像を狙って走り出そうとした所に剣の石像が剣を振り下ろしているのが見えた。斬撃を飛ばすアーツか!

 すぐに横に駆け出す。駆け出した俺を追いかけるように剣を振り下ろし、斬撃を飛ばすが一直線にしか飛ばない斬撃は、狙いが分かればどうという事は無い。見えない斬撃を躱し、回復役の石像へ向かって走り出した。石像達はその事に気付いたのだろう。守るように固まっている。あんな風に固まられたら俺の攻撃じゃ届かない……。そう思っているんだろう。

「俺の攻撃は接近戦だけじゃないんだぜ!<紅蓮>!」

 両手に装備したフレイムナックルの炎が一段と大きくなる。フレイムナックル装備時に使えるアーツ<紅蓮>。これは拳に炎を纏い、攻撃力を高める効果と纏った炎を遠くへ飛ばす事が出来る。

 前衛達の死角となる位置へ移動し、右拳の炎を石像へと飛ばす。炎が石像に命中し爆発する。石像達が爆風で動きが怯んだ隙に、一気に距離を詰めると両拳に<双牙>を使い、<疾風>を両拳で叩き込んでやれば、回復役の石像が粉々に砕けた。

「良し。回復役を破壊した」

 すぐにその場から離れれば、石の矢の雨がさっきまで俺が立っていた場所に降り注いだ。他の石像に当たっているぞ。何も考えていないのか? あいつは。

 あいつを上手く使って、同士討ちを狙ってみるか? 固まっている今がチャンスだ。
 杖の石像に向かって左拳の炎を飛ばす。杖の石像を庇うように盾の石像が、前に出て来た。炎は盾によって防がれたが、爆発の隙にまた距離を詰める。狙いは石の矢が刺さっている剣の石像。杖の石像と直線上になるように回り込み杖の石像に向かって行く。

 杖の石像が狙い通り、俺を迎え撃つ為に杖の先端を俺に向けると、石の矢を俺の頭上から降り注いだ。

「うわっ。そうきたか!」

 すぐに横に飛ぶと、そこには剣の石像が剣を振り上げ待ち構えていた。

 <紅蓮>を再び使い、振り上げている剣に向かって炎を放つ。炎が当たり、爆発の衝撃で剣を手放した。そのまま顔面をついでに殴りつける。よし。これで何とか体勢を整えて、もう一回チャレンジだ。

 後ろを振り向くと、もう一体の剣の石像が崩れ去る所だった。結局、石の矢は当たっていたようだ。盾の石像にも石の矢が肩に一本刺さっている。丁度いい。それなら盾の石像から片付けよう。

 盾の石像に向かおうとすると、剣と斧の石像がタイミングを合わせるように前後から斬りかかって来た。どちらの攻撃も受け止める訳にはいかない。仕方なく横に避けると、石の槍がすぐそこに迫っていた。

「間に合わないっ!」

 避けるのが間に合わないと俺は目の前にいる剣の石像の腕を掴み俺の方へと引く。これは予想していなかったのか、石像が体勢を崩し、石の槍が石像の腹を貫通する。だが、槍の勢いは止まらずに俺の腹にも刺さってしまった。

「かはっ」

 石の槍が刺さり、吐血した俺に止めを刺さんと斧の石像が大きく斧を振り上げているのが横目に入る。まだ、終われない……。槍を掴み後ろに下がりながら槍を抜くと、左拳の炎を振り下ろされる斧に向けてぶつけた。爆発で自分自身も吹き飛び、斧からの攻撃は回避出来たが、<ストーンランス>のダメージが深刻だ。倒れたまま起き上がれない。

 このまま俺は試練の塔から追い出されるのか? それとも死んでしまうのか?
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