クリシェ

トリヤマケイ

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海老チリや小龍包の彼方に見えるシアワセのアトモスフィア②

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   するとウェイターはくるりと振り返り、二百メートルくらい先に見える片隅に陣取る一団を指差して言った。

「あちらのお客様からお言付けをお預かり致しております」
 えー!

 なんですとー!

 マジすかー!

 ナオトとケンは息を呑んで次の言葉を待つ。

 「きょうは、おめでたい日なので、大いに呑んで食べてください、とのお言付けでございました」

 ふたりは、互いに見つめ合い、ふたりとも目が異常に見開いていくのをとめられなかった。

 いったい誰なんだろう? 

「あれかなちょうど彼だか彼の恋人だかの誕生パーティでもやっているのかも知れないね」
「となると、お礼もかねておめでとうの一言をいわないわけにもいかないだろうな」

 ナオトがそういうと、ケンも半信半疑の体ながらウンウンと頷く。

 知らぬ間にビールの大ジョッキが目の前に置かれている。

「じゃ、据膳食わぬは男の恥っていうしさ、食っちゃおーぜ。挨拶は後ってことで」

 それってちょっと意味合いが違うと思うけど、と頭の隅で思いつつ、ぼくも今まさに全身の筋肉を漲らせ獲物を狩る虎のように一皿目に挑みかかろうとしていた。

「なんかわけわかんないけど、このまま退席するなんてあまりにも失礼すぎるもんね」

「ということで」とナオト。

「ということで」とケン。

 ふたり示し合わせたように合掌すると満面に笑みを浮かべ、おもむろに食べはじめた。

 やがて「happy birthday to you」のおごそかな歌声がかすかに聴こえてくると、ナオトとケンも立ち上がって斉唱した。 

そして、歌い終わるや大ジョッキを高々と掲げ、一団に向けて声を張り上げた。

「おめでとうございま~す!」

 すると「ありがとう!」の声が返ってきた。もう最高な気分だった。

「それでは、こちらはこちらで。ご唱和ください」とふたりは向かい合う。

「いち、にっ、さん、ワカチコワカチコぉ!」

    幸せな余韻が巨大なドーム型の店内にふわふわと、たなびきながら、キラキラと瞬いていた。

「結婚してぇーなあ」とケン。
「右に同じ」とナオト。
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