異世界呪われた救世主~異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす~

陽月純

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第一章 救世主と聖女

第42話 試練の塔攻略5

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 杖の石像の<ストーンランス>を受け、今にも殺されそうな俺に剣の石像が止めを刺そうと近付いてきていた。

 次に攻撃を受けたら確実に死んでしまう。動かないといけないのは頭では分かっていても、体が全く言うことを聞かない。刺さった槍を無理に抜いたせいもあって、腹からの出血がひどい。このせいもあって力が入らないのだ。

「駄目か……」

 負けを覚悟した時、ミコトの声が響いた。

「させない! <クイックヒール>!」

 ミコトありがとう……。でも、<クイックヒール>の回復量では、俺の深い傷は癒えない。出血量が少し収まりはしたが、体に力は入らない。もう剣が振り上げられている。間に合わない。石像が剣を振り下ろした時、俺の顔に血が飛んできた。

「きゃっ! 負けないんだから! <クイックヒール>!」

 なんと、ミコトが自分の身を挺して俺を守ってくれた。ミコトが受けた傷は<クイックヒール>でしっかりと傷は塞がっており、斬られた服から白い肌が見えた。

 うん? ちょっと待て。これって俺の方がDEF低いのか? ミコトヒーラーよりDEF低いってちょっとショックなんだけど……。

 そんな事より、二回目の<クイックヒール>で腹の出血は止まった。体も何とか動かせる。
 すぐに<錬気>でMPをOPに変換させると、起き上がり自分を<鑑定>。残りMPは三十三。つまり、<錬気>で回復出来る量は三十三。回復出来る量だけ、OPを<衝波>に注ぎ込む。

「これで、どうだぁっ!」

 剣の石像が顔面に掌底を叩き込むと同時に<衝波>を放つ。顔面に<衝波>を受けた剣の石像の顔が砕け、そのまま体も砕け散った。

 あと三体。斧の石像の方を見れば斧を拾い上げこちらへと向かってきていた。盾の石像は、杖の石像を守るように身構えている。杖の石像は自分の魔術で味方を攻撃しまくったのが堪えたのか、魔術を使う様子が無い。

 これは、今がチャンスじゃないのか。<錬気>でさっきの<衝波>分のOPを回復させ、魔力回復薬を一気に飲み干す。

 その間にもミコトが俺に<ヒール>を掛けてくれていた。みるみる傷が癒えていくが、流石に全回復とはいかない。

 斧の石像がミコト目掛け、横振りにフルスイングすると、ミコトは何とか躱す。斧はミコトのローブを掠め、ローブが破れてしまった。破れたローブに足を取られミコトが転倒してしまった。

「きゃっ」
「させるか!」

 転倒したミコトに斧を叩きつけようとしている石像にありったけのOPを注ぎ込んだ<衝波>を横腹に叩き込むと石像が拳の当たった場所から真っ二つに割れ、そのまま砕け散った。

 これで物理アタッカーは片付いた。後は、盾と杖の二体だ。それが終わったらポーラの助太刀に。そういえば、ポーラは大丈夫なのか? ポーラの方を見ると、ポーラもいつの間にか剣と斧の石像二体だけになっていた。
この調子だと俺より先に片が付きそうだ。

「でも、俺だって負けないぜ。んぐ」

 ルーティーンのようになってきた<錬気>、魔力回復薬の動作を終わらせると、盾と杖の石像へと向かって駆け出す。

 盾の石像には、<衝波>しか通用しない。そして、杖の石像の魔術でダメージを受けている事を考えると、たぶん全力の<衝波>二発。これで倒せるはずだ。

 杖の石像が<ストーンアロー>を無数に飛ばして来た。飛んで来る石の矢を回避しながら、盾の石像へと近付くと、石像の持つ盾を蹴り、奴の頭を飛び越す。振り向き様に石像の顔面に一発。<衝波>を叩き込めば、石像がよろめく。

 この隙に<錬気>でOPを回復させ、<衝波>の動作に入った時、杖の石像が<ストーンアロー>を大量に撃ち出した。

「やばい。これはやばいって!」

 咄嗟に盾の石像の陰に隠れ、石の矢から逃れる。放たれた石の矢のほとんどが盾の石像の背中に刺さり、外れた矢の内の何本かはミコトに命中した。

「ミコト!」

 俺の呼びかけにミコトは大丈夫と手で俺が寄るのを制止し、命中した場所を手でパッパッと埃を払うように叩く。

 ……無傷だった……

 ミコトのMDEF魔防どれだけあるのだろうかと疑問を浮かべてみたが、今の石の矢で盾の石像も砕け散った。残すは杖の石像だけだ。こいつなら打撃で倒せる。魔術に気を付ければどうという敵じゃない。

 <双牙>を両拳に掛けると、<ストーンアロー>、<ストーンランス>の狙いを定められないように孤を描きながら近付く。

 狙いを定める事が出来ない杖の石像は、俺の動きを追いかけるように石の矢を連続で放ち続けるがMPが切れたのか、ついに石の矢が止まった。一気に距離を詰めた俺は左右の連打で<疾風>を叩き込めば杖の石像が砕け散った。

「やったぁ。倒したぞ! ポーラは!?」

 ポーラの方を見てみれば、斧の石像に剣を突き刺した所だった。他の石像はもう粉々に砕け散っている。そして、今の攻撃が止めの一撃だったのだろう。斧の石像がバラバラと砕けていった。

「……終わった、わ……。アスカ。ミコト。無事?」
「何とかな。ミコトが居なかったらやられていたよ」
「そんな。私こそ、二人が居なかったら、敵を倒すことなんて出来なかったですよ」
「そう。二人共無事で何よりだわ」

 十二体の石像を破壊し、暫く様子を伺っていたが、新手の石像が現れる様子もなく、どうやらこの階層の試練は終わったようだ。

「………次は………、来ないわね。どうやら、クリアしたみたい」
「そうだな。じゃあ、あの階段を上がろう」
「はい。行きましょう!」

 俺とミコトが階段へ向かって歩き出そうとしたら、ポーラに呼び止められた。

「待って。二人共」

 歩みを止めて、ポーラの方へと振り向くとポーラは言葉を続けた。

「たぶん、ここを上がればプリメラ様にお会い出来ると思うのだけれど、万が一の事を考えて回復とステータスの確認はしておきましょう」

 確かにそうだな。ステータスプレートを確認してみれば、レベルが十四になっていた。二つも上がるとは……。ポーラの強さに合わせてあるだけあって、経験値の量が多かったのだろう。

 スキルは……。残念ながら新しく増えたスキルは無かった。こればっかりはしょうがない。

 ミコトもステータスプレートを確認すると、ミコトはレベルが三上がっていたらしい。

「新しい魔術も使えるようになりましたけど、これも防御魔術みたいです。これじゃあ未だに私は攻撃のお手伝いが出来ないですね」

 回復役なのだから攻撃魔術を覚える必要は無いと思うのだが、ミコトとしては攻撃に参加出来ないのは嫌らしい。まあ、少しは貢献したいと思うのも当然と言えば当然か。

 ポーラもレベルが上がり、剣の石像が使っていた剣撃を飛ばすアーツ。<ソニックエッジ>を覚えたらしい。これまで遠距離は<ファイアアロー>を使っていたが、MATKが低いポーラには有難いアーツだろう。

 少し戦力も増強出来た。自分たちの現状を確認した俺達は、顔を見合わせ頷くと、階段を上っていった。
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