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第2章 現存十二天守
第十夜 高知城と鰹のたたき
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「さあ、今日は四国横断や…」
香川の朝。金刀比羅宮近くの温泉宿で目を覚ましたワクカブは、まだ薄暗い空を見上げながら車にエンジンをかけた。目指すは高知、そしてその先の宇和島。しかし、道中に立ち寄るべき名所が、いくつも待っている。
まず訪れたのは、四国山地の断崖に立つ「小便小僧」。渓谷の先端に無造作に立つその姿には、言葉にできない開放感がある。
「これ…どう考えても“映え”とか気にしてへんよな。潔いわ…」
自然の懐に抱かれたユーモアにほっこりしつつ、さらに車を走らせる。
続いて訪れたのは、あの有名な「祖谷のかずら橋」。近くの地名を見てワクカブは目を細めた。
「“大歩危(おおぼけ)”に“小歩危(こぼけ)”…まるで俺の人生やな。大ボケ小ボケ取り揃えて、やかましいわ!」
車内でひとり漫才のようにボケてはツッコミ、窓の外に目をやる。山々の間を縫うように進む道、その合間に広がる渓谷美。吊り橋をそろそろと渡りながら、風に吹かれる足元に緊張し、渡り終えた時には自然と笑みがこぼれた。
昼食は、地元の食事処で祖谷そば。太く短い麺に山菜がたっぷり乗り、香り高いつゆとともに体に染み入るような味だ。
午後、高知市内に入ったワクカブはまず「浦戸城跡」へ向かった。戦国時代、長宗我部元親が本拠とした城で、現在は桂浜公園の一角にその跡が残る。城跡に立つと、遠く太平洋が広がっていた。
「この海の向こうに、元親は何を見とったんやろな…」
静かに風が吹き抜ける。城跡に残る石垣と、過ぎ去った時間が、旅人の心に語りかける。
続いて、高知城へ。
江戸初期に築かれた高知城は、現存する12天守のひとつ。しかも天守と本丸御殿の両方が現存しているという、全国でも稀有な存在だ。石垣の反り、木造の重厚な天守、それらを包み込むように桜の名残が咲き誇る。
「これは…山内一豊、やるなあ」
天守から市街を見下ろしながら、当時の藩政と城下町の広がりに思いを馳せた。
日が傾き始めた頃、桂浜にも立ち寄った。坂本龍馬像が空を見上げるその先に、海の水平線が広がる。波音だけが耳に残り、旅の時間がゆっくりと流れていく。
夜は、四万十川近くのペンションにお世話になることに。川のせせらぎが聞こえる、落ち着いた佇まいの宿だ。
夕食には、土佐名物・鰹のたたき。しかも、ペンションのご主人がその場で藁焼きを見せてくれた。炎で一気に炙られた鰹から立ち上る香ばしい香り。分厚く切られた身を塩と薬味でいただく。
「これは…酒が欲しくなる味やけど、明日もあるし、一杯だけにしとこか」
いただいたのは、地元の純米酒「無手無冠」。深みのある味わいが、鰹の旨味を引き立ててくれる。旅の疲れがすっと消えていくようだった。
「明日は宇和島やな…伊達の街に期待しとこ」
布団に身を預けると、四万十の夜風がカーテンを揺らし、心地よい眠りに誘ってくれた。
香川の朝。金刀比羅宮近くの温泉宿で目を覚ましたワクカブは、まだ薄暗い空を見上げながら車にエンジンをかけた。目指すは高知、そしてその先の宇和島。しかし、道中に立ち寄るべき名所が、いくつも待っている。
まず訪れたのは、四国山地の断崖に立つ「小便小僧」。渓谷の先端に無造作に立つその姿には、言葉にできない開放感がある。
「これ…どう考えても“映え”とか気にしてへんよな。潔いわ…」
自然の懐に抱かれたユーモアにほっこりしつつ、さらに車を走らせる。
続いて訪れたのは、あの有名な「祖谷のかずら橋」。近くの地名を見てワクカブは目を細めた。
「“大歩危(おおぼけ)”に“小歩危(こぼけ)”…まるで俺の人生やな。大ボケ小ボケ取り揃えて、やかましいわ!」
車内でひとり漫才のようにボケてはツッコミ、窓の外に目をやる。山々の間を縫うように進む道、その合間に広がる渓谷美。吊り橋をそろそろと渡りながら、風に吹かれる足元に緊張し、渡り終えた時には自然と笑みがこぼれた。
昼食は、地元の食事処で祖谷そば。太く短い麺に山菜がたっぷり乗り、香り高いつゆとともに体に染み入るような味だ。
午後、高知市内に入ったワクカブはまず「浦戸城跡」へ向かった。戦国時代、長宗我部元親が本拠とした城で、現在は桂浜公園の一角にその跡が残る。城跡に立つと、遠く太平洋が広がっていた。
「この海の向こうに、元親は何を見とったんやろな…」
静かに風が吹き抜ける。城跡に残る石垣と、過ぎ去った時間が、旅人の心に語りかける。
続いて、高知城へ。
江戸初期に築かれた高知城は、現存する12天守のひとつ。しかも天守と本丸御殿の両方が現存しているという、全国でも稀有な存在だ。石垣の反り、木造の重厚な天守、それらを包み込むように桜の名残が咲き誇る。
「これは…山内一豊、やるなあ」
天守から市街を見下ろしながら、当時の藩政と城下町の広がりに思いを馳せた。
日が傾き始めた頃、桂浜にも立ち寄った。坂本龍馬像が空を見上げるその先に、海の水平線が広がる。波音だけが耳に残り、旅の時間がゆっくりと流れていく。
夜は、四万十川近くのペンションにお世話になることに。川のせせらぎが聞こえる、落ち着いた佇まいの宿だ。
夕食には、土佐名物・鰹のたたき。しかも、ペンションのご主人がその場で藁焼きを見せてくれた。炎で一気に炙られた鰹から立ち上る香ばしい香り。分厚く切られた身を塩と薬味でいただく。
「これは…酒が欲しくなる味やけど、明日もあるし、一杯だけにしとこか」
いただいたのは、地元の純米酒「無手無冠」。深みのある味わいが、鰹の旨味を引き立ててくれる。旅の疲れがすっと消えていくようだった。
「明日は宇和島やな…伊達の街に期待しとこ」
布団に身を預けると、四万十の夜風がカーテンを揺らし、心地よい眠りに誘ってくれた。
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