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第二章 魔王と戦争
第83話 敗北
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ヒデオが使う謎のスキルによる魔弾の回避方法が思い付かない。だからといって、このまま黙って撃たれ続けるのも嫌だ。
だったら、撃たれる前に殴り飛ばす。シンプルだけどこれが一番だ。そう決めた俺はヒデオに向かって走る。
「猪みたいに突っ込んで来たって無駄だ。死ね」
ヒデオはそう言うと、魔銃の引き金を引く。放たれた魔弾は一直線に俺の方へと向ってくる。さっきよりも大きく右に飛び出すと今度は躱せた。すぐにヒデオの方へと走り始める。
「ちっ」
ヒデオの小さな舌打ちが聞こえた。今の舌打ちは、スキルを使っていたのに躱された事による舌打ちなのか? それとも通常攻撃だったが、単純に躱された事に対する舌打ちなのか? まぁ、どっちにしろ攻撃を躱された事に対する舌打ちなのは違いない。構わず攻撃するたけだ。
ヒデオは次の弾を撃ち出すために俺の方へと銃口を向ける。俺は向けられた瞬間に左に飛び、射線上から外れる。再び銃口が向けられ、すぐに魔弾が放たれた。今度は更に左に飛び、転がりながら魔弾を躱す。
「くそっ」
さっきよりも悔しがるヒデオを見て、今度はスキルを使った攻撃だったと確信した。その前の攻撃は、普通だったのだろう。悔しがり方がさっきと全く違う。
ここからなら俺の射程圏内に入れる。飛び上がりながら、右ストレートをヒデオに向けて放つ。ヒデオの反応が遅れ、俺の右ストレートは左頬にクリーンヒットする。
だが、ヒデオの表情に変化はない。むしろ、蚊でも刺したか程度に俺の右腕を見ている。
「この程度で俺を倒す? 笑わせんな」
レベルアップして少しは攻撃力も上がったと思っていたが、まだ足りないのか。
「いつまでくっついていやがる。離れろっ」
ヒデオは俺の顔を殴りつける。だが、驚いた事にダメージが無い。
「何だ。お前も非力じゃないか。魔銃が強力なだけなんだな!」
「ちっ。本当にムカつく野郎だ。いや、女か?」
「俺は男だっ」
俺から離れようとヒデオが後ろへ飛べば、俺もそれに合わせて前へ飛ぶ。嫌そうな顔を見せるヒデオだが、これが戦いというものだ。自分の優位な距離を保つのは当然。
「鬱陶しい! <魔銃(散)>」
バックステップと同時に散弾を放つがピッタリとくっついている俺は、弾が散らばる前に躱し、ヒデオの顔面に少しだけOPを使い<衝波>を当てる。
「お前の貧弱パンチなんか……」
さっきと同じく、ただ殴ってきたと思っていたヒデオは、ダメージが入った事に驚くと共に、怒りを露わにする。
「痛ってぇ。何でダメージが入るんだっ! くそっ。そういえば、防御力無視のアーツが使えたんだったな」
もう少し強めにすれば良かったかな? 本当は<衝波>で脳震盪を起こして倒すつもりだったんだが、ちょっとダメージが入っただけでまるで効いていない様子だ。
だが、ヒデオ自身、ダメージを受けたのが相当悔しかったのか、何か様子がおかしい。相変わらず俺との距離を取ろうとしているのは変わらないが、手に持っていた魔銃を消している。
それだけじゃない。ヒデオが魔銃を消した後から、周りの兵士達が再び慌てて距離を取ろうとしている。
あのアゲートとかいう奴すらもだ。何かを狙っているのは間違いなさそうだ。それも周囲に影響を及ぼす程の何かを。
この位置ならミコト達の方までは影響は無さそうだ。ミコト達の居る丘の方にはまだ兵士が残っている。
それから考えると半径三百メートル程か。どんな攻撃をするつもりなのか分からないが、くっついていれば攻撃は出来ないと見ていいだろうな。魔銃を使わない範囲攻撃となると魔術か?
いや、俺一人に範囲攻撃をする必要はない。そうすると、攻撃の余波が大きくて巻き込まれるのが嫌で周りの兵士は距離を取るように逃げているのか?
「そろそろ、いいか?」
周りの兵士が十分な距離を取ったのを確認したヒデオが立ち止まった。
「さぁ、俺の取って置きの一撃だ。思う存分味わって、死ね!」
「撃てるものなら撃ってみろ。この距離ならお前も巻き添えになるぞ」
俺の言葉にヒデオはニヤリと笑ったかと思うと、背後に黒い門が現れ、そこに飛び込んだ。
「しまった」
ヒデオがかなり離れた場所に姿を現したのが見える。
「<エクスターミネーションボム>」
ヒデオがアーツの名前を口にすると俺の目の前に黒い直径三十センチ程の球体が現れた。その球体が赤く点滅し始める。
「これ、ヤバい気がする」
試しに殴るか? 殴った瞬間に爆発されても困る。赤く点滅する黒い球体を両手で掴み後ろに投げると同時に、投げた反対方向へと駆け出す。
「うぉおおおおおおおっ」
走りながら後ろの様子を見ると点滅の速度が早くなり、今にも爆発しそうだ。投げた距離と走った距離から見ても、まだあの爆弾の射程範囲内だろう。
駄目だ。間に合わない。攻撃を受ける覚悟を決めたその時、爆弾が大きな音を立てて爆発する。背後から爆発によって起きた衝撃波が襲って来る。
「うわぁああああっ」
吹き飛ばされながらも<癒やしの光>で受けるダメージを軽減させるが、衝撃波の勢いが激しい。
確実にダメージが蓄積していっているのが分かる。身体全体が痛くてしょうが無い。
ゴロゴロと地面を転がりながら意識が飛ばないように努力する。もう何メートル転がったのか分からない。自分の体がどうなっているのかも分からない。身体中が痛みを通り越して感覚が麻痺しているようだ。
「あれは死んだな」
「隊長も加減って奴を知らないんだからな」
「勿体ねぇ。いい体してたのに……」
周りの兵士達の声がうっすらと聞こえる。やはり、吹き飛ばされて意識を失ってしまっていたみたいだ。声が聞こえるということは、俺はまだ生きている……のか。
爆発からどれくらいの時間が経った?
体が思うように動かない。完全にヒデオの攻撃にやられたみたいだ。どんな状況になっているのか全く分からない。
ミコトやミサオは?
アルはブラッドの下に辿り着いたのか?
<感知>や<探知>を使えば状況が少しは分かるかも知れないけど、俺がスキルを使っていることがバレたら殺されてしまうかもしれない。大人しく死んだフリをしておこう。尤も体は動かせないからそれしか出来ないんだけど。
だったら、撃たれる前に殴り飛ばす。シンプルだけどこれが一番だ。そう決めた俺はヒデオに向かって走る。
「猪みたいに突っ込んで来たって無駄だ。死ね」
ヒデオはそう言うと、魔銃の引き金を引く。放たれた魔弾は一直線に俺の方へと向ってくる。さっきよりも大きく右に飛び出すと今度は躱せた。すぐにヒデオの方へと走り始める。
「ちっ」
ヒデオの小さな舌打ちが聞こえた。今の舌打ちは、スキルを使っていたのに躱された事による舌打ちなのか? それとも通常攻撃だったが、単純に躱された事に対する舌打ちなのか? まぁ、どっちにしろ攻撃を躱された事に対する舌打ちなのは違いない。構わず攻撃するたけだ。
ヒデオは次の弾を撃ち出すために俺の方へと銃口を向ける。俺は向けられた瞬間に左に飛び、射線上から外れる。再び銃口が向けられ、すぐに魔弾が放たれた。今度は更に左に飛び、転がりながら魔弾を躱す。
「くそっ」
さっきよりも悔しがるヒデオを見て、今度はスキルを使った攻撃だったと確信した。その前の攻撃は、普通だったのだろう。悔しがり方がさっきと全く違う。
ここからなら俺の射程圏内に入れる。飛び上がりながら、右ストレートをヒデオに向けて放つ。ヒデオの反応が遅れ、俺の右ストレートは左頬にクリーンヒットする。
だが、ヒデオの表情に変化はない。むしろ、蚊でも刺したか程度に俺の右腕を見ている。
「この程度で俺を倒す? 笑わせんな」
レベルアップして少しは攻撃力も上がったと思っていたが、まだ足りないのか。
「いつまでくっついていやがる。離れろっ」
ヒデオは俺の顔を殴りつける。だが、驚いた事にダメージが無い。
「何だ。お前も非力じゃないか。魔銃が強力なだけなんだな!」
「ちっ。本当にムカつく野郎だ。いや、女か?」
「俺は男だっ」
俺から離れようとヒデオが後ろへ飛べば、俺もそれに合わせて前へ飛ぶ。嫌そうな顔を見せるヒデオだが、これが戦いというものだ。自分の優位な距離を保つのは当然。
「鬱陶しい! <魔銃(散)>」
バックステップと同時に散弾を放つがピッタリとくっついている俺は、弾が散らばる前に躱し、ヒデオの顔面に少しだけOPを使い<衝波>を当てる。
「お前の貧弱パンチなんか……」
さっきと同じく、ただ殴ってきたと思っていたヒデオは、ダメージが入った事に驚くと共に、怒りを露わにする。
「痛ってぇ。何でダメージが入るんだっ! くそっ。そういえば、防御力無視のアーツが使えたんだったな」
もう少し強めにすれば良かったかな? 本当は<衝波>で脳震盪を起こして倒すつもりだったんだが、ちょっとダメージが入っただけでまるで効いていない様子だ。
だが、ヒデオ自身、ダメージを受けたのが相当悔しかったのか、何か様子がおかしい。相変わらず俺との距離を取ろうとしているのは変わらないが、手に持っていた魔銃を消している。
それだけじゃない。ヒデオが魔銃を消した後から、周りの兵士達が再び慌てて距離を取ろうとしている。
あのアゲートとかいう奴すらもだ。何かを狙っているのは間違いなさそうだ。それも周囲に影響を及ぼす程の何かを。
この位置ならミコト達の方までは影響は無さそうだ。ミコト達の居る丘の方にはまだ兵士が残っている。
それから考えると半径三百メートル程か。どんな攻撃をするつもりなのか分からないが、くっついていれば攻撃は出来ないと見ていいだろうな。魔銃を使わない範囲攻撃となると魔術か?
いや、俺一人に範囲攻撃をする必要はない。そうすると、攻撃の余波が大きくて巻き込まれるのが嫌で周りの兵士は距離を取るように逃げているのか?
「そろそろ、いいか?」
周りの兵士が十分な距離を取ったのを確認したヒデオが立ち止まった。
「さぁ、俺の取って置きの一撃だ。思う存分味わって、死ね!」
「撃てるものなら撃ってみろ。この距離ならお前も巻き添えになるぞ」
俺の言葉にヒデオはニヤリと笑ったかと思うと、背後に黒い門が現れ、そこに飛び込んだ。
「しまった」
ヒデオがかなり離れた場所に姿を現したのが見える。
「<エクスターミネーションボム>」
ヒデオがアーツの名前を口にすると俺の目の前に黒い直径三十センチ程の球体が現れた。その球体が赤く点滅し始める。
「これ、ヤバい気がする」
試しに殴るか? 殴った瞬間に爆発されても困る。赤く点滅する黒い球体を両手で掴み後ろに投げると同時に、投げた反対方向へと駆け出す。
「うぉおおおおおおおっ」
走りながら後ろの様子を見ると点滅の速度が早くなり、今にも爆発しそうだ。投げた距離と走った距離から見ても、まだあの爆弾の射程範囲内だろう。
駄目だ。間に合わない。攻撃を受ける覚悟を決めたその時、爆弾が大きな音を立てて爆発する。背後から爆発によって起きた衝撃波が襲って来る。
「うわぁああああっ」
吹き飛ばされながらも<癒やしの光>で受けるダメージを軽減させるが、衝撃波の勢いが激しい。
確実にダメージが蓄積していっているのが分かる。身体全体が痛くてしょうが無い。
ゴロゴロと地面を転がりながら意識が飛ばないように努力する。もう何メートル転がったのか分からない。自分の体がどうなっているのかも分からない。身体中が痛みを通り越して感覚が麻痺しているようだ。
「あれは死んだな」
「隊長も加減って奴を知らないんだからな」
「勿体ねぇ。いい体してたのに……」
周りの兵士達の声がうっすらと聞こえる。やはり、吹き飛ばされて意識を失ってしまっていたみたいだ。声が聞こえるということは、俺はまだ生きている……のか。
爆発からどれくらいの時間が経った?
体が思うように動かない。完全にヒデオの攻撃にやられたみたいだ。どんな状況になっているのか全く分からない。
ミコトやミサオは?
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