10 / 73
ドストエフスキーと八つ墓村のコスプレーヤー
しおりを挟む
ケンも、えなこと一緒に豚の背脂みたいに蕩けて消えてしまったとなると、やはりえなこをストーキングしているとしかナオトには思えなかった。
豚の背脂でナオトは思い出したが、以前、理由はわからないけれどモスのポテトすら食べられないくらい具合が悪いことがあった。
そのときは、微熱のためからだろうが、油っこいのが吐き気を催すのだった。ナオトはそれでなくても油っこいのが苦手で、普段から大トロは食べられないし、エンガワでさえNGだった。レバーは絶対ムリだが、ミミガーは少しだけ齧ってみたことがあった。
そして、さらにまた嘔吐で思い出したが、山手線に乗っている時にもそんなことがあった。なんとなく気分がわるくなりそうだなと思ったら、ほんとうに気持ちが悪くなりはじめ、吐き気を催したのだった。
気分が悪くなりそうな予感がした後、マジに気分が悪くなったのか、気分は悪くないのに悪くなりそうだと思ってしまったから、マジに気分が悪くなってしまったのか、そこらへんの境界が曖昧でよく自分でもわからなかった。
とにかく狭く閉じられた空間である車内で小間物をぶちまけるなんて、ヤバすぎるので次の駅で慌てて降りたのだが、次の電車の中ではまったく気分が悪くなるようなことはなかった。
ま、それはともかく、モスの会計を済ませて外に出ると、ゾンビランドサガのコスプレちゃんねーたちが、まだたむろっていて、というか、アカペラみたいなことをやっていいる彼女らの周りに結構な人だかりができていて、それを横目に見ながら、ナオトはゾンビランドサガRの最終話よかったなあと思い出したのだった。
しかし、ケンはいったいどこに行ってしまったんだろう。えなこのきょうのスケジュールを確認すればわかることなのだろうが、それも面倒くさいのだった。
そのかわりに、ナオトはSNSに「最近ではSonny Boy というのを観たけれど、あのアナーキーさは尋常じゃなく、ついていけないので録画するのをやめた」と書いた。
東京リベンジャーズも毎週楽しみしているが、マイキーくんの兄貴を誤って殺してしまい、その事で年少に行った一虎が、逆にマイキーを逆恨みするといった凄まじい内容は、ドストエフスキー並みじゃないかと思うくらいなのだった。
ナオトも確か『罪と罰』を読んだはずなのだが、うろ覚えであり、話半分に聞いてほしいのだが、一虎がラスコリーニコフみたいに己れの非凡を証明するために高利貸しの老婆を殺したのと似ているとかじゃなく、本来ならば実兄を殺されてしまったマイキーこそが、大切な友人をそのことのために憎まなければならないという、とてつもない十字架を背負っているというのに、加害者である一虎がマイキーを逆恨みしているという、その人というもののどうしようもなく捩じくれたサガが描かれていることに対して、知ったかだけれど、ドストエフスキーみたいなエグさだなと思ったのだった。
そんなことをつらつら考えながら、ナオトは気まぐれで渋谷ではなく、原宿まで歩いて行こうと代々木公園へと歩きはじめた。
すると、公園内で撮影している一団がいて、かなり目立っていた。ナオトは以前、TV小道具をやっていたこともあり、撮影隊なんて珍しくもなかったので、足早に通り過ぎてしまおうと思った。
だが、どうやらカメラの前でマリオネットみたいにギクシャク、ギクシャクしながらいろんなポーズで笑顔をふりまいているのは、あのえなこにちがいなかった。
いや、ちがう。えなこのソックリさんで今、売り出し中のエレコだ。
フリフリの白い衣装をまとったエレコのその背景にはカボチャの馬車。ということは、むろんシンデレラのコスプレということなんだろうけれど、なぜかカボチャの馬車の横で、あの八つ墓村の鬼神も逃げ出すような出で立ちのコスプレをしたおっさんが、奇声を発しながら走りまわっていた。
頭に懐中電灯を角に見立てたように二本挿し、片手に猟銃もう片手にはサーベル。猟銃の弾ベルトを首から斜交いに二本かけていた。
シンデレラに八つ墓村という取り合わせに、ナオトは首をひねる以外なかったが、見ている内にじわじわと変な可笑しさが込み上げてくるのだった。
なんなんだろう、これはとナオトは思うのだったが、シュールな可笑しさというのは、言葉にはなかなか表せない。
シュールな笑いというのは、かなり高尚な笑いなのだ。
そして、この演出をしたのはいったい誰なのだろうとナオトは思った。世界の蜷川か? ということはカメラマンさんは、もしかしてと思ってカボチャの馬車の方に回り込んで見たら案の定、カメラは蜷川実花さんのソックリさんだった。
ナオトは、なにげにケンとこのカオスな世界を共有したいと思い、ケンに電話した。すると、自分のスマホのコール音にシンクロするように、近くでバイブが唸っている音がして、それが近づいてくる。
見ると、それは八つ墓村の白塗りしたおっさん。スマホを眺めながら耳にあてがった。
「もしもし……」
もう何も言わなくてもわかった。
豚の背脂でナオトは思い出したが、以前、理由はわからないけれどモスのポテトすら食べられないくらい具合が悪いことがあった。
そのときは、微熱のためからだろうが、油っこいのが吐き気を催すのだった。ナオトはそれでなくても油っこいのが苦手で、普段から大トロは食べられないし、エンガワでさえNGだった。レバーは絶対ムリだが、ミミガーは少しだけ齧ってみたことがあった。
そして、さらにまた嘔吐で思い出したが、山手線に乗っている時にもそんなことがあった。なんとなく気分がわるくなりそうだなと思ったら、ほんとうに気持ちが悪くなりはじめ、吐き気を催したのだった。
気分が悪くなりそうな予感がした後、マジに気分が悪くなったのか、気分は悪くないのに悪くなりそうだと思ってしまったから、マジに気分が悪くなってしまったのか、そこらへんの境界が曖昧でよく自分でもわからなかった。
とにかく狭く閉じられた空間である車内で小間物をぶちまけるなんて、ヤバすぎるので次の駅で慌てて降りたのだが、次の電車の中ではまったく気分が悪くなるようなことはなかった。
ま、それはともかく、モスの会計を済ませて外に出ると、ゾンビランドサガのコスプレちゃんねーたちが、まだたむろっていて、というか、アカペラみたいなことをやっていいる彼女らの周りに結構な人だかりができていて、それを横目に見ながら、ナオトはゾンビランドサガRの最終話よかったなあと思い出したのだった。
しかし、ケンはいったいどこに行ってしまったんだろう。えなこのきょうのスケジュールを確認すればわかることなのだろうが、それも面倒くさいのだった。
そのかわりに、ナオトはSNSに「最近ではSonny Boy というのを観たけれど、あのアナーキーさは尋常じゃなく、ついていけないので録画するのをやめた」と書いた。
東京リベンジャーズも毎週楽しみしているが、マイキーくんの兄貴を誤って殺してしまい、その事で年少に行った一虎が、逆にマイキーを逆恨みするといった凄まじい内容は、ドストエフスキー並みじゃないかと思うくらいなのだった。
ナオトも確か『罪と罰』を読んだはずなのだが、うろ覚えであり、話半分に聞いてほしいのだが、一虎がラスコリーニコフみたいに己れの非凡を証明するために高利貸しの老婆を殺したのと似ているとかじゃなく、本来ならば実兄を殺されてしまったマイキーこそが、大切な友人をそのことのために憎まなければならないという、とてつもない十字架を背負っているというのに、加害者である一虎がマイキーを逆恨みしているという、その人というもののどうしようもなく捩じくれたサガが描かれていることに対して、知ったかだけれど、ドストエフスキーみたいなエグさだなと思ったのだった。
そんなことをつらつら考えながら、ナオトは気まぐれで渋谷ではなく、原宿まで歩いて行こうと代々木公園へと歩きはじめた。
すると、公園内で撮影している一団がいて、かなり目立っていた。ナオトは以前、TV小道具をやっていたこともあり、撮影隊なんて珍しくもなかったので、足早に通り過ぎてしまおうと思った。
だが、どうやらカメラの前でマリオネットみたいにギクシャク、ギクシャクしながらいろんなポーズで笑顔をふりまいているのは、あのえなこにちがいなかった。
いや、ちがう。えなこのソックリさんで今、売り出し中のエレコだ。
フリフリの白い衣装をまとったエレコのその背景にはカボチャの馬車。ということは、むろんシンデレラのコスプレということなんだろうけれど、なぜかカボチャの馬車の横で、あの八つ墓村の鬼神も逃げ出すような出で立ちのコスプレをしたおっさんが、奇声を発しながら走りまわっていた。
頭に懐中電灯を角に見立てたように二本挿し、片手に猟銃もう片手にはサーベル。猟銃の弾ベルトを首から斜交いに二本かけていた。
シンデレラに八つ墓村という取り合わせに、ナオトは首をひねる以外なかったが、見ている内にじわじわと変な可笑しさが込み上げてくるのだった。
なんなんだろう、これはとナオトは思うのだったが、シュールな可笑しさというのは、言葉にはなかなか表せない。
シュールな笑いというのは、かなり高尚な笑いなのだ。
そして、この演出をしたのはいったい誰なのだろうとナオトは思った。世界の蜷川か? ということはカメラマンさんは、もしかしてと思ってカボチャの馬車の方に回り込んで見たら案の定、カメラは蜷川実花さんのソックリさんだった。
ナオトは、なにげにケンとこのカオスな世界を共有したいと思い、ケンに電話した。すると、自分のスマホのコール音にシンクロするように、近くでバイブが唸っている音がして、それが近づいてくる。
見ると、それは八つ墓村の白塗りしたおっさん。スマホを眺めながら耳にあてがった。
「もしもし……」
もう何も言わなくてもわかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる