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魔王編
種の保存
しおりを挟む「キェーッ!」
奇声をあげながら巨大タランチュラの群れに突進したカッシーは、ざんばら髪を振り乱しながら、シルバーの剛毛に全身覆われた先頭のヤツめがけ、大太刀を振るって先端から火球を射出した。
ボンッとモンスターの胴体部は、破裂し木っ端微塵に吹っ飛ぶ。
カッシーは、次に剣先から火炎放射器のような紅蓮の炎を巨大タランチュラに浴びせかけながら、横走りする。
蜘蛛たちは、次つぎに黒焦げになり崩折れていくが、それらはただのいわば斥候に過ぎない。
少し距離を置いた位置にとどまる次の隊列が、カッシーに向けて銀色に輝く絲を一斉に吐いた。
カッシーは、粘着性のあるそれを大太刀で薙ぎ払うが、いかんせん大量の絲を防ぎきれない。
みるみるうちに雁字搦めにされていく。
どうやら粘着質なのは何らかの毒であり、カッシーは毒によるアナフィラキシーショックで一時的に身体が麻痺してしまったらしい。
たまらずフーマが宝石を散りばめたような夜空にひらりと舞い上がり、気合いと共に落雷のような電撃を連続で放った。
バチバチバチバチと電撃が走り、巨大タランチュラは激しく痙攣し、煙をあげながら倒れていく。
因みに、コピー機(複合機)で大量にコピーや出力をした際になまぐさいような独特な臭いがするが、あれがオゾン臭らしい。
今、フーマが使った術も雷に近いものなのかもしれない。やはりなまぐさいような、少し酸っぱいような独特な臭いがあたりに立ち込めた。
すかさずアンドロイドのメグが、ぐるぐる巻きにされ横倒しになった倒木のようなカッシーにかけ寄り、絲を切ろうとするが銀色の絲の一本一本は細いが、高張力鋼線であるピアノ線のように、刃物ではまったく歯が立たない。
ちなみ、カッシーは3メートルを優に超える体躯の持ち主であり、簀巻きにされてごろんと転がっている姿は、まさに大木のようだった。
メグは、すぐさま右手をピアノ線も切断できる強力なニッパにメタモルフォーゼさせ、絲を断ち切っていく。
カッシーは、まだショック状態で自力で絲から抜け出せそうにない。時間はかかるが、ニッパでちまちま切断していくしかないようだった。
一瞬にして酸鼻を極めるバトル・フィールドと化した草原に再び静けさが戻ってきた。
巨大タランチュラの群れは、一旦態勢を整えるためなのか、恐れをなしたのかわからないが、退却したようだ。
ようやく忌々しい蜘蛛の絲から解放されたカッシーが辟易したようにいう。
「西の魔界ならいざ知らず、スライムやゴブリン、角兎くらいしかここら辺にはいないはず。つまりは、この近くに魔界と直接繋がっている出入口があるんだろうな」
「たしかに。さっきの毒蜘蛛が魔界の生き物だとしたら説明がつく」とフーマ。
白々と夜が明けていく。
夜空に瞬いていた星々は、欠伸をしている間に滲んだように見えなくなり、煌々と輝く満月もまた、いままさに南天から消え去ろうとしていた。
巨大タランチュラの総攻撃が、これから始まるとは誰も予想だにしていなかった。
◇
ところで1年A組が転移した先は、巨大なタランチュラのモンスターとサムライやら忍者が、いままさに戦闘している真っ只中だった。
1年A組のクラスメイトはあらかた、巨大タランチュラの餌食となり、消えてしまった。
実際は、タランチュラに喰われる前の簀巻状態のJKやらを魔王アンジュがまんまと横取りしていた。
タランチュラの消化酵素でドロドロにされてチューチュー吸われ切って、萎びたナスビみたいな骨と皮がところどころ残っているようなものの方が、アンジュには好都合だった。
遺体の骸骨でピラミッドを作る計画だからだが、アンジュは26体の骸骨を13体ずつにしてピラミッドをふたつ既に組み上げていた。
そして、1年A組の生存者であるリカとケンジはどうなったかというと、ちょうどふたりが入れるくらいの窪みをたまたま見つけて、そこで様子をうかがっていた。
というか、ケンジが足を滑らせていなければ見つからなかったかもしれない。
たぶん、人の手によって、いや、ヒトではないかもしれないが、とにかく穴が掘ってあり、上からわからないように木の枝や蔓草などでカムフラージュしてあったのだ。
ケンジは、ここから誰かが敵情視察していたに違いないような気がした。穴は垂直に深く掘られているのではなく、腹這いになって外をうかがうのがちょうどいい具合に傾斜がついていた。
「まるでさ、斥候兵が敵情を偵察するにはもってこいの窪みだよね、ま、窪みっていうか誰かが掘ったんだろうけど」
「せっこうへい? 何それ」とリカ。
「いや、ゴメン...」
こんな時にケンジがわけのわからないことを言い出したのには、それ相応の訳があった。
ふたりで仰向けになって、木の枝の隙間から青空を見上げてほっとひと息ついていると、ハッと気づいた。
なんと股間が痛いくらいギンギンに勃起しているのだった。ケンジも何かの本で読んだ事があったかもしれない。
死が間近に迫っていると本能的に種を残そうと身体が反応してしまうのだ。まだ、ふたりは、さっきのkissがファーストキスだったのだし、あまりにも性急すぎるかもとケンジも考える理性がまだあったが、また、リカにキスをしたらそんな理性などあっという間に吹っ飛んでしまった。
ケンジは、リカに覆い被さるとキスをしながら優しく胸を揉んだ。リカは何の抵抗もしなかった。遅かれ早かれわたしたちは、死ぬのだとリカもわかっているのだった。
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