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第二章 魔王と戦争
第76話 魔器
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竜蛇頭を潰した俺に怒ったのかキマイラの意識は俺に向いていた。
執拗に追いかけてくるキマイラに対し、俺は山羊頭の睡眠攻撃が届かない距離を保って回避に専念している。勿論、<錬気>でOPを回復させ、無くなったMPを回復するために<癒しの光>を使うのは忘れない。
「<ウォーターアロー>」
ミコトの放った水の矢が山羊頭に刺さる。
「メェエエエエ!」
「ガァアアアア!」
山羊頭、獅子頭が怒声を上げ、ターゲットをミコトに変えたのか、進路を変えミコトに向かって駆け出す。
「もう一発。<ウォーターアロー>!」
山羊頭に向けて放たれた水の矢をキマイラは横に飛び回避しながらミコトとの距離を詰めていく。
「させないよ」
ミサオがFDを動かし、ミコトとキマイラの間に潜り込ませると、山羊頭を殴りつけた。FDの攻撃で足を止めたキマイラだが、すぐにFDへと反撃をする。前足でFDを払い飛ばすと、後ろ脚だけで体を支え、ミコトに前足を叩きつけるように飛び掛かる。
「きゃあっ」
キマイラの攻撃をロッドで受け止めたミコトだったが、力負けしロッドを弾かれてしまう。キマイラはすぐに反対の前足でミコトを押さえつけると獅子頭が首元に咬みつこうと大きく口を開ける。
「させるかぁ!」
キマイラの横に回り込んだ俺は全力で獅子頭の横っ面を殴りつける。だが、俺の力では獅子頭の勢いを止める事が出来なかった。せいぜい気を逸らした程度だ。
気を逸らした瞬間にFDがミコトを押さえつけている足を掴み上げた。押さえていた足が退いた事でミコトも何とか這い出すことが出来た。
「メ……」
山羊頭が睡眠攻撃を行おうとした所をFDが下から殴りつけ、山羊の口を閉じる。
「そう何度もさせないよ」
「ミサオ、ナイス!」
「今! <ウォーターアロー>」
水の矢が山羊の目に突き刺さり、ガクリと頭を垂らすとピクリとも動かなくなった。
「やった。山羊頭を潰したわ」
「いいぞ、ミコト」
これで残すは炎を吐き出す獅子頭だけ。厄介な回復と状態異常攻撃が無くなってしまえばこっちの物だ。
とはいえ、油断は禁物だな。力もかなり強いようだから、一撃でも受けたら一気に流れが変わってしまうかもしれない。
「よし、このまま一気に行くぞ。攻撃には十分注意を忘れるな!」
「分かってるわよ! やれ!」
ミサオの命令でFDが俺とは反対側のキマイラの側面に回り込み腹に突きを放った。腹に一撃を受けたキマイラはFDの方へと頭を向ける。
その隙に俺が反対の腹を、ミコトが<ウォーターアロー>を獅子頭に向けて放った。
「グァアアア!」
キマイラがダメージで雄叫びを上げる。
効いている。主にミコトの<ウォーターアロー>なのだろうけど。全員で追撃をしようと攻撃の動作に入った時、キマイラの様子がおかしい。突然、動きが止まった。
「観念したのかな? FD!」
「ミサオ! 待った!」
FDに攻撃させようとするミサオを止めるが一足遅かった。キマイラの横腹に突きを放ったFDだったが、拳がキマイラの体に触れた瞬間、キマイラの体が炎に包まれ、FDの右腕が燃え上がる。
「嘘!」
「ミコト!」
「<ウォーターアロー>!」
ミコトの放った水の矢は、キマイラの体を包む炎に当たるとジュッという音と共に消えてしまった。
「うわぁ……」
あれはノーダメージだよな。というか、あれ、どうやってダメージを与えればいいんだよ。
ミコトが<ウォーターアロー>を同時に五本発動させ、連続でキマイラに向けて放つ。しかし、キマイラの体を包む炎は全ての水の矢を蒸発させてしまった。
「だめ。あれは下級魔術じゃどうにもならないわ」
「参ったな」
攻撃手段を失い、困っているとキマイラの纏っている炎に異変が起きる。バチバチとスパークのような物が炎の周りに現れた。
「まさか、雷?」
竜蛇頭が使っていた雷が混ざっているのか? キマイラはその雷を纏った炎を球状に作り変えると、ミコトに向けて撃ち出した。
「<ホーリーバリア>!」
ミコトの張った障壁に当たった球は爆発すると、着弾地点周囲に雷をばら撒いた。
「マジ!?」
あんなの喰らったら一瞬でくたばるぞ。でも、あの球を作った時は、体を包んでいた炎も消える。今は炎だけだ。つまり、雷を同時に纏えば、あの攻撃が来ると言うこと。予備動作が分かれば対処は出来るか。
「ちょっと、あんなのどうすればいいのよ」
ミサオはさっきの強烈な一撃の印象が強くて気付かなかったみたいだ。
「ミサオ、今の攻撃が来る時、炎が消えるからFDに攻撃させて。私は大丈夫」
どうやらミコトも気付いたみたいだな。再び雷を纏った炎の球が作られるとキマイラの体を包んでいた炎が無くなる。まだだ。まだ早い。ミサオがFDに攻撃させる。
「ミサオ! まだ早い!」
「えっ!? だって、今何も無いじゃない!」
キマイラが攻撃対象をミコトからFDに変更した。炎の球をFDへと撃ち出す。
「当たってたまるかぁ」
FDが人では絶対に無理な体勢であろう、体を後ろに直角に折り曲げ、炎の球をやり過ごす。そして、上体を元に戻す勢いのまま、キマイラの顔面に両腕を突き出した。
キマイラの顔面にFDの拳がモロに入りよろける。更にミコトの放っていた水の矢五本が次々と体に刺さる。
「今しか無い! こいつでどうだぁ!」
一気に距離を詰め、全力の<衝波>をキマイラの獅子頭に叩き込む。キマイラが動かなくなった。暫く経っても全く動かない。
ミサオはキマイラの横まで近付いて、つん、と人差し指でキマイラをつつくとそのままキマイラは倒れてしまった。
「やった! 勝ったぁ」
「ふぅ……」
「やったね。アスカ、ミサオ」
「二人共、ありがとう!これで魔器を手に入れられる」
「そうだな。じゃあ祠に……」
祠の方へと向かおうとするとアルが飛び出して来る。
「ちょっと待ったぁ。アスカぁ。忘れてないかぁい?」
「何を?」
「こいつだよぉ」
アルは倒れているキマイラを指差す。
「僕のぉ、感が告げているよぉ。こいつは良い素材が手に入るってぇ」
そう言ってアルは大きく息を吸い込みキマイラの死骸を呑み込んだ。
「はいっ」
そしてキマイラの素材とは思えない、拳大サイズの球状の石を俺に手渡す。
「何だこれ?」
アルに貰った石を取り敢えず<空納>で仕舞い込み、俺たちは祠の中へと入った。祠の中には、一つの台座があるだけのシンプルな造りだった。
「ここに手を翳すのかな?」
ミサオが台座に手を翳すと、ミサオの手が闇に包まれる。
「な、何!?」
そして、闇が消えるとミサオの手の中に指輪があった。
「これが魔器?」
「そうだろうな。俺は……と」
ミサオの次に俺が手を翳すと同じように闇に包まれる。気持ちミサオの時より闇が大きいのは気の所為だろうか? そして、俺の手には靴があった。
「靴か」
「最後は私ね」
ミコトが手を翳すと闇がミコトの体全体を包み込む。
「え? 何!?」
やがて闇が消えたが、ミコトが新しく装備品を身に着けているようには見えない。
「どういう事? 私には魔器は渡せないとか、そんなことあるのかな?」
俺とミサオは分からないと首を横に振った。ミコトはがっかりした表情で台座にもう一度手を翳してみたが、何も起きなかった。
執拗に追いかけてくるキマイラに対し、俺は山羊頭の睡眠攻撃が届かない距離を保って回避に専念している。勿論、<錬気>でOPを回復させ、無くなったMPを回復するために<癒しの光>を使うのは忘れない。
「<ウォーターアロー>」
ミコトの放った水の矢が山羊頭に刺さる。
「メェエエエエ!」
「ガァアアアア!」
山羊頭、獅子頭が怒声を上げ、ターゲットをミコトに変えたのか、進路を変えミコトに向かって駆け出す。
「もう一発。<ウォーターアロー>!」
山羊頭に向けて放たれた水の矢をキマイラは横に飛び回避しながらミコトとの距離を詰めていく。
「させないよ」
ミサオがFDを動かし、ミコトとキマイラの間に潜り込ませると、山羊頭を殴りつけた。FDの攻撃で足を止めたキマイラだが、すぐにFDへと反撃をする。前足でFDを払い飛ばすと、後ろ脚だけで体を支え、ミコトに前足を叩きつけるように飛び掛かる。
「きゃあっ」
キマイラの攻撃をロッドで受け止めたミコトだったが、力負けしロッドを弾かれてしまう。キマイラはすぐに反対の前足でミコトを押さえつけると獅子頭が首元に咬みつこうと大きく口を開ける。
「させるかぁ!」
キマイラの横に回り込んだ俺は全力で獅子頭の横っ面を殴りつける。だが、俺の力では獅子頭の勢いを止める事が出来なかった。せいぜい気を逸らした程度だ。
気を逸らした瞬間にFDがミコトを押さえつけている足を掴み上げた。押さえていた足が退いた事でミコトも何とか這い出すことが出来た。
「メ……」
山羊頭が睡眠攻撃を行おうとした所をFDが下から殴りつけ、山羊の口を閉じる。
「そう何度もさせないよ」
「ミサオ、ナイス!」
「今! <ウォーターアロー>」
水の矢が山羊の目に突き刺さり、ガクリと頭を垂らすとピクリとも動かなくなった。
「やった。山羊頭を潰したわ」
「いいぞ、ミコト」
これで残すは炎を吐き出す獅子頭だけ。厄介な回復と状態異常攻撃が無くなってしまえばこっちの物だ。
とはいえ、油断は禁物だな。力もかなり強いようだから、一撃でも受けたら一気に流れが変わってしまうかもしれない。
「よし、このまま一気に行くぞ。攻撃には十分注意を忘れるな!」
「分かってるわよ! やれ!」
ミサオの命令でFDが俺とは反対側のキマイラの側面に回り込み腹に突きを放った。腹に一撃を受けたキマイラはFDの方へと頭を向ける。
その隙に俺が反対の腹を、ミコトが<ウォーターアロー>を獅子頭に向けて放った。
「グァアアア!」
キマイラがダメージで雄叫びを上げる。
効いている。主にミコトの<ウォーターアロー>なのだろうけど。全員で追撃をしようと攻撃の動作に入った時、キマイラの様子がおかしい。突然、動きが止まった。
「観念したのかな? FD!」
「ミサオ! 待った!」
FDに攻撃させようとするミサオを止めるが一足遅かった。キマイラの横腹に突きを放ったFDだったが、拳がキマイラの体に触れた瞬間、キマイラの体が炎に包まれ、FDの右腕が燃え上がる。
「嘘!」
「ミコト!」
「<ウォーターアロー>!」
ミコトの放った水の矢は、キマイラの体を包む炎に当たるとジュッという音と共に消えてしまった。
「うわぁ……」
あれはノーダメージだよな。というか、あれ、どうやってダメージを与えればいいんだよ。
ミコトが<ウォーターアロー>を同時に五本発動させ、連続でキマイラに向けて放つ。しかし、キマイラの体を包む炎は全ての水の矢を蒸発させてしまった。
「だめ。あれは下級魔術じゃどうにもならないわ」
「参ったな」
攻撃手段を失い、困っているとキマイラの纏っている炎に異変が起きる。バチバチとスパークのような物が炎の周りに現れた。
「まさか、雷?」
竜蛇頭が使っていた雷が混ざっているのか? キマイラはその雷を纏った炎を球状に作り変えると、ミコトに向けて撃ち出した。
「<ホーリーバリア>!」
ミコトの張った障壁に当たった球は爆発すると、着弾地点周囲に雷をばら撒いた。
「マジ!?」
あんなの喰らったら一瞬でくたばるぞ。でも、あの球を作った時は、体を包んでいた炎も消える。今は炎だけだ。つまり、雷を同時に纏えば、あの攻撃が来ると言うこと。予備動作が分かれば対処は出来るか。
「ちょっと、あんなのどうすればいいのよ」
ミサオはさっきの強烈な一撃の印象が強くて気付かなかったみたいだ。
「ミサオ、今の攻撃が来る時、炎が消えるからFDに攻撃させて。私は大丈夫」
どうやらミコトも気付いたみたいだな。再び雷を纏った炎の球が作られるとキマイラの体を包んでいた炎が無くなる。まだだ。まだ早い。ミサオがFDに攻撃させる。
「ミサオ! まだ早い!」
「えっ!? だって、今何も無いじゃない!」
キマイラが攻撃対象をミコトからFDに変更した。炎の球をFDへと撃ち出す。
「当たってたまるかぁ」
FDが人では絶対に無理な体勢であろう、体を後ろに直角に折り曲げ、炎の球をやり過ごす。そして、上体を元に戻す勢いのまま、キマイラの顔面に両腕を突き出した。
キマイラの顔面にFDの拳がモロに入りよろける。更にミコトの放っていた水の矢五本が次々と体に刺さる。
「今しか無い! こいつでどうだぁ!」
一気に距離を詰め、全力の<衝波>をキマイラの獅子頭に叩き込む。キマイラが動かなくなった。暫く経っても全く動かない。
ミサオはキマイラの横まで近付いて、つん、と人差し指でキマイラをつつくとそのままキマイラは倒れてしまった。
「やった! 勝ったぁ」
「ふぅ……」
「やったね。アスカ、ミサオ」
「二人共、ありがとう!これで魔器を手に入れられる」
「そうだな。じゃあ祠に……」
祠の方へと向かおうとするとアルが飛び出して来る。
「ちょっと待ったぁ。アスカぁ。忘れてないかぁい?」
「何を?」
「こいつだよぉ」
アルは倒れているキマイラを指差す。
「僕のぉ、感が告げているよぉ。こいつは良い素材が手に入るってぇ」
そう言ってアルは大きく息を吸い込みキマイラの死骸を呑み込んだ。
「はいっ」
そしてキマイラの素材とは思えない、拳大サイズの球状の石を俺に手渡す。
「何だこれ?」
アルに貰った石を取り敢えず<空納>で仕舞い込み、俺たちは祠の中へと入った。祠の中には、一つの台座があるだけのシンプルな造りだった。
「ここに手を翳すのかな?」
ミサオが台座に手を翳すと、ミサオの手が闇に包まれる。
「な、何!?」
そして、闇が消えるとミサオの手の中に指輪があった。
「これが魔器?」
「そうだろうな。俺は……と」
ミサオの次に俺が手を翳すと同じように闇に包まれる。気持ちミサオの時より闇が大きいのは気の所為だろうか? そして、俺の手には靴があった。
「靴か」
「最後は私ね」
ミコトが手を翳すと闇がミコトの体全体を包み込む。
「え? 何!?」
やがて闇が消えたが、ミコトが新しく装備品を身に着けているようには見えない。
「どういう事? 私には魔器は渡せないとか、そんなことあるのかな?」
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