36 / 73
魔法の書、爆発する💥
しおりを挟む
ナツメが、魔法の書を開いた途端、眼を射るような、まばゆい光が本から炸裂した。ナオトは横から見ていて魔法の書が爆発すると思った。
よく爆弾が爆発する際や大地震の直前に閃光が走るみたいな、アレだった。
魔法の書から四方八方に目が眩むほどの光の矢が飛び出して壁や窓に跳ね返りあたりは真っ白で何も見えなくなった。というかナオトは閃光が走った時すぐさま眩しすぎて目を閉じていた。
次にナオトがこわごわうっすらと目を開けてみると、そこはもう渋谷ではないことは明白だった。
田舎暮らしの人たちが憧れる、いや世界中の人たちが憧れるTOKYOのモダンな街、渋谷の光り輝く街並みはナオトの眼前から忽然と消えていた。
いま、ナオトの前に広がるその景色は渋谷や東京どころか、そもそも地球と呼んでいいのかすら怪しい。
たぶん異世界というか、銀河系でもないどこか宇宙の最果ての惑星の大伽藍の中のような洞窟みたいだった。
そんな印象をナオトは受けた。カラーは黒とかグレーとか茶色しかない世界。
少し冷静になるとナオトはナツメの事をすっかり忘れていたことを思い出した。
あ、と思って振り返るとナツメは開いた魔法の書を伸ばした膝の上に乗せたまま赤茶色の地べたに放り出されたフランス人形みたいにペタンと座っていた。
まあ、その表現は強ち間違いではない。ナツメのビジュアルはかなりなものなのだった。
それに虚空を見つめているような哀しいのかうれしいのか感情がまったく読めない視線がフランス人形みたいだったのだ。
ただナオトにはわかった。ナツメが必死に何か考えているということ。ナツメの目は絶望し虚無を見つめている目ではなかった。
スーパーコンピュータ並みの演算処理能力で、どうしてこんなわけのわからないことになってしまったのかを光速で思考しているのだ。
そうにちがいない。そうであってほしいという希望的観測ではなくナツメは計り知れないパワーを秘めていることをナオトは思い出していた。
そうなのだ。ナオトが昼日中オフィス街の裏通りで暇に明かしてバカ丸出しで壁抜けの練習をしている時に、物の見事に壁抜けをしてみせてくれたのは、ほかでもないナツメだった。
なので、あの時の快刀乱麻の如き手際で、なんなく解答を導き出してこの異世界だかなんだかわけのわからない水金地火木土天冥海以外の星かもしれないし、或いは地球の地底都市テロスやら地底王国アガルタやらかもしれない、このwi-fiも使えない薄暗い場所から、エスケープしたかった。
ナオトはダメ元で野良電波が拾えるかもと思ってやってみたが、そんなものがあるわけもなく、ネットに繋げないSNSも見れないスマホという名のただ放電するだけの薄い板でしかなかった。
そういえば、令和になっても異世界転生ものがまだまだ人気が衰えないようだけれど、いわゆるトラ転であるとか、あまり集団での練炭自殺は寡聞にして知らないが、とにかく死んでしまってからのお話というフローが常識的にというか当たり前のように用いられている場合は殊に感じるのだが、その飛ばされていく先の異世界とはすべて自分の脳の中での出来事ではないのかとナオトは思ったりしている。
思ったりしているというのは、その可能性がかなりあると思っているからだ。ゲームの世界の主人公になったり、能力がはじめから備わっていて瞬間移動できたり、ヒールと唱えて傷どころか命さえも蘇らせたり、街や村を破壊するほどの念力だか魔術を使えるという、そんなチート能力はそれこそ夢の中ではむしろ当たり前であり、死後の世界という何やらその響きだけでも暗い印象しかもてない旧態依然の死生観から脱却して、男性ならばタッパもあり超絶イケメンで精力絶倫の自分に転生し、好きなようにハーレム作って毎夜毎夜酒池肉林の酒と薔薇の日々を送るというのが常識として信じられるようになったならば、死ぬのもまた楽しみになるのかもしれなかった。
どうせ死後の事など誰にもわからないのだから、ハーレムでもパラダイスでもなんでもありであって、虚無でしかありえないとか天国と地獄があるとか、三途の川を渡る際に老婆の鬼である脱衣婆が死者の衣服を剥ぎ取るであるとか、ドルヲタだったら握手会の剥がしを少し思い出すだろうとか、どう解釈しようが個人個人の勝手なのである。
死後の世界は、だから決してテスト問題にはなりえない世界の謎なのだった。
そんなアホなことをナオトは考えていたが、やがて、ナツメが顔をあげ話しはじめた。
「たぶんだけど、この魔法の書には魔法がかけられていたのよ。ただその魔法に反応するのは魔法を使える者。普通の人では何も起こらない」
「ということって、つまり。ナツメちゃんは魔法を使えるわけ?」
「まあね。こんな状況にならなきゃ話すことはなかったんだろうけど、ナオトくん、わたしね、知らないだろうけれどケット・シーなのよ」
ナオトは、えー!! と目を大きく見開きあんぐりと顎が外れるほどあいた口が塞がらなかった。
「知ってたの? ケット・シー」
「知ってるも何もそのケット・シーをずっと捜してたんだよ」
よく爆弾が爆発する際や大地震の直前に閃光が走るみたいな、アレだった。
魔法の書から四方八方に目が眩むほどの光の矢が飛び出して壁や窓に跳ね返りあたりは真っ白で何も見えなくなった。というかナオトは閃光が走った時すぐさま眩しすぎて目を閉じていた。
次にナオトがこわごわうっすらと目を開けてみると、そこはもう渋谷ではないことは明白だった。
田舎暮らしの人たちが憧れる、いや世界中の人たちが憧れるTOKYOのモダンな街、渋谷の光り輝く街並みはナオトの眼前から忽然と消えていた。
いま、ナオトの前に広がるその景色は渋谷や東京どころか、そもそも地球と呼んでいいのかすら怪しい。
たぶん異世界というか、銀河系でもないどこか宇宙の最果ての惑星の大伽藍の中のような洞窟みたいだった。
そんな印象をナオトは受けた。カラーは黒とかグレーとか茶色しかない世界。
少し冷静になるとナオトはナツメの事をすっかり忘れていたことを思い出した。
あ、と思って振り返るとナツメは開いた魔法の書を伸ばした膝の上に乗せたまま赤茶色の地べたに放り出されたフランス人形みたいにペタンと座っていた。
まあ、その表現は強ち間違いではない。ナツメのビジュアルはかなりなものなのだった。
それに虚空を見つめているような哀しいのかうれしいのか感情がまったく読めない視線がフランス人形みたいだったのだ。
ただナオトにはわかった。ナツメが必死に何か考えているということ。ナツメの目は絶望し虚無を見つめている目ではなかった。
スーパーコンピュータ並みの演算処理能力で、どうしてこんなわけのわからないことになってしまったのかを光速で思考しているのだ。
そうにちがいない。そうであってほしいという希望的観測ではなくナツメは計り知れないパワーを秘めていることをナオトは思い出していた。
そうなのだ。ナオトが昼日中オフィス街の裏通りで暇に明かしてバカ丸出しで壁抜けの練習をしている時に、物の見事に壁抜けをしてみせてくれたのは、ほかでもないナツメだった。
なので、あの時の快刀乱麻の如き手際で、なんなく解答を導き出してこの異世界だかなんだかわけのわからない水金地火木土天冥海以外の星かもしれないし、或いは地球の地底都市テロスやら地底王国アガルタやらかもしれない、このwi-fiも使えない薄暗い場所から、エスケープしたかった。
ナオトはダメ元で野良電波が拾えるかもと思ってやってみたが、そんなものがあるわけもなく、ネットに繋げないSNSも見れないスマホという名のただ放電するだけの薄い板でしかなかった。
そういえば、令和になっても異世界転生ものがまだまだ人気が衰えないようだけれど、いわゆるトラ転であるとか、あまり集団での練炭自殺は寡聞にして知らないが、とにかく死んでしまってからのお話というフローが常識的にというか当たり前のように用いられている場合は殊に感じるのだが、その飛ばされていく先の異世界とはすべて自分の脳の中での出来事ではないのかとナオトは思ったりしている。
思ったりしているというのは、その可能性がかなりあると思っているからだ。ゲームの世界の主人公になったり、能力がはじめから備わっていて瞬間移動できたり、ヒールと唱えて傷どころか命さえも蘇らせたり、街や村を破壊するほどの念力だか魔術を使えるという、そんなチート能力はそれこそ夢の中ではむしろ当たり前であり、死後の世界という何やらその響きだけでも暗い印象しかもてない旧態依然の死生観から脱却して、男性ならばタッパもあり超絶イケメンで精力絶倫の自分に転生し、好きなようにハーレム作って毎夜毎夜酒池肉林の酒と薔薇の日々を送るというのが常識として信じられるようになったならば、死ぬのもまた楽しみになるのかもしれなかった。
どうせ死後の事など誰にもわからないのだから、ハーレムでもパラダイスでもなんでもありであって、虚無でしかありえないとか天国と地獄があるとか、三途の川を渡る際に老婆の鬼である脱衣婆が死者の衣服を剥ぎ取るであるとか、ドルヲタだったら握手会の剥がしを少し思い出すだろうとか、どう解釈しようが個人個人の勝手なのである。
死後の世界は、だから決してテスト問題にはなりえない世界の謎なのだった。
そんなアホなことをナオトは考えていたが、やがて、ナツメが顔をあげ話しはじめた。
「たぶんだけど、この魔法の書には魔法がかけられていたのよ。ただその魔法に反応するのは魔法を使える者。普通の人では何も起こらない」
「ということって、つまり。ナツメちゃんは魔法を使えるわけ?」
「まあね。こんな状況にならなきゃ話すことはなかったんだろうけど、ナオトくん、わたしね、知らないだろうけれどケット・シーなのよ」
ナオトは、えー!! と目を大きく見開きあんぐりと顎が外れるほどあいた口が塞がらなかった。
「知ってたの? ケット・シー」
「知ってるも何もそのケット・シーをずっと捜してたんだよ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる