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第二章 魔王と戦争
第57話 進化した加護
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クイーンとの戦闘中、アルが念話で語りかけてきた言葉「加護の力」。それは、アルの本体とかいう神様の加護。プリメラがあの方と言っていたから、勝手に神様と思っている。
あの力を使えれば確かにクイーンとも互角以上に戦えると思う。でも、これまでに発動したのは、俺の命の危機に面した時。それも必ず発動するわけじゃなかった。
死にかけても発動せず、<衝波>とミコトの回復魔術で何とか乗り越える事が出来た事もある。そんなあやふやな力に頼ってはいられない。
とはいえ、<衝波>の一発であのクイーンが倒れるとも思えない。ダメージで体が思うように動かない。
<衝波>、<練気>、魔力回復薬、<衝波>のループに頼るにも、こいつの攻撃を俺が何処まで耐えられる? たぶん、俺の方が先にやられる。そんな気がする。
『その加護の力が不安定で使えないんだろう。分身体ならアル、お前がどうにかしてくれよ』
俺の返事に対するアルの回答は、
『何を言っているのぉ? 今の君ならぁ、意識すれば使えるようになっているでしょぉ?』
『アル、何を言っているんだ?そ んな自由に使えたら何も困らないじゃないか』
『まだ、完全には使えないと思うよぉ。時間制約や連続で使えないとかぁ、問題はあると思うけどぉ、それも他の魔王や女神と会えば、改善されていくと思うよぉ』
それは、プリメラとアルが会った事で、加護の力が強化されたということか。確かにそう言われれば、ステータスプレートの文字の色が変わっていたな。それの意味するのが、このことなのか?
「賭けてみるしかない……か」
頼むぞ。加護の力、発動してくれ!
「アルの本体! 俺に力をぉぉ!」
天に向かって叫ぶ。俺の叫びが、願いが届いたのか。体に力が漲ってくる。俺の体を金色の光が包み込む。
「出来た。俺の意思で発動出来た……」
加護の力を発動した俺の頭の中に一分という数字が浮かぶ。たぶん、これが今使える加護の力の制限時間なのだろう。前は制限時間などなかったが、意思の力で発動出来るようになった事によるデメリットか?
でも、発動するかも分からない状態から見れば、これはどうという事はない。取って置きの切り札として、残しておけばいいだけの事。さあ、気持ち悪い虫退治の時間だ。
「時間が無いんだ。一気に行くぞ」
こっちへ向かって来るクイーンに向かって、俺も駆け出す。加護の力によって強化された俺は一瞬でクイーンとの距離を詰める。突然距離を詰められたクイーンは慌てて体を起こし、俺に伸し掛かっくる。
「そんな攻撃、今の俺には当たらない」
頭上に落ちてくるクイーンの体を避け、クイーンの体の側面に拳を叩き込む。加護の力が有るのと無いのとでは雲泥の差だ。
オーガファングの爪はしっかりとクイーンの体に食い込み、明らかにダメージが通っている。
あと、残り四十秒程度か?
クイーンが<ストーンアロー>を放つ。石の矢を俺は左拳で叩き伏せる。痛くも痒くもない。時間が無い。<衝波>一撃で倒せるかはまだ分からない。慌てず確実にダメージを与える方が絶対いい。右手に<双牙>、<毒手>を使う。
「喰らえ! <疾風>!」
高速突きはクイーンの体に深々と突き刺さり、<毒手>の効果でクイーンが毒に侵される。バタバタと暴れ狂うクイーンは再び地中へと逃げてしまった。
「あ、しまった」
もう残り十秒も無い。止めを刺す事が出来なかった。俺の体を覆っていた金の光が消えてしまった。
「くっ。加護が無くなったらこんなにキツイのか……」
クイーンが毒のせいで地中で暴れているのだろう。足下がグラグラと地震のように揺れている。このまま放っておけば死んでくれるか? そんな事を思っていたが、クイーンは俺の背後から地上へと現れると、俺を喰おうとしているのだろう。大きな口を開けて襲い掛かってくる。
「毒の影響で動きが鈍い。これでどうだ!<衝波>」
残りのOPの殆どを使用して、クイーンの顔面に<衝波>を叩き込んでやれば、ズシンと体を地面に落とし、光の粒子へと変わっていった。
「や、やったぞ。倒せた……」
ダメージで体は痛いが、我慢をしてミコトの所へと戻る。
「ミコト、バランさんは?」
「うん。何とか血は止まったけど、両手は……」
「すみません。バランさん。俺たちを助ける為に……」
「気にするな。俺なんかより、救世主のお前たちが生きるべきだろう。俺は、俺に出来る事をやったまでだ。それに、俺の方こそ、死んだと思ったが、こうして命を助けて貰ったんだ。感謝してるぞ」
バランは無くなった両腕を見ながら、ミコトに礼を言うと、
「さて、兎に角だ。これで先へと進む事が出来るようになった訳だ。皆に合図を出さないとな。俺の腰の袋に狼煙を上げる道具が入っている。悪いがそれで合図を出してくれるか?」
腰の袋に視線をやりながら俺に狼煙を上げるように頼んできた。俺は頷くと、袋の中から狼煙用の筒を取り出し、それに火を付けた。
狼煙が上がり、暫く待っていると逃げ出した冒険者、そして後ろで待機させていた商隊がやって来た。バランの両腕が無くなっている姿を見て、驚くと共に、俺がクイーンを倒したという事が最も驚かれたのだった。
「ロックワームクイーンを倒したのですか?貴方が一人で? 本当に?」
そこまで疑わなくてもいいと思うけど。
「はい。だいぶ苦労はしましたが」
「そうですか。いえ、あれはレベル三十を超えたベテラン冒険者がパーティを組んで何とか倒せるようなモンスターなので、信じられなくて。でも、そうですね。嘘を付いているようにも見えませんし、何よりバランの状態を見れば、本当のことなのでしょう」
あれはそんなにヤバい奴だったのか。勝てて良かったと一安心する。
「アスカさん、ミコトさん。お二人にお願いがあるのですが……」
商隊の主が俺達に何の願い事があるのだろうか?
「何でしょうか?」
「バランの治療の為に、当初の予定には無かった近くの村へ立ち寄りたいのですが。宜しいですか?」
「勿論。構いません」
近くの村へ寄ればブラッド城への到着が遅れる。早く向かいたいと言っていたから気にしてくれたのだろう。
「ありがとうございます」
商隊の主は深々と頭を下げると、自分の馬車へと戻り、近くの村に立ち寄ると御者へ指示を出していた。
「すまんな。早くブラッド城へ行きたかったのだろうが……」
「いえ、大丈夫です。徒歩で向かうよりは早く着けるのですから、気になさらないでください」
「そうだよぉ。アスカもミコトも君のおかげで命が助かったんだからぁ。こっちの方が感謝だよぉ」
「アル。お前が言うなよな。でも、バランさん。アルの言う通りだから。命の恩人なんだ。バランさんの治療が最優先だよ」
バランは照れくさそうに笑いながら、俺達の前から立ち去って行った。そして、商隊が近くの村へと出発したのだった。
あの力を使えれば確かにクイーンとも互角以上に戦えると思う。でも、これまでに発動したのは、俺の命の危機に面した時。それも必ず発動するわけじゃなかった。
死にかけても発動せず、<衝波>とミコトの回復魔術で何とか乗り越える事が出来た事もある。そんなあやふやな力に頼ってはいられない。
とはいえ、<衝波>の一発であのクイーンが倒れるとも思えない。ダメージで体が思うように動かない。
<衝波>、<練気>、魔力回復薬、<衝波>のループに頼るにも、こいつの攻撃を俺が何処まで耐えられる? たぶん、俺の方が先にやられる。そんな気がする。
『その加護の力が不安定で使えないんだろう。分身体ならアル、お前がどうにかしてくれよ』
俺の返事に対するアルの回答は、
『何を言っているのぉ? 今の君ならぁ、意識すれば使えるようになっているでしょぉ?』
『アル、何を言っているんだ?そ んな自由に使えたら何も困らないじゃないか』
『まだ、完全には使えないと思うよぉ。時間制約や連続で使えないとかぁ、問題はあると思うけどぉ、それも他の魔王や女神と会えば、改善されていくと思うよぉ』
それは、プリメラとアルが会った事で、加護の力が強化されたということか。確かにそう言われれば、ステータスプレートの文字の色が変わっていたな。それの意味するのが、このことなのか?
「賭けてみるしかない……か」
頼むぞ。加護の力、発動してくれ!
「アルの本体! 俺に力をぉぉ!」
天に向かって叫ぶ。俺の叫びが、願いが届いたのか。体に力が漲ってくる。俺の体を金色の光が包み込む。
「出来た。俺の意思で発動出来た……」
加護の力を発動した俺の頭の中に一分という数字が浮かぶ。たぶん、これが今使える加護の力の制限時間なのだろう。前は制限時間などなかったが、意思の力で発動出来るようになった事によるデメリットか?
でも、発動するかも分からない状態から見れば、これはどうという事はない。取って置きの切り札として、残しておけばいいだけの事。さあ、気持ち悪い虫退治の時間だ。
「時間が無いんだ。一気に行くぞ」
こっちへ向かって来るクイーンに向かって、俺も駆け出す。加護の力によって強化された俺は一瞬でクイーンとの距離を詰める。突然距離を詰められたクイーンは慌てて体を起こし、俺に伸し掛かっくる。
「そんな攻撃、今の俺には当たらない」
頭上に落ちてくるクイーンの体を避け、クイーンの体の側面に拳を叩き込む。加護の力が有るのと無いのとでは雲泥の差だ。
オーガファングの爪はしっかりとクイーンの体に食い込み、明らかにダメージが通っている。
あと、残り四十秒程度か?
クイーンが<ストーンアロー>を放つ。石の矢を俺は左拳で叩き伏せる。痛くも痒くもない。時間が無い。<衝波>一撃で倒せるかはまだ分からない。慌てず確実にダメージを与える方が絶対いい。右手に<双牙>、<毒手>を使う。
「喰らえ! <疾風>!」
高速突きはクイーンの体に深々と突き刺さり、<毒手>の効果でクイーンが毒に侵される。バタバタと暴れ狂うクイーンは再び地中へと逃げてしまった。
「あ、しまった」
もう残り十秒も無い。止めを刺す事が出来なかった。俺の体を覆っていた金の光が消えてしまった。
「くっ。加護が無くなったらこんなにキツイのか……」
クイーンが毒のせいで地中で暴れているのだろう。足下がグラグラと地震のように揺れている。このまま放っておけば死んでくれるか? そんな事を思っていたが、クイーンは俺の背後から地上へと現れると、俺を喰おうとしているのだろう。大きな口を開けて襲い掛かってくる。
「毒の影響で動きが鈍い。これでどうだ!<衝波>」
残りのOPの殆どを使用して、クイーンの顔面に<衝波>を叩き込んでやれば、ズシンと体を地面に落とし、光の粒子へと変わっていった。
「や、やったぞ。倒せた……」
ダメージで体は痛いが、我慢をしてミコトの所へと戻る。
「ミコト、バランさんは?」
「うん。何とか血は止まったけど、両手は……」
「すみません。バランさん。俺たちを助ける為に……」
「気にするな。俺なんかより、救世主のお前たちが生きるべきだろう。俺は、俺に出来る事をやったまでだ。それに、俺の方こそ、死んだと思ったが、こうして命を助けて貰ったんだ。感謝してるぞ」
バランは無くなった両腕を見ながら、ミコトに礼を言うと、
「さて、兎に角だ。これで先へと進む事が出来るようになった訳だ。皆に合図を出さないとな。俺の腰の袋に狼煙を上げる道具が入っている。悪いがそれで合図を出してくれるか?」
腰の袋に視線をやりながら俺に狼煙を上げるように頼んできた。俺は頷くと、袋の中から狼煙用の筒を取り出し、それに火を付けた。
狼煙が上がり、暫く待っていると逃げ出した冒険者、そして後ろで待機させていた商隊がやって来た。バランの両腕が無くなっている姿を見て、驚くと共に、俺がクイーンを倒したという事が最も驚かれたのだった。
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そこまで疑わなくてもいいと思うけど。
「はい。だいぶ苦労はしましたが」
「そうですか。いえ、あれはレベル三十を超えたベテラン冒険者がパーティを組んで何とか倒せるようなモンスターなので、信じられなくて。でも、そうですね。嘘を付いているようにも見えませんし、何よりバランの状態を見れば、本当のことなのでしょう」
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